岩城けいのレビュー一覧
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ネタバレ大学生になったマットは、アルメニアの移民2世のアビーと出会う。どれだけ長くオーストラリアにいてもアジア人・日本人のステレオタイプで見られるマットと、自分では行ったこともないアルメニアに縛られてどこにも属していないと感じるアビーの、なんというか異なる「マイノリティ」の受け止め方というか、それぞれの葛藤が丁寧に描かれていた。
MasatoがMattになり、最後にMという書名になるのはどんどん捨象されてるような印象を受けたけど、オーストラリアで生きていくために切り捨てたMasatoも自分自身としてもう一度復活させて、MattとMasatoのどちらも自分として生きていく、その重なるところとしてのMなのだと分かった。
Masatoと一緒にオーストラリアに来て死んでしまった柴犬のチロのことを、23歳になっても彼はまだ大事にしている。アビーがチロに似た操り人形を作ってあげるのはとても象徴的で、柴犬のチロが日本の真人の象徴だとしたら、一度死んだ日本人真人がアビーの手によって新しく生き返ったのであって、それはアビーとの関わりを通してMasatoがMに止揚されて復活するのと相似形だ。人形のチロがどんなに本物のチロに似ていたとしてもあのチロではないのと同じように、再び取り戻された真人もあの頃の真人ではない、まさに止揚された真人なんだろうけど。純日本犬・日本人ではなく、国籍や人種の複雑さを引き受けた上での彼ら。 -
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外国で暮らすことになった子どもとその家族の描写が良いのはもちろんのこと、プロットもとても良いのでちゃんと小説として楽しめた。
子どものストレスも、母親の焦りもわかりすぎて、もっと早く読んでいたら辛くなっていたと思う。渡米から一年経って、自分もマサトと同じような経過をたどった今の時期に読んで良かった。数か月前に買っていたけど、今読んで良かった。
子どもは吸収が早いから、英語ペラペラになった?、何か英語しゃべってみて。悪気なく子どもに言う人には、子を守るべき親として逆に問い返したい。ペラペラってどういう状態ですか?あなたは日本人にも、何か日本語しゃべってみてと言いますか?
親がブレない信念を持っていること、変化に適応する子どもを否定しないこと、どちらの文化も否定しないこと、子どもと同じように苦労し努力すること、本当に大事だと思った。
ぼくはイエローでホワイトで〜で描かれた移民二世とはまた違う、外国で暮らす日本の子どもの葛藤を伝えてくれる作品。これがもし、ぼくはイエローでホワイトで〜のような、よりキャッチーなタイトルだったらもっと多くの人に読まれているのではないかと思う。 -
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アフリカからの難民としてオーストラリアにやってきたサリマは、1人でこどもを養い語学研修所で英語を習う。そこには赤ちゃんを抱いて参加している日本人「ハリネズミ」がいた。
本作はサリマの目線とハリネズミの恩師への手紙によって交互に書かれる。
サリマの話を追いながら何度も目頭があつくなった。祖国を失い異国で居場所を求める、その苦難や悲しみだけでなく勇気や幸福にも。
ハリネズミが書くジョーンズ先生への手紙は英語だろうか?だとしたら、これだけライティングができても異国では「言葉もわからず取り残される」気持ちでいるのだ。
異国で居場所を見つけられず、子どもを生み育てることの孤独が伝わる。
ハリネズミから終始伝わってくるのは強い焦り。したいことができない子育中の多くの女性が感じる焦りだ。
ハリネズミの手紙から、母語の意味についても考えさせられた。
ふたりは同じ語学研修所に通いながら境遇がまるで違う。相容れないと思っていたふたりが大切な友になっていく過程には、女性が知る哀しみの共感もあるのだろう。
「シャーロットのおくりもの」を読み聞かせてもらっていた文盲のトラッキーの「女ってすげえ」の一言は深い。 -
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ワタシには文句無しの星5つです♪皆さんの評価が平均点あまり高くないので少し気になっていたけどいきなりガツンと来た!何なんだ?凄い迫り方で参りました!テーマは言語の可能性と限界ですけど、限界なんて実は無いのだよ と言われてしまった!
舞台はオーストラリアでアフリカ難民で教育も受けられなかった女性と高い知的レベルだけど表情も会話も平板な日本人女性が英語教室で出会い無二の友になって行く。二人共に思わぬ辛苦が待ち受けていたが、徐々に徐々に克服していく。
韓国語学習10年以上になるけどもう少し真剣に勉強してきたら、もっと自在にかの国の皆さんと色んな意見や心情を交換できたんだろうなぁ‼️でもまだ遅くない ですよね♪ -
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面白かった。日本人としてのアイデンティティに悩む彼の心情が、よく描かれているなと思ったら、作者も、単身渡豪して、その心境を味わったんだなと納得した。日本に住んでいると感じないが、他国に住めば、日本人はそう見られるんだなとちょっとぞっとする感覚もあった。アルメニア人は、もっと、複雑なんだな。と思った。典型的な日本人って、ステレオタイプの日本人って、どこにいるんだろう。白人は、そんなに偉いんだろうか?逆に、自分達は、他の国の人に対して差別的に扱っていないだろうか?歴史的にも、敗戦国の人々は、人権を踏み躙られるような扱いをされてきた。もう、文明が進んで、これだけ地球が狭く感じられるようになったんだから、どの国とか関係なく仲良くできないかな?
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他の方の感想を読んで初めてオーストラリアに逃げてきた、と知った。読んでる天気予報がスカンジナビアンというので、北欧へ移民したのかと思っていた…
アフリカへの勝手な偏見から、始まりの文章で血のついた作業着、という表現で最悪な仕事かと、これまた勘違い…日本人の移住者のさおりの手紙で段々と明かされていく。
何人かの女性の生き様を、第二言語に悩むことを、また教育を受けたことのない人とで会った日本人女性の反応を、国力の違いをありのまま表現しているのはとてもよかった。
短いながらに深い。
薄く、文字も大きい本なのだが、内容は深く読ませる。とてもよかった。小学生の推薦図書にしたい一冊だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレオーストラリアの現地校に転校した5年生マサトの話。真人がどんどん英語がわかるようになっていくと同時にどんどん成長して、親とは違う自分の世界を作って、最後は進路を自分で決めて、母の反対を振り切ってオーストラリアに残る決断をする。真人ではなくてマットになっていき、マシュー・アンダーソンみたいな目立たない名前なら良いのに、と思いながらも、それでもMasatoと書くところに、アイデンティティと自我の確立を見た気がする。日本から連れてきて、ずっと友達でいてくれた柴犬のチロが死んでしまうくだりは感情移入して辛かった。犬は一番の友達だよな。
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Posted by ブクログ
ネタバレ「Masato」「Matt」に続く作品は「M」。
マサトでもあり、マットでもある「僕」が自分について問い続けるからだろう。
とにかく、父の仕事の都合でオーストラリアに連れてこられ、
困り果てていた少年が日本に戻らぬ選択をし、
ここでは、ついに大学まで卒業をしてしまう!
なんか、こちらも年をとったよね、そして読後の良さは覚えているけれど
はたしてどこがどう良かったのかを全く覚えていないという始末。
いちおう、本棚チェックをしたのだが、収めていなかった。
年のためにみた、前の本棚にも無し(あの頃はムラがあったからな)
とにかく本作は、岩城系らしさが全開、良い意味で。
マットは自分のグルグルから、同じように悩む他者へ目を向け、
居心地の悪さを感じるが・・・やがて、というお話。
アビーというアルメニア系の女性が、なかなか秀逸。
アルメニアも、以前、ジェノサイドをテーマにした児童文学作品を
読んだのだけれど、これも収録しておらず。
ネットでもチェックしたけれど、さして有名なタイトルでもなく
古い作品だからなのか、はたまた検索が未熟だからか
ヒットせず。
つくづく、ちまちまと(?)この本棚を活用する意義を感じる。 -
Posted by ブクログ
生まれたばかりの女の子の母親であり、大学で働く夫を持ち、、自らも高等教育を受けてオーストラリアに暮らす日本人女性。アフリカで戦争に巻き込まれ命からがら逃げ出し、難民としてオーストラリアに移住。夫は蒸発し二人の子を男の子を育てる黒人女性。同じ英会話教室に通う全く異質な二人の女性が主人公の話です。
それぞれの生き様を描きながら、合間に書簡体を挟み込み、重層的に話が進みます。本音の話、最初は話の筋が見えずかなり苦戦したのですが、途中からはグイグイ引き込まれます。これが岩城さんのデビュー作のはずですが、そんなことを全く感じさせない見事な構成力です。わずか170頁。余白も大きな本ですが、充実度が高く、重たい長編小説を読んだような気がします。
岩城さんは長くオーストラリアで生活されている作家さんで、先日読んだ『サウンド・ポスト』でもこの作品でも、母語(日本語)と第二言語(英語)の葛藤が大きなテーマなのですが、どうも岩城さんの文体は、翻訳書を、あるいは英語で考え日本語で書た文章の様な感じがします。それも味なのでしょうが、私はちょっと苦手です。
全体を覆うどこか重苦しい雰囲気は岩城さんの持ち味なのでしょうね。それでも二人の女性がしっかりと前を向いて進んでいくエンディングは心地良く。