【感想・ネタバレ】法華経とは何か その思想と背景のレビュー

あらすじ

『法華経』は、釈尊入滅から約五百年後、紀元一世紀末から三世紀初頭のインド北西部で誕生したとされる。日本には六世紀半ばに伝わり、『法華秀句』を著した最澄や「法華経の行者」を自任した日蓮から、松尾芭蕉、宮沢賢治に至るまで、後世に広く影響を与えた。本書では、サンスクリット原典の徹底的な精読を通じて、「諸経の王」とも称される仏典の全体像を描き、平等な人間観に貫かれた教えの普遍性と現代的意義を示す。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

法華経にある火事や出戻り息子の話をただの教訓話的なものにしか考えていなかったが深い意図があることが分かった。仏教の成り立ちからなぜ法華経が出てきたのかどのような内容なのかが書いてあり正直いうと植木先生のサンスクリット版法華経そのものよりもこちらのほうが読みやすかった。
本書の意図とはずれるだろうが植木先生の言葉1つも疎かにしない追及心に感動した。

0
2023年01月12日

Posted by ブクログ

上座部≒小乗仏教もゴータマ死後、「ブッダ絶対視・唯一無二論≒『神格化』」「女性差別」「教団維持の自己目的化」などの在世当時からの逸脱をしていた。
「大乗興起」とは、ブッダの真意に立ち還れという教団の内部変革運動であったことが法華経原文から読み取れる、とする。
 なぜ紀元前5世紀頃の「枢軸時代」に相次いで現代までつづく「世界宗教(土着・民族宗教を超えて)」が複数、生まれたか?同時期に物々交換から経済は“貨幣”=moneyに移行し最初のグローバリズムが芽生えた。長者窮子・衣裏宝珠の譬など商業資本の台頭を想わせる。シャカの死後、教団の統制のため二百五十、五百戎が定められ、女性差別人種差別が横行し、原点への回帰運動が大乗興起であったと、サンスクリット原典の解釈から論証する。
 近代文明の合理主義が処理できないものは人間の死。それをカバーする宗教は不滅だが時代によって千変万化

0
2021年03月21日

Posted by ブクログ

法華経がどういうものなのか初めて知った。法華経の教えの概要はもちろんのこと、法華経が小乗仏教・大乗仏教の分裂や対立の中で釈尊本来の教えに返るべきことを説くものとして成立した歴史的背景、そしてその教えには平等の精神など現代的意義があることなど色々学びがあった前から思ってたけど釈尊は宗教家というより哲学者っぽいですよね。ただ信者は宗教を求めてるので宗教的に派生・進化した。その経緯や融合が面白い。
法華経の正しい教えを伝えるのには必要な記述なのだと思うけど、過去の法華経研究者の誤訳を執拗に指摘する件が続く冒頭は読んでてだいぶ滅入る。

0
2021年07月25日

Posted by ブクログ

サンスクリット原典から独自に翻訳を果たした著者が「原始仏教に還れ」というメッセージを旨とする法華経の思想を解説。
法華経がどんな内容かということにとどまらず、本来の仏教とはいかなるものかということについて、実に示唆深い内容だった。人間を超越した仏を崇拝するのではなく、人間として自らが善い行いをして仏になるというのが本来の仏教の教えなのだと理解した。

0
2021年07月04日

Posted by ブクログ

法華経は名前はよく聞いても中身はそんなに知らなかった。この本は仏教の研究者が法華経について成り立ちや人々に与えた影響、概略の中身などについてまとめたもの。法華経が書かれた当時の仏教思想などについても触れられており、そもそものブッダの教えやインドでの仏教というものについても知ることができた。

0
2021年05月22日

Posted by ブクログ

執拗にこれまでの誤訳を指摘している。
法華経が生まれた歴史的背景についても詳しく、法華経の論理を一貫した視点から説いている。

『シンガーラの教え』の「夫は妻に五つのことで奉仕せよ」に感動した:1.妻の自立を認めよ。2.妻を尊敬せよ。3.妻に宝飾品を買い与えよ。(財産を持たせろ)4.妻を軽蔑するな。5.道に外れたことをするな。

不軽品の詳細な解説に認識を新たにした。

0
2021年03月22日

Posted by ブクログ

科学的厳密さで仏教経典のサンスクリット語原典を日本語訳を精読することに傾注した努力に敬意を払うものではあるものの、仏教における用語の概念理解が浅いのではないかと思うことがいくつかある。
1.法(縁起の法)について
  仏教における縁起の法とは波及効果のことであるというのが『仏教の思想 3_空の論理<中観>』から読み取れる。ナーガールジュナ中論を読めばおそらくそのように読み取れることが書いてある。仏陀の教えが人から人へ伝わっていくうちに、段々と変質して原型を留めなくなることを、より仏陀に近いものを正法、そこから波及したものを像法、もはや原型を留めなくなったものを末法というのである。
2.仏性について
  本書の引用から見るに、著者は日蓮の解釈を受け継いでいるものと見受けられるが、中国禅における仏性とはそれを研究する者を仏陀にする性質のことであり、自らが仏陀になる性質のものではない。狗子仏性において狗子に仏性が無いとするのは、犬コロの行動はすべて予想がつくため、それ以上学ぶことがないからである。まあ、これは途中まで学んだ私の解釈に過ぎない。(追記2025年11月28日:中国禅の「拈華微笑」、ダンマパダ76などに基づくと、仏性とは「教師として教えを与える存在に対する尊敬・恭供」を行うべきか否かについての議論であるように思われる。)

0
2025年10月26日

「学術・語学」ランキング