守岡桜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書は、経済学を再び「政治経済学」の座へと引き戻した記念碑的な著作です。著者は、18世紀以来の富と所得がどのように推移してきたかについて膨大な統計に基づいた客観的な考察を行い、そこから驚くべき教訓を導き出しました。議論の柱となるのは、格差拡大の根本的な力である「r > g」という不等式。これは、投資や相続から得られる資本収益率 (r)が、賃金上昇の源泉となる経済成長率 (g) を常に上回り続けるという構造を示しています。つまり、労働によって豊かになる速度よりも、資産が資産を生む速度の方が速いということです。歴史的に見れば、この不平等の拡大を止める力となったのは、良識ある政策ではなく、皮肉にも「2度の世界大戦」による物理的な資本の破壊と、戦後の異常に高い成長率のみであったことが明らかにされます。現代が直面している最大の問題は、世界が再び歴史的な低成長化へと向かっている点です。低成長下では、過去に蓄積された資産の影響力が相対的に強まり、個人の才能や努力よりも、相続や「出自そのもの」が人生の成否を決定してしまう。これは、近代民主主義が掲げてきた「実力主義(メリトクラシー)」という理想?の崩壊を意味します。著者はこの暗い未来を回避するため、資本所得に対する世界規模での累進税が有効であると提唱します。富の極端な集中を抑制し、再分配機能を回復させるための現実的な処方箋です。しかし、そこには巨大な壁が。タックスヘイブン等の存在により、富裕層の資本は容易に国境を越えて逃避できるため、一国のみでの実現は難しいでしょう。本書を読み終えて痛感するのは、格差は経済の自然法則によって解決されることはなく、政治的な介入なしには拡大の一途をたどるという事実です。私たちが「出自」に縛られない自由な社会を望むのであれば、この 「r > g」という呪縛にいかに政治が立ち向かうべきか、真剣に議論を始めなければならないでしょう。
「これから社会に出る若者へ」
r>gに立ち竦まないでください。絶望しないでください。何も持たない者にとっては労働での収入が現実的な武器になります。資本成長率を上回る成長を達成している組織に所属してください(その中で労働分配率の高い組織に所属してください)。稼げる間に可能な限り稼ぎ、節約に努め、余剰を収益性の資産に投資してください。道は必ず開けます。 -
Posted by ブクログ
時間が有り余っている学生時代に読めておけて本当に良かった。
r > g の原則を知らずに社会人として社会に放り込まれていた可能性を考えると怖くなる。
中々裕福になれないやるせなさを感じるも原因は分からない。なぜなら資産の大半は上位層がガッツリ確保しており、それを使って芋ずる式に不労所得を蓄えているのだから。
歴史から得られる原則と、信用性の高い数字と向き合う大切さを学べた。
様々な事象や通説が重なりあって経済は動いている。
あとは読解力がかなり増した気がする。本書を読む前後では、他の本を読む時の理解力が断然に違う。
本書に出会えたことに感謝を。 -
Posted by ブクログ
5年以上、積読だった本。きっと一人じゃ読まないままだ、と思い友人を巻き込みたった二人の読書会を企てました。二週間に一部ずつ読んで、週末2時間zoomで語り合うという方式です。全4部構成を4回で読み終わりました。ものすごい達成感!ノートを取りながら読書したの学生以来か。夜、夕食後に自宅で集えるzoomという仕組みに感謝。いやいやこの試みに付き合ってくれる友人の存在することが最大の幸せ。大昔、パルコのコピーに「本読む馬鹿が、私は好きよ。」というのがありましたが、本を読む馬鹿仲間は宝物です。この読書会と同時に読んでいた「人新世の資本論」でピケティの新刊「資本とイデオロギー」が出ることを知り、次のテキストはそれにするか?その前に、もう一発、別の読むか?そんなやりとりも楽しいです。
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Posted by ブクログ
ネタバレ「所得」だけを見ていると、富の構造を見誤る
本書を読みながら最も大きく変わったのは、経済を見るときの視点だった。これまでは「いくら稼いでいるか」という所得のフローを中心に考えがちだったが、本書はその背後にある資本ストック、そこから生まれる所得、さらにそれが世代を越えて蓄積されていく構造を見せてくれる。
GDPや所得が「一年間にどれだけ生み出したか」というフローだとすれば、資産は過去から積み上がったストックである。この違いを意識すると、同じ「お金」の話でも見えてくる世界がまったく違ってくる。
資産は「持っているもの」ではなく「生み出すもの」として見る
本書を読み進めて、資産についても見方が変わった。資産とは単に現金、株式、不動産などを所有していることではなく、そこから将来の所得や便益を生み出すストックとして捉えられる。
金融資産なら配当や利息、不動産なら賃料、事業なら利益を生み出す。そして、さらに広げれば、知識、技能、経験、人脈、信用など、将来の所得を生み出す能力そのものも、人的資本という別の形のストックとして考えることができる。
「お金を持っているか」だけではなく、「将来の価値を生み出すものを持っているか」という視点が重要なのだと思った。
コップからあふれた水を使う
このことを考えていて、映画『マルサの女』に出てくる「コップから水があふれるまでは我慢し、あふれた分だけを使う」という資産家の話を思い出した。
これは単なる節約術ではない。資産ストックから生まれる収益が生活費を上回る状態をつくり、その余剰を再び資産に戻していくという、資本蓄積の構造そのものに見える。
資産をA、収益率をr、生活費をCとすれば、A×r>Cになったところから、資産収益だけではなく、その余剰まで次の資産形成に回せる。すると「働いて稼いで貯める」という段階から、「資産が生んだ余剰がさらに資産を生む」という段階へ移っていく。
お金が「お金を呼ぶ」という言い方も、こう考えれば神秘的な話ではない。
資産形成はお金だけの問題ではない
ただし、最初から大きな金融資産を持っている人ばかりではない。むしろ重要なのは、資産を形成するための原資をどこから作るかという問題だろう。
そこで人的資本という考え方が効いてくる。学習、経験、技能、信用、人脈などへの投資によって所得を生み出す能力が高まれば、その所得の一部を金融資産へ変換できる。
つまり、
能力を育てる
↓
所得を増やす
↓
余剰をつくる
↓
資産に変える
↓
資産が所得を生む
↓
さらに資産を増やす
という循環が考えられる。
「ある分使う」ことと「将来の自由度を買う」こと
もちろん、所得をすべて使わずに貯めればよいという単純な話でもない。現在の消費には現在の価値があり、経験や生活そのものも重要な便益を生む。
問題は、所得をすべて現在の消費に変えるのか、それとも一部を将来の所得や自由度を生むストックに変換するのか、という配分にある。
ここで本書の「資本」という視点が効いてくる。所得だけを見れば、毎年いくら入ってくるかが問題になる。しかし資産ストックまで見ると、「誰が何を所有しているのか」「その所有物はどんな所得を生むのか」「それは次の世代へどう移るのか」という別の問題が現れてくる。
格差を「所得差」だけで見ない
本書の意義は、格差を単なる年収の差としてではなく、資本の所有構造と、その資本が生み出す所得、さらに相続による世代間移転まで含めた長期的な現象として捉え直したところにあると思う。
r>gという有名な関係も、それだけを覚えて終わるものではない。重要なのは、資本から得られる収益が再投資され、資産ストックが拡大し、それを所有する人が次の世代へ資産を渡すという循環が、どのように社会の分布を形づくるかということだ。
そして読後に残ったのは、「どうすれば金持ちになれるか」という問いよりも、「人は所得だけでなく、どのようなストックを形成し、それをどのように次の価値創出につなげているのか」という問いだった。
『21世紀の資本』は、経済格差について書かれた本であると同時に、「フローだけを見るのではなく、ストックを見る」という認知フレームを与えてくれる本でもある。その視点を持つと、個人の家計から企業、国家、世代間の資産移転まで、これまでとは違った景色が見えてくる。 -
Posted by ブクログ
19世紀から20世紀にかけての世界のお金の流れを、今までにない規模でのデータから集約、分析し、資本主義のなかで拡大する格差に歯止めが必要であると訴える書。
ふとしたきっかけから手にした、ピケティ『21世紀の資本』。
本文、およそ600ページ。
経済の話、苦手だし……、読んでもわからないかもしれないし……。
読まない理由はいくつもあったけれど、2010年代を代表するベストセラー、せっかくならどんな本か知りたい!と1ページ目から体当たりしていくことにしました。
さいしょは「資本」とか「所得」の用語が出てくるたびに、意味が頭に定着していないから、いちいち立ち止まっていました。
ノートにメモをとって、付箋をはって見返して。
くりかえしていくごとに、少しずつ定着して、第2部あたりからは、わからないなりにもなんとなく本のリズムにのって目を動かせるように。
基本的に、集約したデータの結果をグラフで示して、その内容を解説していく形式なので、経済に詳しくなくても案外(?)読めるな、というのが途中からの感想。
けっきょく、議論の詳細や深みを追うことはできなかったけれど、世界を流れているお金の量や、階層ごとの格差の規模感は、なんとなく肌で感じることができました。
とくに、上位1%の人々が所持している資産って、莫大だなあ。
これだけ資産があったら、好きな本を値段を気にせずいくらでも買えるかしら。
本書(5500円+税)をネットで注文したとき、クリックする手がふるえた本読みとしては、うらやましいかぎりです。
「あらゆる市民たちは、お金やその計測、それを取り巻く事実とその歴史に、真剣な興味を抱くべきだと思うのだ。お金を大量に持つ人々は、必ず自分の利益をしっかり守ろうとする。数字との取り組みを拒絶したところで、それが最も恵まれない人の利益にかなうことなど、まずあり得ないのだ。」
最後を締めくくるこの言葉が身に沁みる。
とりあえず、私は経済のもう少し基礎的な部分を学べる本をまた探して読んでみよう。 -
Posted by ブクログ
上下巻分厚い本だが、索引の分量も上下巻それぞれ100ページ以上あるので見た目で避けない方がいい。現在プーチンのことを知ろうと思うと一番良い本かもしれない。
なぜプーチンはウクライナ侵攻というロシアの今後数十年を捨ててしまうような暴挙に出たのか。その答えが100%クリアに示されているわけではないけど、プーチンの考え方の変遷はソ連崩壊からの立て直し、現実的な西側への対応から始まりアメリカ、NATOへの失望からロシアの大義への回帰、という流れなのかなと感じる。
ここのエピソードでなんとなくプーチンが常に一枚上手的に魅力的に描かれるように感じるのはなぜだろう。
長いお話はおそらくあとがきの著者のまとめに集約されているように思う。
「プーチンは(大統領に)就任したときには部外者であり、ロシアの将来についてはリアリストで、西側との密接な関係について、モスクワの主流派の多くが抱いていたような疑念は持っていなかった。彼は、ロシアの運命はヨーロッパの一国としてのものだと信じていた。文化的にも、経済的にも、政治的にも、ヨーロッパこそロシアの居場所だった。
ジョージ・W・ブッシュはそれを歓迎した。だが、クリントンと同じく、ブッシュはロシアの未来が、アメリカの率いる世界の一部になることだと考えた。
プーチンはそう思わなかった」