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Posted by ブクログ 2022年11月03日
ダイバーシティは孤独な戦いだ。その辛い現実を描くだけでなく、希望を描ききっている秀逸な作品だと思う。特に92頁から94頁の溢れる言葉に強く胸を打たれた。違うことを諦めない力強い宣言がそこにあった。
Posted by ブクログ 2021年07月08日
アフリカからの難民としてオーストラリアにやってきたサリマは、1人でこどもを養い語学研修所で英語を習う。そこには赤ちゃんを抱いて参加している日本人「ハリネズミ」がいた。
本作はサリマの目線とハリネズミの恩師への手紙によって交互に書かれる。
サリマの話を追いながら何度も目頭があつくなった。祖国を失い異...続きを読む国で居場所を求める、その苦難や悲しみだけでなく勇気や幸福にも。
ハリネズミが書くジョーンズ先生への手紙は英語だろうか?だとしたら、これだけライティングができても異国では「言葉もわからず取り残される」気持ちでいるのだ。
異国で居場所を見つけられず、子どもを生み育てることの孤独が伝わる。
ハリネズミから終始伝わってくるのは強い焦り。したいことができない子育中の多くの女性が感じる焦りだ。
ハリネズミの手紙から、母語の意味についても考えさせられた。
ふたりは同じ語学研修所に通いながら境遇がまるで違う。相容れないと思っていたふたりが大切な友になっていく過程には、女性が知る哀しみの共感もあるのだろう。
「シャーロットのおくりもの」を読み聞かせてもらっていた文盲のトラッキーの「女ってすげえ」の一言は深い。
Posted by ブクログ 2020年07月21日
外国から移住してきた3人の女性の話。言葉の壁、そして異国での孤独感‥‥読んでいて苦しかったです。初めは相容れなかった3人が最後には友情を感じ、お互い助け合っていく、現地の人たちからも受け入れられていく、そういうラストで良かった!
余韻に浸れる、良い作品でした。
Posted by ブクログ 2018年11月18日
心が震えた。
かたや難民、かたや夫の転勤という自分の意志とは関係ない理由によって、オーストラリアの片田舎にやってきた二人の女性。このアフリカ人と日本人が心を通わせつつ、自分が何者であるかを自覚して前へ進んでいく。母語ではない言語という意味での「言葉」の力、自分が母親であることを自覚させる「子ども」の...続きを読む力、そして人と共に学び、労働することで生まれる「交流」の力。こうした力を全身で受けながら、前へ前へと進んでいく。
わずか160ページのこの単行本には、とんでもない魂が込められていた。
Posted by ブクログ 2018年10月31日
母親の、女性の強さを教えてくれる作品。日々を普通に生きていく、そんな日常を過ごす事の素晴らしさを改めて教えてもらった。人の心の優しさ、善意の無垢な美しさに触れること、自分の生活でもそう言った一日一日の中の小さな喜びをしっかり噛みしめて生きていきたいと思った。
Posted by ブクログ 2018年10月24日
ワタシには文句無しの星5つです♪皆さんの評価が平均点あまり高くないので少し気になっていたけどいきなりガツンと来た!何なんだ?凄い迫り方で参りました!テーマは言語の可能性と限界ですけど、限界なんて実は無いのだよ と言われてしまった!
舞台はオーストラリアでアフリカ難民で教育も受けられなかった女性と高...続きを読むい知的レベルだけど表情も会話も平板な日本人女性が英語教室で出会い無二の友になって行く。二人共に思わぬ辛苦が待ち受けていたが、徐々に徐々に克服していく。
韓国語学習10年以上になるけどもう少し真剣に勉強してきたら、もっと自在にかの国の皆さんと色んな意見や心情を交換できたんだろうなぁ‼️でもまだ遅くない ですよね♪
Posted by ブクログ 2017年08月18日
異国の地オーストラリアで出逢った、二人の女性の友情の物語。
アフリカからの難民のシングルマザーの女性と、夫の仕事の都合で移住してきた日本人女性。
共に肌の色等による人種差別や言語が伝わらない不自由さに悩む。
様々な困難にぶつかるが、徐々に「知らない事への恐怖」が「知る事の歓び」へと変わっていく。
...続きを読む国籍や人種、自分の境遇を決して言い訳にしない、そんな強い彼女は素晴らしい!
オレンジ色のおひさまに向かって、永遠の願いや祈り、希望を力強く誓う彼女から、未だ異国の地に住んだことのない私も、温かな勇気をもらったように思う。
Posted by ブクログ 2017年06月19日
形式が面白かった。同じく在外の身で、色々と自分自身と重ねられるところもあった。今住んでいるカナダはシリアなどからの移民を多く受け入れているし、アジアの移民も多い。一人一人の物語を伝えてあげたい気持ちになる。
Posted by ブクログ 2017年02月11日
本屋さん大賞第4位、太宰治賞受賞。それだけの知識しかなかった。読みやすい系の純文学なんだろうなと、それだけで手に取る。
パーカーの「愛と名誉のために」系の、底まで堕ちた人間が「これじゃいかん」と這い上がっていく成長小説が大好きである。やり直しが効くということは、俺にとって一番夢を与えてくれる希望で...続きを読むある。
この作品には、アフリカで底を見てきた女性と、英文学を志し挫折した女性を軸に話が進む。ステージこそ全く違うが、二人とも這い上がるために自分の手と足と頭脳を使って苦闘する。働くこと、英語を習得すること、家族や家庭のこと…それらに正面から対峙する二人の姿が俺に希望を与えてくれる。
後半、ご都合主義とも安易に流れるとも思えるくらいのスピードで物語が好転していく。
ちょっと粗いな、とも思ったが、現実だって何かをきっかけにとんとん拍子に事態が好転していくことがある。そういう時の幸福感を疑似体験させてくれているのではないかと思い直した。贔屓目かも知れんがそれくらい物語に肩入れできたということ。
予備知識なく手に取った作品だが、読んで良かった。
Posted by ブクログ 2024年03月28日
他の方の感想を読んで初めてオーストラリアに逃げてきた、と知った。読んでる天気予報がスカンジナビアンというので、北欧へ移民したのかと思っていた…
アフリカへの勝手な偏見から、始まりの文章で血のついた作業着、という表現で最悪な仕事かと、これまた勘違い…日本人の移住者のさおりの手紙で段々と明かされていく...続きを読む。
何人かの女性の生き様を、第二言語に悩むことを、また教育を受けたことのない人とで会った日本人女性の反応を、国力の違いをありのまま表現しているのはとてもよかった。
短いながらに深い。
薄く、文字も大きい本なのだが、内容は深く読ませる。とてもよかった。小学生の推薦図書にしたい一冊だ。
Posted by ブクログ 2024年02月13日
移民の国オーストラリアでも白人優位社会なんだろうか?アフリカ難民も日本人も差別を受けながら暮らしている。サリマは学ぶ機会がなく母語さえも不十分な状態で第二言語を学んでいる。その困難さがよくわかった。表現する言語を持たなくても感じることはたくさんある。少ない言葉、稚拙な表現でも伝わるものがある。日本に...続きを読む暮らす技能実習生や難民の人と接するとき、この本を思い出したい。
Posted by ブクログ 2023年12月04日
サリマが難民になって異国に来て言葉の壁を克服する過程が感動的でした。ハリネズミこと日本人が子供を亡くすシーンは悲しかったです。サリマの仕事を覚えて行き英語学校での頑張りは読んでいて応援したくなりました。
異色の感動作もあなたもぜひ読んでみてください。
Posted by ブクログ 2023年01月30日
生まれたばかりの女の子の母親であり、大学で働く夫を持ち、、自らも高等教育を受けてオーストラリアに暮らす日本人女性。アフリカで戦争に巻き込まれ命からがら逃げ出し、難民としてオーストラリアに移住。夫は蒸発し二人の子を男の子を育てる黒人女性。同じ英会話教室に通う全く異質な二人の女性が主人公の話です。
それ...続きを読むぞれの生き様を描きながら、合間に書簡体を挟み込み、重層的に話が進みます。本音の話、最初は話の筋が見えずかなり苦戦したのですが、途中からはグイグイ引き込まれます。これが岩城さんのデビュー作のはずですが、そんなことを全く感じさせない見事な構成力です。わずか170頁。余白も大きな本ですが、充実度が高く、重たい長編小説を読んだような気がします。
岩城さんは長くオーストラリアで生活されている作家さんで、先日読んだ『サウンド・ポスト』でもこの作品でも、母語(日本語)と第二言語(英語)の葛藤が大きなテーマなのですが、どうも岩城さんの文体は、翻訳書を、あるいは英語で考え日本語で書た文章の様な感じがします。それも味なのでしょうが、私はちょっと苦手です。
全体を覆うどこか重苦しい雰囲気は岩城さんの持ち味なのでしょうね。それでも二人の女性がしっかりと前を向いて進んでいくエンディングは心地良く。
Posted by ブクログ 2023年01月29日
それでもイタンジたちは強く生きていく。
アフリカから難民として渡ってきたサリマ。夫と共に日本から渡ってきたサユリ。2人の女性を軸として、オーストラリアの田舎町で生きていこうとする異邦人の生き様を描いた小説。
第二言語という異国で生活するための言葉を獲得したサリマだが、彼女の底にある強さは今までの...続きを読む人生と息子への思いにあった。決して奪われないものがある。それは自分の人生を肯定するための尊厳。日が沈んでまた新しい日が来るたびに、新しい自分へと生まれ変わり、階段を登っていくのだという前向きな強さ。
サリマからハリネズミと呼ばれるサユリは、幼い娘を事故で亡くす。大学で学び、書くことを手放そうとした彼女に、サリマは「違う」と伝え続ける。結局彼女は書き続けることを選んだ。様々な事情に振り回される彼女も奪われないものを見つけた。それが母語で書くことだった。
言語は思考を形作る。コミュニケーションの手段となる。マイノリティつまり「イタンジ」である登場人物たちが、自分の中にある奪われないエネルギーを見つけ、立ち上がっていく姿は美しい。まるで鮮やかなオレンジの夕陽のように感じた。
Posted by ブクログ 2022年06月12日
外国に限らず、慣れない土地で暮らす苦労や地元の人から滲み出る「よそ者」としての扱いが滲み出していました。
どんよりしていて、無気力な雰囲気で途中で読むのをやめようかと思いましたが
後半は光が差し込むような感じでじんわりと温かい気持ちになりました。
Posted by ブクログ 2019年03月09日
“私たちが自分の母語が一番美しい言葉だと信じきることができるのは、その表現がその国の文化や土壌から抽出されるからです。第一言語への絶対の信頼なしに、二番目の言語を養うことはできません。”(p.77)
Posted by ブクログ 2018年12月09日
生後半年ほどのわが子が突然死したときの、大学に通う母親の罪悪感と後悔がひしひしと伝わってきて、そのシーンだけは読み進めるのがきつくていったん本を閉じてしまった。二度と読みたくない。心臓をわしづかみにされる。
新聞書評を読んで、興味がわいたので借りた本。
書評にも書いてあったが、どうしてこれを日本...続きを読む人が書くのか、日本語で書くのか、疑問だ。英語で書かれた外国人の作者の本を翻訳したものではない。れっきとした日本人が日本語で書いた本。でも主人公はアフリカの難民の女性。オーストラリアに避難してきて、子どもと生活している。
そう、舞台はオーストラリアなのだ。日本じゃない。
かろうじて、主人公の友人が日本人というだけ。この友人も、途中までアジア人としか書いてなかったので、私は中国人だと信じて疑わなかった。なぜなら、生後間もない赤ちゃんを英語教室に連れてきてまで学習するほどのガッツがある若い母親が、どちらかというとひ弱なイメージのある日本人だとは思えなかったから。なんとなくたくましいイメージのある大陸人(中国人)だと思い込んでしまった。
作者も在豪20年のバイリンガルらしい。
それだけ日本がグローバル化してきたということなのかなあ?
Posted by ブクログ 2018年10月25日
戦乱のアフリカからオーストラリアにやってきたが、夫に逃げられ、英語の話せないアフリカ人女性ナキチ。日本から夫婦で来たもと大学生で体の弱い女性さゆり。イタリアから来た老夫婦。それぞれに理由と悩みを抱えながら、語学学校で交友を深める。そしてオーストラリアで新しい人生を力強く歩みだす。短い小説ですが、生き...続きを読むるとはなにか、死とはなにか、を考えさせてくれます。アフリカ女性ナキチ(サリマ)が息子の小学校で、アフリカで過ごした厳しい「生」を短く、たどたどしく語る場面は感動的です。息子は母の「話し」を聞いて、変わります。「ことば」が「心」を伝える術であることを教える本でもあります。
Posted by ブクログ 2018年05月18日
同じ国、同じ言葉。同じであることに安心し、生きる私たち。今使っている言葉が、アイデンティティだなんて思いもしない。だってみんな“同じ”だから。その言葉の中で守られて生きているなんて、気付きもしないのだ。
そんな、自分を守ってくれる国を捨ててまで、異国に逃げなければいけなかったサリマ。今までの普通が、...続きを読む異質になる。不安。恐怖。それでも、生きるために、子供たちを守るために、立ち向かわなければならない壁。
どれだけ高い壁だったのだろう。簡単に飛び越えられるものではなかったことは確かだ。それでもひたむきに母国と自分自身、そして今置かれている環境に向き合い続けたサリマの強さ。国に関わらず、誰しもに響くものがあったはず。
自分の国を、日本の言葉を、日々大切にして生きていきたいと思った。
Posted by ブクログ 2018年01月08日
2014.5/15 戦火に追われ母国ではない地で生きるしかない主人公の姿は、日々精神的な異邦人感とでも呼べばいいのか、そんなものを感じている自分と重なり、のめり込むように読まされた。
Posted by ブクログ 2017年12月24日
最初、背景がよくわからず、半分くらいまでは読むのに苦労したけど、後半は一人一人のキャラクターも、彼女たちの力強さも加わってよかった。
タイトルと本の厚さからは想像できない内容ですが、なかなか良い本でした。
2017.12.24
Posted by ブクログ 2017年02月11日
あらすじ
オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の子どもを育てている。
母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。
そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた...続きを読む。
祖国と移住先の違いにとまどいながらも、淡々とできることをできうる限りこなしていく、自分というものをしっかり持った難民がオーストラリアの住民であると自覚するまでの話。
「○○を××で買う」のに夢中な同僚に違和感を抱き、「何か違う」と感じるサリマに共感する。自分も「○○を××で買う」に嫌気をさしながら、「○○を××で買う」に流されているのを感じているから、考えさせられた。
Posted by ブクログ 2017年11月09日
2014年本屋大賞にノミネートされていましたが、
ページ数が少ないわりには、中身が濃い作品でした。
言葉もわからない異国の地で、けなげに生きる二人の女性。詳細でわかりやすいレポをこたろうさんが書かれていますので、私は手短に・・・。
アフリカ難民のサリマと日本人「ハリネズミ」(サリマがつけたあだ名...続きを読む)との物語。サリマの日常生活と、「ハリネズミ」が日本の先生に宛てた手紙とが、交互に描かれていました。
言葉がわかれば人とも触れ合える。
生活をささえるために、無我夢中で働くサリマですが、
言葉を勉強するために職業訓練学校で英語を学び始めます。
そこで出会ったのが「ハリネズミ」でした。
サリマの故郷、アフリカの大地に昇る太陽をイメージする「オレンジ」は、
異国で暮らすサリマにとっては唯一の心の安らぎだったのでしょう。
望郷を感じるのは「オレンジ」だけというサリマの半生は哀しいですが、
これからは、なんだか明るく力強い未来が予想できます。
平和な日本で暮らす私には考えられない内容の作品でした。
Posted by ブクログ 2020年03月05日
海外で暮らしたことがある人にはしみるのだろうな。
移民の受け入れとか外国人との共生とか言われるようになってきたタイミングで読めてよかった。
二つ目の言語は二つ目の人生を送るチャンスというフレーズにぐっと来た。そうだよなあ。移民でなくても同じ。もっと言えば、言語に限らず新しいことを始めるのは新しい人生...続きを読むをはじめるチャンス。
Posted by ブクログ 2018年03月10日
オーストラリアに移り住んだアフリカ難民・サリマ。人種、肌の色、言葉、これらが違うことで異国で普通の生活が出来ないつらさが溢れた物語で占められているような感じだったが、読み進めるうちに希望に包まれていき、心が穏やかになるのが分かる作品だった。
特に、サリマが下の息子の授業でアフリカでの出来事を話すとこ...続きを読むろから夫と離婚し2人の息子を連れて行く中、下の子がサリマのところに残った場面は涙と笑顔が込み上げてきました。
2014年の本屋大賞ノミネート作品ということで読みましたが出会えてとても良かった一冊です。
Posted by ブクログ 2017年12月24日
難民サリマの悲喜、厭世、矜持、希望を織り交ぜて、彼女が心理的葛藤の中で自分を見出し、成長していく姿を著す。新たな環境に放たれて、女性として自活することの困惑が自信へと変じていく様が心に響く。対して、サユリの手紙は何なんだろう。家庭生活の愚痴、夫への半端なわだかまり、そんなのを長々と記した手紙を頻繁に...続きを読む読ませられるジョーンズ先生は、真にお気の毒である。自己研鑽するに決して不幸な立場とは思えません。単純にサリマの物語で良かった。
Posted by ブクログ 2017年09月05日
アフリカの難民・サリマは、夫と息子たちとたどり着いた
言葉もわからない異国の地で、働き、子供を育て、言葉を学び、その中で友を得て、生きていきます。
サリマは仕事をがんばります。そして評価されていき責任ある立場になっていきます。
働き、自分一人で子供を育て、学校に通って英語を学んでいく。
たくまし...続きを読むいなと思いました。
普通の生活を何気なく送るということは、生きるということです。
命をかける場面も大きな病気をする場面がなくても、
ありきたりの日常だったとしても、それは生きているってことだなと考えたりしました。
「あたりまえを欲しがっていたのに、全然幸せそうにみえないじゃないか」という一文が出てきます。
だったら、周りの人や自分自身でさえも「そんなの無理でしょ」って
思うような、諦めてしまった夢や目標があるなら、
諦めなくていいんじゃないか、と勇気をもらえた気もします。