植木雅俊のレビュー一覧
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上座部≒小乗仏教もゴータマ死後、「ブッダ絶対視・唯一無二論≒『神格化』」「女性差別」「教団維持の自己目的化」などの在世当時からの逸脱をしていた。
「大乗興起」とは、ブッダの真意に立ち還れという教団の内部変革運動であったことが法華経原文から読み取れる、とする。
なぜ紀元前5世紀頃の「枢軸時代」に相次いで現代までつづく「世界宗教(土着・民族宗教を超えて)」が複数、生まれたか?同時期に物々交換から経済は“貨幣”=moneyに移行し最初のグローバリズムが芽生えた。長者窮子・衣裏宝珠の譬など商業資本の台頭を想わせる。シャカの死後、教団の統制のため二百五十、五百戎が定められ、女性差別人種差別が横行し、原 -
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◯初期大乗仏教の経典とされているが、既に原始仏教の経典(スッタニパータ)よりも、はるかに思想的には練られている印象。
◯空の思想などは、まさに原始仏教の考え方(執着を捨てる的な)を発展しているように感じたが、ただ、スッタニパータを読んだ時ほど、自己の生き方について得るものがあるというか、衝撃を受けるとか、そういったことはなかった。
◯それというのも、内容の主たる部分としては、当時の仏教世界における菩薩のあり方が問われていた。小乗仏教的なものへの批判書である。
◯しかし、紀元前の時代にして、既に宗教改革が行われているといったところに面白さも感じた。
◯ついでに俗っぽい感想を記すところでは、智 -
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書評
『仏教学者 中村元 求道のことばと思想』
植木雅俊著
角川選書 定価1,800円+税
“本物の思想家”の学究の歩み 鮮やかに描き出す
卓越した専門性を持ちながらも万学に通じた「本物の思想家」は、百年に一人か二人、存在する。中村元もそうした「本物の思想家」の一人である。古代インド哲学の研究から出発し、東西の叡智に遍く精通した。著書・論文の数は一四八〇点余りを数える。私塾「東方学院」を開き、学びを世に拓いたその業績は前人未踏である。本書は晩年の中村に師事した最後の弟子によって著された浩瀚な評伝だ。中村の思想の核心と慈愛に満ちた生涯を明らかにする。“世界の中村”の肉声を伝える本書 -
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一口に仏教と言っても、その教えは多種多様だ。そのうち仏教の本質(と著者が信じるところ)である法華経にフォーカスして、日蓮の思想を解説している。同じ内容を手を変え品を変え様々な表現で繰り返し説明しているため、非常にわかりやすい。ある程度仏教についての知識があり、特に法華経を詳しく知りたい人にはピッタリの良書である。
ただ、日蓮を宗祖とする宗派(日本に39団体あるそうだ)にありがちな独善的原理主義がチョイチョイ垣間見えるところが気になる。南方の上座部仏教を異教と融合した小乗仏教と見下したり、阿弥陀如来や大日如来を誰も見たことのない架空のスーパーヒーローとして切り捨てる。それを言うなら久遠の過去 -
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読みやすい。
よくも悪くも著者の価値観、倫理観が色濃く出ている。
著者は学者であると同時に説法者でもある。珍しいケース。
ところどころ、仏教学以外の分野への言及で勇み足を感じてしまった。
身分差別を超克した不軽菩薩の教え。男女の差別を乗り越え、男性原理、女性原理の両方の面で人格の完成ができるとした日蓮。
その普遍的な価値観は、思想レベルでの平等性は分かるが、現実に身分、性別で差別されているものを厳しく言えば見捨てていることになり、放逐すべき物を放置していることにならないだろうか。苦悩に満ちた現実を忘れ、完成された思想に酔っているかのようだ。
袴谷憲昭の『批判仏教』を再読したくなった。 -
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宗教についてなので内容は難しかった。
でも、100分de名著で扱ったものなので
概要を学ぶ上でわかりやすかった。
経典とは、なにか説法集や
生きるための指南書みたいなものだと
浅く思っていたけれど、
仏教の変遷とその在り方への批判、
よりよい在り方を目指した戒めも含めた
もりもりの内容なのだと理解できた。
これは、著者の地道な深い翻訳や研究と
丁寧な解説のおかげだと思う。
「般若心経」を勉強したことがあり
仏教的な視点については
理解できていると思っていたけれど、
それどころではない多くの学びがあった。
仏教に貫かれている平等思想には
深い感銘を受けた。
地涌の菩薩や常不軽菩薩の話が
興