あらすじ
小さな活版印刷所「三日月堂」には、今日も悩みを抱えたお客がやってくる。店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった想い。しかし三日月堂を続けていく中で、弓子自身も考えるところがあり……。
ルビを追加し子どもでも読みやすくなった電子書籍「三日月堂」第三弾。
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Posted by ブクログ
「わたしたちは生まれてしまったから生きてるだけ。死ぬまで続く地獄のような道をひとりで歩き続けているだけ。」
「人生はきっとただの苦しい道なんだろうけど、歩いていれば素晴らしいことも起こるかもしれない。」
人生って何だろう、と考える日々の中でのこの本との出会い。
明日も歩こう。そう思えた。
Posted by ブクログ
めっちゃ良かっです。一つ一つの台詞が温かくて優しい気持ちになれる短編集でした。弓子さん自身の人生のお話が多かった気がします。今後のことで大きく色々と動き出しそうな巻でした。
途中、弓子さんの孤独に触れて私まで寂しくなりましたが、弓子さんの周りに今はたくさんの人がいて良かったと思います。なんだかシリーズ当初より弓子さんが明るくなったような印象を受けました。
今作は故人の想いが沢山出てきて、故人の想いを知ることが出来る文字っていいなぁと素直に感じました。思ったこと。考えたこと。悩んだこと。辛いこと。葛藤したこと。残された人達が知り、その想いを活版印刷を通して形にしていく。その想いをまた別の人が見て、繋げていく。とても素敵な事だと思います。
私は東北に行ったことがないのですが、盛岡の街並みの描写が本当に素敵で行ってみたくなりました!知り合いにいるので今度連れて行ってもらおうかな。笑
今作は大好きです。次の巻も楽しみ。
Posted by ブクログ
今回は一つの"仕事"として、活版印刷について考えさせられた。
活版印刷で制作された物を、見たり貰ったりする分にはとてもお洒落で素敵な物、で済む。
けれど、これを自分の生業として見た時には…。
正直、手間暇かけた割には効率が悪い。
体力的に楽ではないし、収入も安定していない。
活版印刷機を修理できる職人も少なくなってきているし、活字屋も減っている。
「仕事をするうちに、まだまだ可能性がある、と感じるようになった。やりきった、と感じるまではやめられないですよ」
古くから伝わるものを守る、ということは単に保守的とは言い切れない。
それ自体が新たな挑戦とも受け止められる。
もっといいものを作ろう。
今までにないものを作ろう。
例え使う道具や手法が古くて時代遅れでも、殻を破って前に進もうとする弓子の意欲がとても好ましい。
そんな弓子を心から応援したくなった。
思いを形にする仕事。
なんて素敵なんだろう。
「あの夏は愛するものもまだなくてひこうき雲に憧れていた」
弓子の母・カナコが亡くなる少し前に作った歌。
…泣けた。
「やわらかな弓子を抱いていたいよずっと星になっても闇になっても」
こんな想いを胸に、ひとり逝ってしまったカナコを思うと涙が止まらない。
「ここにいるどの人にもその人の暮らしがあり、たくさんの過去といまを抱えて生きている。少しずついろんなものを失っていくけれど、世界は続いていく。だから、できることをしなくてはならない。ひとつひとつ、自分の仕事を」
切ない。けれど、とても清々しい。
私も背筋を伸ばして、自分の仕事を着実にこなしていきたい。
三日月堂から、弓子から、背中を押してもらった。
『庭のアルバム』のおばあちゃん、カッコ良かった。
「わたしはわたし。楓もそうだよ。一生楓として生きていくしかない。だれも代わりはいないんだから。それを放棄したら、無責任だろう?」
「あんた、世界のすべてを知ってるわけじゃないんだから、楓のやりたいことをたまにはちゃんとみてやりなさいよ」
おばあちゃんの力強い一言一言が刺さる。
そして優しさが染みる。
シリーズ第3弾。
シリーズが進むにつれ、三日月堂の世界にどんどんハマっていく。
次回が完結編なんて、とても寂しい。
まだ暫くは三日月堂の世界に浸っていたいのに。
Posted by ブクログ
今回は身に沁みる話が多かった。
特に「チケットと昆布巻き」や「庭のアルバム」など、他者と比較し自分の現状に悩む主人公たちにちょっと共感。弓子さんという人物の掘り下げも行われて、本の町「神保町」で出会った登場人物が弓子さんの想いを引き出す。弓子自身の物語が動き出した模様。