【感想・ネタバレ】喜娘のレビュー

あらすじ

帰国を前にして皇帝代宗に謁見した第14次遣唐使一行の前に、ひとりの娘が現れた。第10次遣唐大使として入唐しながら帰国できず、唐の朝廷に仕えて一生を終えた藤原清河の娘である。その忘れ形見・喜娘を父の故国日本へ連れてゆくよう申し渡される…。帰国した喜娘たちの運命を軸に、日唐交流の秘話とロマンを描く歴史文学賞受賞の表題作「喜娘」、梅の老樹から浮かび上がる下級官人の数奇な過去「惜花夜宴」、ほかに「夏の果て」「すたれ皇子」「嘉兵衛のいたずら」の3篇を収録。平城京に生きる人々の息吹が今に甦る秀作集。

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匿名

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奈良時代に遣唐使で唐へ行ったまま帰れなかった藤原清河が現地で結婚した妻との娘喜娘が、大伴嗣人に連れられて日本へ渡る表題作では、当時の船旅の困難さが詳しく描かれていた。
「惜花夜宴(はなをおしむひとよのうたげ)」は、長屋王の従僕だった沼部年足が変から30年を経てその事件について佐伯宿禰真依に語る切ない話。
「夏の果て」では聖武天皇の度重なる遷都についていけず奈良に取り残されていた皇后安宿部媛の皇后宮職の付属写経所の官人たちが、その政治について愚痴る話では、当時の市井の人の暮らしが生き生きと描かれていた。
「すたれ皇子」は聖武天皇の異母兄弟母親の身分が低かったのもあるが、謀略のため臣下に落とされた石川朝臣広成の話。こちらも低位の官人の暮らしが詳しい。
「嘉兵衛のいたずら」は現代の歴史雑誌の編集者が、「吉備真備公母夫人楊貴氏墓誌」の謎を解き明かすため奈良県五條市の旧家八木伝右衛門を訪れ、家に残る資料整理を手伝わされる。その中で伝右衛門の先祖嘉兵衛という江戸時代の二人の老人(祖父の嘉兵衛と同名の孫の嘉兵衛)のひそかにして高度に知的な「いたずら」を発見する、というお話。
いずれも読みやすく、市井の人の暮らしを楽しんで読めた。

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2024年06月09日

Posted by ブクログ

第十次遣唐大使の中国での娘の喜娘が日本にわたる話、長屋王に仕えた男の話、写経生と聖武天皇お気に入りの僧良弁との話、聖武天皇の異母兄弟の話など、奈良時代の短編集。主人公の心の内が克明に語られ、千年以上前の人間のことが現代人のように生き返る。最後の話は、現代を舞台としているが、ほとんど中身は吉備真備(やはり奈良時代)をめぐる江戸時代の話であった。この短編集を締めくくるにふさわしい謎解きを含んだ話である。初めて梓澤要の小説を読んだが、結構面白かった。

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2019年09月17日

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