梓澤要のレビュー一覧

  • 越前宰相秀康

    匿名

    ネタバレ 購入済み

    徳川家康の2人めの側室お万の方と、その子で家康にとっては次男の結城秀康のお話。
    秀康は双子で産まれたこともあり、家康からは名もつけてもらえない。
    長男信康が織田信長に睨まれて自刃に追い込まれた後も次男ながら徳川跡目にはなれず、豊臣の養子に差し出されだが、秀吉に子が生まれると結城家に追いやられた。
    関ヶ原の戦では結城の地で上杉景勝と直江兼続の抑えとさせられ、戦が終わると越前に転封。
    都度父家康との相克が語られ…、父より早くに亡くなった。
    結城秀康のことは名前以外知らなかったが、切ない人生だったのかもしれない。

    #切ない

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    2024年11月13日
  • 捨ててこそ 空也(新潮文庫)

    匿名

    ネタバレ 購入済み

    鴨川の河原で死体を焼く喜界坊の一団に出会った醍醐天皇の五宮常葉丸は、宇多法皇に仏法を学ぶが
    『仏の教えは誰のためにあるのか』との疑念が拭えず出奔し、一団で活動したり、
    出家得度し空也と名乗るが、納得がいかず、阿波湯島の観音堂で激しい修行をした結果
    「誰でも南無阿弥陀仏を唱えることで救われる」という称名念仏に辿り着く。
    坂東で同い年の平将門に出会ったり、都で市の片隅で念仏を唱えたりして、市の聖と呼ばれるようになる。

    「すべてを捨てよ」は難しく、空也自身も何度も「捨てられなかった」ことに直面する。
    生きるのは難しい。

    #切ない #共感する

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    2024年11月13日
  • 捨ててこそ 空也(新潮文庫)

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    ほぼ一千年前の時代を
    市井の聖「空也」を軸に
    描いた秀作

    作家さんの想像力は
    ほんとうに凄い
    これまでにも 何度か
    その思いは抱きましたが

    六波羅蜜寺のかの空也聖人の像が
    まさに息吹を吹き込まれ
    その「念仏」が聞こえてくる
    安時代の末期の混乱状況が
    リアルに描かれている分
    空也さんの吐息まで
    伝わってくる

    この作品に出逢ってから
    平安期の学習ができる
    学生諸君は幸いである

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    2024年02月27日
  • 画狂其一

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    江戸時代の画家、酒井抱一と弟子の鈴木其一。2人の画家としての矜持と師弟関係を超えた繋がりを描いた歴史ドラマ。
    抱一が師と仰ぐ尾形光琳くらいしかこの時代の画家を知らなかったが、江戸時代の末期に様々な画家や歌舞伎役者達によるこの時代の文化、生活、繁栄、道楽、修行、旅行などの雰囲気が躍動感を持って表現されており生々しく感じられる小説だった。
    其一の最後に描きあげた朝顔図屏風はメトロポリタン美術館にあるという。時代と国境を越えてその勢いは今でも異彩を放っているだろうか。

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    2024年02月18日
  • 捨ててこそ 空也(新潮文庫)

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    「阿弥陀聖」、空也の生涯を描いた小説。

    「捨ててこそ」とタイトルにもあるように、空也は生涯にわたり、さまざまなものを捨てていく。
    叡山の貴族に奉仕する仏教とも距離を取り、「市の聖」「阿弥陀聖」として、利他とすべての人の苦しみを救うことに身を捧げようとする。

    現代人は「人を救う」ことに対し、ましてやすべての人を対象にすることを懐疑的になる傾向がある。
    むろん、私自身もその一人だ。
    それは作中に出てくる多くの人物が、彼に投げかける疑問の形で作品に取り込まれているような気がする。

    空也が看病した行き倒れの女が回復し、自らの生を確かめるために情交を求めてくる場面がある。
    (なんとなく、キリスト教

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    2023年05月14日
  • 方丈の孤月―鴨長明伝―(新潮文庫)

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    方丈記は、古文でもあり、無駄をそぎ落とした文章なので、作者・鴨長明はさぞ高潔な人物だと感じていたが、本書ではとても人間臭く描かれている。神職の家に生まれたが、生来の人付き合いの悪さと逃避癖から神官としては大成せず、下鴨社の正禰宜であった父の死後に零落していく様は、彼の棲む世界を巧みに泳ぎ切れない悲哀を感じた。大原、日野の里と隠棲場所を替え、方丈の庵を終の棲家にしたわけだが、「やることがいっぱいであって、実はすこぶる忙しい」というくだりは、野田知佑氏が語る大自然・ユーコンでの生活を彷彿させ、肯ける。

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    2022年11月09日
  • 捨ててこそ 空也(新潮文庫)

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    歴史小説を多く書く梓澤要による小説。平安時代に「南無阿弥陀仏」と唱える念仏を広め市井で活躍した僧侶、空也の一生を描いている。仏教いいじゃんと思わせる内容だった。

    以下ネタバレあり。
    印象的なのは、信心深くない人も多い中で空也が地道に社会事業を営み、それを経て空也を慕う人が増えていったストーリー。社会事業というのは例えば井戸を掘ったり、遺体を荼毘に付したり、食糧を配って回ったりすること。仏教関連の経典の書写事業もしていた。そうして人々の困りごとに応えていくことで付いてくる人や喜捨として寄付してくれる人が増えて、より大きな事業を営みより多くの人の困りごとを解決することができるようになっていった。

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    2022年04月16日
  • 方丈の孤月―鴨長明伝―(新潮文庫)

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    鴨長明の生涯をテーマにした小説。武士中心の政治への転換が進む環境で、名家出身者の困惑と達観が感じられる一冊。方丈期はこういう心持ちで、描かかれたろうと感じられた。

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    2021年12月04日
  • 万葉恋づくし(新潮文庫)

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    ネタバレ

    わが背子が来むと語りし夜は過ぎぬ しゑやさらさらしこり来やめやも
    (あの人が「来るよ」と約束したから、ずっと待っていたのに、夜はむなしく過ぎてしまった。もう金輪際、間違ってもやって来たりするもんですか。ええい、悔しいっ。どうしてくれよう。)

    作者不詳のこの歌から作家の梓澤さんが紡いだ物語。
    パッとしない冴えない年上の夫にすっぽかされ憤る妻、しかも夫が突然、金の無心をしてきます。
    これはついに出世を考えてのことかしら、と妻は喜びますが、実は借金返済に困っている友人のためだったのです。
    しかもあろうことか夫が別れ話を切り出してきました。
    子どもも小さいし「別れない!」と妻は言いますが、よくよく考

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    2021年08月27日
  • 遊部(下)

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    本能寺の変が起こり、物語は大きく展開していく。そして、遊部存在の本当のわけが明かされる。歴史の事実をなぞりながら、その中で登場人物たちの存在の意味がちゃんと生かされている。遊部の者たちも、呪術集団といいながら異能の持ち主ではなく、現実に生きる生身の人間として描かれていて、共感を感じることができた。力作だと思う。

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    2019年10月07日
  • 遊部(上)

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    織田信長によって正倉院の秘宝の香木蘭奢待が持ち去られる。東大寺の薬師院院主実祐は、古代より正倉院を守ってきた呪術集団遊部にその奪還を命じる。遊部のスガル、オト、ハエン、お国を始め、松永久秀、その家臣村上新左衛門、明智光秀、堺の豪商で茶の宗主の宗久、誠仁親王、前の関白九条種通、美濃斎藤家家臣の娘お通、信長の嫡男信忠たちが、互いに絡み合って物語を編み上げていく。息が詰まりそうな通奏低音として物語を支配するのは、信長の苛烈さ、酷薄さである。たった一人の男によって、世の中はかくも左右されるものなのであろうか。恐ろしい。

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    2019年10月07日
  • 喜娘

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    第十次遣唐大使の中国での娘の喜娘が日本にわたる話、長屋王に仕えた男の話、写経生と聖武天皇お気に入りの僧良弁との話、聖武天皇の異母兄弟の話など、奈良時代の短編集。主人公の心の内が克明に語られ、千年以上前の人間のことが現代人のように生き返る。最後の話は、現代を舞台としているが、ほとんど中身は吉備真備(やはり奈良時代)をめぐる江戸時代の話であった。この短編集を締めくくるにふさわしい謎解きを含んだ話である。初めて梓澤要の小説を読んだが、結構面白かった。

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    2019年09月17日
  • 画狂其一

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    其一は抱一の弟子。
    という薄い印象しかなかったけど、絵師だろうが弟子だろうが、ひとりの人間なんだ!と明らかなことに気づかされた。
    絵に師に人に時代に、渦巻く時間に生きてきた人だった。

    抱一の性格が(勝手に)思ってたのと違って、最初はとまどった。

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    2018年10月11日
  • 越前宰相秀康

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    家康の次男にして、英傑の誉れが高く、激流の中に身を置き翻弄されながらも、颯爽と生き抜いた秀康(名はそれぞれ秀吉の「秀」と家康の「康」からという天下人二人の名の合成)の一代記。
    小説の良し悪しのひとつは、如何に読者を、主人公に感情移入させられるかではなかろうか。
    主人公と共に悩み、ともに泣き、ともに怒り、ともに笑い、そして主人公と共に喜ぶ。
    さらに、作者の筆致によって、読者を魅了させる人物に描き切れるか。
    その点、この作品はこれらの要求を十二分にまで満たしてくれており、秀康の波乱の生涯の一大叙事詩になっている。
    側妾の腹に産まれ、双子ゆえ父家康から忌避された秀康。
    彼は終生、父家康との距離感に悩

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    2018年08月30日
  • 捨ててこそ 空也(新潮文庫)

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    高校の教科書に載っていた「空也像」の写真、唱えた念仏が阿弥陀仏になったという姿が衝撃的で、大人になってから何度か六波羅蜜寺にも行った。
    市聖であることは何となく知っていたが、ここに描かれた空也は、もはやその呼び方では片付けてはいけない。
    もちろんすべてが史実ではないだろうが、母への想い、身分を捨ててからの喜界坊や猪熊との出会いが根本にあったのだな…
    この本を読んでいる間に、病に伏していた自分の母が亡くなり、読むのにとても時間がかかってしまったが、いつも空也様がお側に居たようで本当に救われる思いだった。
    なむあみだぶつ ありがとうございました。

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    2018年08月10日
  • 捨ててこそ 空也(新潮文庫)

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    仏教を庶民に広げ慕われた空也の生涯。宮家の出というのは一説なんですね。空也の人となりを想像する大きなポイントです。もし事実なら安泰を捨てて人のために生きる人生を選ぶという、神の使いとも言える所業と考えます。また、将門との絡みはフィクションとのこと。当世代なのでどこかで何らかの関わりがあったと見て自然だけど、小説の中でかなりのインパクトはありました。
    クライマックスの大般若経供養会は盛大さが思い浮かぶ描写です。また、庶民とのささやかな絡みに一番心打たれました。

    捨てることで穏やかになれる境地に少しでも近づけたらと思います。
    空也像のある、六波羅蜜寺にお参りに行きます。

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    2018年05月19日
  • 画狂其一

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    琳派とは、俵屋宗達・本阿弥光悦を祖とし、やまと絵の様式を基盤としながら、デフォルメやトリミングといった斬新なアレンジにより、装飾性と意匠性に富んだ独自のスタイルを確立した流派を言う。その後、尾形光琳・酒井抱一・鈴木其一と受け継がれ、現代絵画にまで影響を与えている。
    琳派は、狩野派や土佐派などの各流派のように師弟や親子関係で結ばれた訳ではなく、私淑による断続的な継承という特徴があり、また日本でのデザイナーの誕生でもあった。

    本著は、その中の江戸琳派の祖・酒井抱一の弟子で、その事実上の後継者である鈴木其一の物語。彼は、琳派の末裔と位置づけられているが、近代に通じる都会的洗練化と理知的な装飾性が際

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    2018年05月17日
  • 越前宰相秀康

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    ずっと気になっていた。なぜ、三男の秀忠が将軍になり、次男の秀康はなれなかったのか。
    秀康の短くも太い人生。

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    2018年01月28日
  • 遊部(上)

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    蘭奢待を手に入れようとする津田宗及の執念深さや憧憬が、脇役ながらもこころ打たれました。戦国時代でありながら、天平の香りを楽しめた。

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    2009年10月04日
  • 荒仏師 運慶(新潮文庫)

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    上野で開催されていた運慶展の予習として読みました。運慶と快慶は同門だけど、てっきり兄弟か親子だと思ってたのでそういう誤解が解けたり、無著と世親像を造った人が運慶の子ども(兄弟)とか、知っておいて実際の仏像などを見たら、既知の人に会うように親しみが持てました(単純)
    これまで、自分の中で、仏像はお寺にあって人の祈りを受け止めるもので、美術館で鑑賞するものでは無いと思っていたけれど、この小説で作り手の想いみたいなものを想像して、こうして見るのも良いかと思えました。

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    2025年11月29日