岩城けいのレビュー一覧

  • M

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    ネタバレ

    大学生になったマットは、アルメニアの移民2世のアビーと出会う。どれだけ長くオーストラリアにいてもアジア人・日本人のステレオタイプで見られるマットと、自分では行ったこともないアルメニアに縛られてどこにも属していないと感じるアビーの、なんというか異なる「マイノリティ」の受け止め方というか、それぞれの葛藤が丁寧に描かれていた。
    MasatoがMattになり、最後にMという書名になるのはどんどん捨象されてるような印象を受けたけど、オーストラリアで生きていくために切り捨てたMasatoも自分自身としてもう一度復活させて、MattとMasatoのどちらも自分として生きていく、その重なるところとしてのMなの

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    2024年06月10日
  • Matt

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    ネタバレ

    ワトソン10年生になったマットこと真人が、人種差別や自己嫌悪とひたすら格闘する一巻。
    新しくやってきたマット.Wは、戦時中に日本兵に虐げられた祖父の影響で、真人=マット.Aを目の敵にして嫌がらせをしてくる。マット.Wの「ジャップ」という言葉に縛られて、無視しきれなくなった真人の葛藤が丁寧に描かれていて苦しくなった。乱闘になった2人を謹慎処分として、2人を更生させるためにさまざまな仕掛けを用意する演劇科のキャンベル先生が教育者としてとても素敵。キャンベル先生は差別と暴力を繰り返すマット.Wだけでなく、それを徹底的に無視しようとする真人の無関心も戒める。嫌い、というのは無関心よりずっと良い。自分が

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    2024年05月31日
  • M

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    ネタバレ

    この島国に住み生きていると忘れがちになってしまうグローバルなこと、このMasatoシリーズは考えさせてくれます。
    アビーという女の子にとってもアルメニア人であるということが足枷になっているし、悩みでもある。
    民族、人種の違いって、ましてや他所の国に住んでいるということも人としてこれほど重くのしかかっているなんて。
    清々しいだけの青春小説でない、けれど未来をこれから切り開いてゆく若い人たちに読んで頂きたい。
    マリオットって隠喩の小道具も、とても効果的です。

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    2023年07月16日
  • Matt

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    MasatoからMattになっても日本人であることから逃れられない。日本人だけじゃない。それぞれの出自の刻印から逃れられない。収容所にいた刻印も含めて。違いが生み出す暴力や自殺。和解を安易に導かない。安易な昇華は求めない。名作です。

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    2023年01月22日
  • さようなら、オレンジ

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    ダイバーシティは孤独な戦いだ。その辛い現実を描くだけでなく、希望を描ききっている秀逸な作品だと思う。特に92頁から94頁の溢れる言葉に強く胸を打たれた。違うことを諦めない力強い宣言がそこにあった。

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    2022年11月03日
  • Matt

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    オーストラリアの名門校に合格し、新たな生活に入った真人。前作の「Masato」に続き、葛藤しながらも生活を楽しんで成長していく話 と思って読み始めたら、予測を上回るヘビーな内容だった。

    オーストラリアではジャップと嘲られ、日本にでは帰国子女と呼ばれ、日本人とは感覚が違うと退けられ、自らのアイデンティティに苦しむ。
    自国のコミュニティから脱することのできない親と、現地に馴染んでいく息子との広がっていくみぞ。
    悲惨な展開もあるけど、教育制度の違いも面白く、先が気になってやめられない一冊でした。

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    2022年01月23日
  • Masato

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    外国で暮らすことになった子どもとその家族の描写が良いのはもちろんのこと、プロットもとても良いのでちゃんと小説として楽しめた。
    子どものストレスも、母親の焦りもわかりすぎて、もっと早く読んでいたら辛くなっていたと思う。渡米から一年経って、自分もマサトと同じような経過をたどった今の時期に読んで良かった。数か月前に買っていたけど、今読んで良かった。
    子どもは吸収が早いから、英語ペラペラになった?、何か英語しゃべってみて。悪気なく子どもに言う人には、子を守るべき親として逆に問い返したい。ペラペラってどういう状態ですか?あなたは日本人にも、何か日本語しゃべってみてと言いますか?
    親がブレない信念を持って

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    2021年12月28日
  • Masato

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    帰国生の気持ちをあまりにうまくとらえていて感動しました。大人になった元帰国生にとっては、共感しすぎて、辛すぎて、休み休みしか読めませんでした笑
    帰国生の華やかで恵まれた面と常に対をなす、混乱や欠落感、自分が何者かわからない孤独をぜひ、いろんな人に知ってほしい。。!

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    2021年12月05日
  • Matt

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    前作『Masato』から成長した真人の10年生(16~17歳)の一年間が描かれている。  
    MasatoからMattへの成長が文体にも現れて、対象読者年齢もその分あがっている。

    オーストラリアに溶け込んでいたMattだったが、転校生で同姓のMattから憎しみをぶつけられることで過去に日本が犯した罪を知り、日本人であることと向き合わざるを得なくなる。
    転校生Mattに怒り、父親が日本人意識を持ち続ける態度にも怒り、何より自分自身に怒っている。
    I hate myself! が悲しいくらい繰り返される。
    16歳の男子の悩む姿、怒りの爆発的なエネルギーに圧倒された。

    前作では、母親に批判的な読み

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    2021年07月08日
  • さようなら、オレンジ

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    アフリカからの難民としてオーストラリアにやってきたサリマは、1人でこどもを養い語学研修所で英語を習う。そこには赤ちゃんを抱いて参加している日本人「ハリネズミ」がいた。
    本作はサリマの目線とハリネズミの恩師への手紙によって交互に書かれる。

    サリマの話を追いながら何度も目頭があつくなった。祖国を失い異国で居場所を求める、その苦難や悲しみだけでなく勇気や幸福にも。

    ハリネズミが書くジョーンズ先生への手紙は英語だろうか?だとしたら、これだけライティングができても異国では「言葉もわからず取り残される」気持ちでいるのだ。
    異国で居場所を見つけられず、子どもを生み育てることの孤独が伝わる。
    ハリネズミか

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    2021年07月08日
  • Matt

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    「Masato」の続編。  
    小学生の時にオーストラリアに移ってきて、今は16歳。父との対立、日本人であるだけで拒絶反応を示す、戦争の負の記憶を持つ人たち。みんなのことが嫌いだし、何よりも自分自身が大嫌い。自分とは何なのか?アイデンティティを模索する少年の話。

    キャンベル先生の「みんな言ってる、と、きみは言ったな?みんな、と。きみは自分の頭で考えるということをしないのか?きみのような人間には、人の痛みや悲しみを感じ取ることはできず、それを自分のこととして考えることもできない。」という言葉が刺さりました。

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    2020年08月27日
  • さようなら、オレンジ

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    ネタバレ

    外国から移住してきた3人の女性の話。言葉の壁、そして異国での孤独感‥‥読んでいて苦しかったです。初めは相容れなかった3人が最後には友情を感じ、お互い助け合っていく、現地の人たちからも受け入れられていく、そういうラストで良かった!
    余韻に浸れる、良い作品でした。

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    2020年07月21日
  • Matt

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    ネタバレ

    5年生でオーストラリアに家族で渡ったあの「masato」の続編。
    人種の違いや生活習慣の違い、それ以上に第二次大戦後の民族間のすれ違いなど、同じ名前の『Matt』との軋轢を中心にストーリーは進むけれど真人はまだ高校生。子供ではないけれど大人でもない世代の友人関係や家族との関わり方もひとつひとつ重みのある大切にしたい文章があふれている。
    ストーリー的にはまだまだ続きがありそうなのでまた、続編を期待してしまう。

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    2019年04月03日
  • さようなら、オレンジ

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    心が震えた。
    かたや難民、かたや夫の転勤という自分の意志とは関係ない理由によって、オーストラリアの片田舎にやってきた二人の女性。このアフリカ人と日本人が心を通わせつつ、自分が何者であるかを自覚して前へ進んでいく。母語ではない言語という意味での「言葉」の力、自分が母親であることを自覚させる「子ども」の力、そして人と共に学び、労働することで生まれる「交流」の力。こうした力を全身で受けながら、前へ前へと進んでいく。
    わずか160ページのこの単行本には、とんでもない魂が込められていた。

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    2018年11月18日
  • さようなら、オレンジ

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    母親の、女性の強さを教えてくれる作品。日々を普通に生きていく、そんな日常を過ごす事の素晴らしさを改めて教えてもらった。人の心の優しさ、善意の無垢な美しさに触れること、自分の生活でもそう言った一日一日の中の小さな喜びをしっかり噛みしめて生きていきたいと思った。

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    2018年10月31日
  • さようなら、オレンジ

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    ワタシには文句無しの星5つです♪皆さんの評価が平均点あまり高くないので少し気になっていたけどいきなりガツンと来た!何なんだ?凄い迫り方で参りました!テーマは言語の可能性と限界ですけど、限界なんて実は無いのだよ と言われてしまった!
    舞台はオーストラリアでアフリカ難民で教育も受けられなかった女性と高い知的レベルだけど表情も会話も平板な日本人女性が英語教室で出会い無二の友になって行く。二人共に思わぬ辛苦が待ち受けていたが、徐々に徐々に克服していく。
    韓国語学習10年以上になるけどもう少し真剣に勉強してきたら、もっと自在にかの国の皆さんと色んな意見や心情を交換できたんだろうなぁ‼️でもまだ遅くな

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    2018年10月24日
  • さようなら、オレンジ

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    読み始めは、話が飛び、訳わからなかったが、読み続け、面白くなってきました。人は見かけで判断してはいけません。友だち、子ども、援助、継続、生きていくうえで、大切なことですね。実直、信念、生き抜く力。

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    2025年01月05日
  • M

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    面白かった。日本人としてのアイデンティティに悩む彼の心情が、よく描かれているなと思ったら、作者も、単身渡豪して、その心境を味わったんだなと納得した。日本に住んでいると感じないが、他国に住めば、日本人はそう見られるんだなとちょっとぞっとする感覚もあった。アルメニア人は、もっと、複雑なんだな。と思った。典型的な日本人って、ステレオタイプの日本人って、どこにいるんだろう。白人は、そんなに偉いんだろうか?逆に、自分達は、他の国の人に対して差別的に扱っていないだろうか?歴史的にも、敗戦国の人々は、人権を踏み躙られるような扱いをされてきた。もう、文明が進んで、これだけ地球が狭く感じられるようになったんだか

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    2024年11月30日
  • さようなら、オレンジ

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    他の方の感想を読んで初めてオーストラリアに逃げてきた、と知った。読んでる天気予報がスカンジナビアンというので、北欧へ移民したのかと思っていた…

    アフリカへの勝手な偏見から、始まりの文章で血のついた作業着、という表現で最悪な仕事かと、これまた勘違い…日本人の移住者のさおりの手紙で段々と明かされていく。
    何人かの女性の生き様を、第二言語に悩むことを、また教育を受けたことのない人とで会った日本人女性の反応を、国力の違いをありのまま表現しているのはとてもよかった。

    短いながらに深い。
    薄く、文字も大きい本なのだが、内容は深く読ませる。とてもよかった。小学生の推薦図書にしたい一冊だ。

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    2024年03月28日
  • さようなら、オレンジ

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    移民の国オーストラリアでも白人優位社会なんだろうか?アフリカ難民も日本人も差別を受けながら暮らしている。サリマは学ぶ機会がなく母語さえも不十分な状態で第二言語を学んでいる。その困難さがよくわかった。表現する言語を持たなくても感じることはたくさんある。少ない言葉、稚拙な表現でも伝わるものがある。日本に暮らす技能実習生や難民の人と接するとき、この本を思い出したい。

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    2024年02月13日