【感想・ネタバレ】さようなら、オレンジのレビュー

あらすじ

オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。第29回太宰治賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ダイバーシティは孤独な戦いだ。その辛い現実を描くだけでなく、希望を描ききっている秀逸な作品だと思う。特に92頁から94頁の溢れる言葉に強く胸を打たれた。違うことを諦めない力強い宣言がそこにあった。

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2022年11月03日

Posted by ブクログ

アフリカからの難民としてオーストラリアにやってきたサリマは、1人でこどもを養い語学研修所で英語を習う。そこには赤ちゃんを抱いて参加している日本人「ハリネズミ」がいた。
本作はサリマの目線とハリネズミの恩師への手紙によって交互に書かれる。

サリマの話を追いながら何度も目頭があつくなった。祖国を失い異国で居場所を求める、その苦難や悲しみだけでなく勇気や幸福にも。

ハリネズミが書くジョーンズ先生への手紙は英語だろうか?だとしたら、これだけライティングができても異国では「言葉もわからず取り残される」気持ちでいるのだ。
異国で居場所を見つけられず、子どもを生み育てることの孤独が伝わる。
ハリネズミから終始伝わってくるのは強い焦り。したいことができない子育中の多くの女性が感じる焦りだ。
ハリネズミの手紙から、母語の意味についても考えさせられた。

ふたりは同じ語学研修所に通いながら境遇がまるで違う。相容れないと思っていたふたりが大切な友になっていく過程には、女性が知る哀しみの共感もあるのだろう。
「シャーロットのおくりもの」を読み聞かせてもらっていた文盲のトラッキーの「女ってすげえ」の一言は深い。

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2021年07月08日

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ネタバレ

外国から移住してきた3人の女性の話。言葉の壁、そして異国での孤独感‥‥読んでいて苦しかったです。初めは相容れなかった3人が最後には友情を感じ、お互い助け合っていく、現地の人たちからも受け入れられていく、そういうラストで良かった!
余韻に浸れる、良い作品でした。

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2020年07月21日

Posted by ブクログ

心が震えた。
かたや難民、かたや夫の転勤という自分の意志とは関係ない理由によって、オーストラリアの片田舎にやってきた二人の女性。このアフリカ人と日本人が心を通わせつつ、自分が何者であるかを自覚して前へ進んでいく。母語ではない言語という意味での「言葉」の力、自分が母親であることを自覚させる「子ども」の力、そして人と共に学び、労働することで生まれる「交流」の力。こうした力を全身で受けながら、前へ前へと進んでいく。
わずか160ページのこの単行本には、とんでもない魂が込められていた。

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2018年11月18日

Posted by ブクログ

母親の、女性の強さを教えてくれる作品。日々を普通に生きていく、そんな日常を過ごす事の素晴らしさを改めて教えてもらった。人の心の優しさ、善意の無垢な美しさに触れること、自分の生活でもそう言った一日一日の中の小さな喜びをしっかり噛みしめて生きていきたいと思った。

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2018年10月31日

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ワタシには文句無しの星5つです♪皆さんの評価が平均点あまり高くないので少し気になっていたけどいきなりガツンと来た!何なんだ?凄い迫り方で参りました!テーマは言語の可能性と限界ですけど、限界なんて実は無いのだよ と言われてしまった!
舞台はオーストラリアでアフリカ難民で教育も受けられなかった女性と高い知的レベルだけど表情も会話も平板な日本人女性が英語教室で出会い無二の友になって行く。二人共に思わぬ辛苦が待ち受けていたが、徐々に徐々に克服していく。
韓国語学習10年以上になるけどもう少し真剣に勉強してきたら、もっと自在にかの国の皆さんと色んな意見や心情を交換できたんだろうなぁ‼️でもまだ遅くない ですよね♪

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2018年10月24日

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読み始めは、話が飛び、訳わからなかったが、読み続け、面白くなってきました。人は見かけで判断してはいけません。友だち、子ども、援助、継続、生きていくうえで、大切なことですね。実直、信念、生き抜く力。

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2025年01月05日

Posted by ブクログ

他の方の感想を読んで初めてオーストラリアに逃げてきた、と知った。読んでる天気予報がスカンジナビアンというので、北欧へ移民したのかと思っていた…

アフリカへの勝手な偏見から、始まりの文章で血のついた作業着、という表現で最悪な仕事かと、これまた勘違い…日本人の移住者のさおりの手紙で段々と明かされていく
何人かの女性の生き様を、第二言語に悩むことを、また教育を受けたことのない人とで会った日本人女性の反応を、国力の違いをありのまま表現しているのはとてもよかった。

短いながらに深い。
薄く、文字も大きい本なのだが、内容は深く読ませる。とてもよかった。小学生の推薦図書にしたい一冊だ。

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2024年03月28日

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移民の国オーストラリアでも白人優位社会なんだろうか?アフリカ難民も日本人も差別を受けながら暮らしている。サリマは学ぶ機会がなく母語さえも不十分な状態で第二言語を学んでいる。その困難さがよくわかった。表現する言語を持たなくても感じることはたくさんある。少ない言葉、稚拙な表現でも伝わるものがある。日本に暮らす技能実習生や難民の人と接するとき、この本を思い出したい。

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2024年02月13日

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サリマが難民になって異国に来て言葉の壁を克服する過程が感動的でした。ハリネズミこと日本人が子供を亡くすシーンは悲しかったです。サリマの仕事を覚えて行き英語学校での頑張りは読んでいて応援したくなりました。
異色の感動作もあなたもぜひ読んでみてください。

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2023年12月04日

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生まれたばかりの女の子の母親であり、大学で働く夫を持ち、、自らも高等教育を受けてオーストラリアに暮らす日本人女性。アフリカで戦争に巻き込まれ命からがら逃げ出し、難民としてオーストラリアに移住。夫は蒸発し二人の子を男の子を育てる黒人女性。同じ英会話教室に通う全く異質な二人の女性が主人公の話です。
それぞれの生き様を描きながら、合間に書簡体を挟み込み、重層的に話が進みます。本音の話、最初は話の筋が見えずかなり苦戦したのですが、途中からはグイグイ引き込まれます。これが岩城さんのデビュー作のはずですが、そんなことを全く感じさせない見事な構成力です。わずか170頁。余白も大きな本ですが、充実度が高く、重たい長編小説を読んだような気がします。
岩城さんは長くオーストラリアで生活されている作家さんで、先日読んだ『サウンド・ポスト』でもこの作品でも、母語(日本語)と第二言語(英語)の葛藤が大きなテーマなのですが、どうも岩城さんの文体は、翻訳書を、あるいは英語で考え日本語で書た文章の様な感じがします。それも味なのでしょうが、私はちょっと苦手です。
全体を覆うどこか重苦しい雰囲気は岩城さんの持ち味なのでしょうね。それでも二人の女性がしっかりと前を向いて進んでいくエンディングは心地良く。

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2023年01月30日

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ネタバレ

それでもイタンジたちは強く生きていく。

アフリカから難民として渡ってきたサリマ。夫と共に日本から渡ってきたサユリ。2人の女性を軸として、オーストラリアの田舎町で生きていこうとする異邦人の生き様を描いた小説。

第二言語という異国で生活するための言葉を獲得したサリマだが、彼女の底にある強さは今までの人生と息子への思いにあった。決して奪われないものがある。それは自分の人生を肯定するための尊厳。日が沈んでまた新しい日が来るたびに、新しい自分へと生まれ変わり、階段を登っていくのだという前向きな強さ。

サリマからハリネズミと呼ばれるサユリは、幼い娘を事故で亡くす。大学で学び、書くことを手放そうとした彼女に、サリマは「違う」と伝え続ける。結局彼女は書き続けることを選んだ。様々な事情に振り回される彼女も奪われないものを見つけた。それが母語で書くことだった。

言語は思考を形作る。コミュニケーションの手段となる。マイノリティつまり「イタンジ」である登場人物たちが、自分の中にある奪われないエネルギーを見つけ、立ち上がっていく姿は美しい。まるで鮮やかなオレンジの夕陽のように感じた。

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2023年01月29日

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外国に限らず、慣れない土地で暮らす苦労や地元の人から滲み出る「よそ者」としての扱いが滲み出していました。

どんよりしていて、無気力な雰囲気で途中で読むのをやめようかと思いましたが
後半は光が差し込むような感じでじんわりと温かい気持ちになりました。

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2022年06月12日

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舞台はオーストラリア
一人はアフリカ難民の女性
一人は夫の仕事でやってきた日本人女性
交互に語られるが、日本人側は恩師への手紙形式

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2021年02月20日

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“私たちが自分の母語が一番美しい言葉だと信じきることができるのは、その表現がその国の文化や土壌から抽出されるからです。第一言語への絶対の信頼なしに、二番目の言語を養うことはできません。”(p.77)

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2019年03月09日

Posted by ブクログ

生後半年ほどのわが子が突然死したときの、大学に通う母親の罪悪感と後悔がひしひしと伝わってきて、そのシーンだけは読み進めるのがきつくていったん本を閉じてしまった。二度と読みたくない。心臓をわしづかみにされる。

新聞書評を読んで、興味がわいたので借りた本。

書評にも書いてあったが、どうしてこれを日本人が書くのか、日本語で書くのか、疑問だ。英語で書かれた外国人の作者の本を翻訳したものではない。れっきとした日本人が日本語で書いた本。でも主人公はアフリカの難民の女性。オーストラリアに避難してきて、子どもと生活している。

そう、舞台はオーストラリアなのだ。日本じゃない。

かろうじて、主人公の友人が日本人というだけ。この友人も、途中までアジア人としか書いてなかったので、私は中国人だと信じて疑わなかった。なぜなら、生後間もない赤ちゃんを英語教室に連れてきてまで学習するほどのガッツがある若い母親が、どちらかというとひ弱なイメージのある日本人だとは思えなかったから。なんとなくたくましいイメージのある大陸人(中国人)だと思い込んでしまった。

作者も在豪20年のバイリンガルらしい。

それだけ日本がグローバル化してきたということなのかなあ?

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2018年12月09日

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戦乱のアフリカからオーストラリアにやってきたが、夫に逃げられ、英語の話せないアフリカ人女性ナキチ。日本から夫婦で来たもと大学生で体の弱い女性さゆり。イタリアから来た老夫婦。それぞれに理由と悩みを抱えながら、語学学校で交友を深める。そしてオーストラリアで新しい人生を力強く歩みだす。短い小説ですが、生きるとはなにか、死とはなにか、を考えさせてくれます。アフリカ女性ナキチ(サリマ)が息子の小学校で、アフリカで過ごした厳しい「生」を短く、たどたどしく語る場面は感動的です。息子は母の「話し」を聞いて、変わります。「ことば」が「心」を伝える術であることを教える本でもあります。

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2018年10月25日

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同じ国、同じ言葉。同じであることに安心し、生きる私たち。今使っている言葉が、アイデンティティだなんて思いもしない。だってみんな“同じ”だから。その言葉の中で守られて生きているなんて、気付きもしないのだ。
そんな、自分を守ってくれる国を捨ててまで、異国に逃げなければいけなかったサリマ。今までの普通が、異質になる。不安。恐怖。それでも、生きるために、子供たちを守るために、立ち向かわなければならない壁。
どれだけ高い壁だったのだろう。簡単に飛び越えられるものではなかったことは確かだ。それでもひたむきに母国と自分自身、そして今置かれている環境に向き合い続けたサリマの強さ。国に関わらず、誰しもに響くものがあったはず。
自分の国を、日本の言葉を、日々大切にして生きていきたいと思った。

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2018年05月18日

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2014.5/15 戦火に追われ母国ではない地で生きるしかない主人公の姿は、日々精神的な異邦人感とでも呼べばいいのか、そんなものを感じている自分と重なり、のめり込むように読まされた。

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2018年01月08日

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最初、背景がよくわからず、半分くらいまでは読むのに苦労したけど、後半は一人一人のキャラクターも、彼女たちの力強さも加わってよかった。
タイトルと本の厚さからは想像できない内容ですが、なかなか良い本でした。

2017.12.24

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2017年12月24日

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ネタバレ

アフリカのナキチ(サリマ)と日本の伊藤さゆり(ハリネズミ)、パオラ(オリーブ)を中心にした、オーストラリアでの生活の話。ナキチは夫がフラフラしていて男の子の子どもが2人いる。さゆりは夫が大学の先生で、子どもは女の子1人だったが、もう1人女の子が生まれた。パオラは夫がいて、成人した子どもが3人いる。ナキチもパオラも様々な大切なものを失ってきたが、それと同時にかけがえのない大切なものを見出せた。恵まれない環境や人間関係の中にあっても、自分のすべきことを見つけ生き生きと変わっていく姿に勇気をもらえた。

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2025年12月06日

Posted by ブクログ

たぶんオーストラリアに、難民として移住したアフリカ人女性ナキチが肉や魚の加工場で働きながら第二言語の英語を獲得し、生きていく話。
2日で読んで初日はナキチ頑張れと肩入れして読んだのに翌日にはなんだか第二言語を異国で獲得していく大変さは私にはわからない、となってしまった…ただナキチだけでなくハリネズミ(日本人女性)やそのアパートに住む英語のわからない現地人など、奥行のある人物像でテーマを多角的に描いているとは思う。

先に選評を読んでしまったけれど、サユリ(ハリネズミ)のメタ構造について、小川さんの言うように必須だとも、三浦さんのように登場人物を駒に使うな、とも思えなかった。メタでなくても登場人物は作者のある意味駒で、でもそう見せず書くのが大事なのだと思う。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アフリカ難民の女性と日本人女性がオーストラリアで逆境を克服しながら、力強く成長していく物語。

 出だしの文章が非常に暗い感じで数ページ読んで読むのを止めてしまった。

一日おいて再度読み始めたが、アフリカ難民の女性の逞しさを感じながら読み進むことが出来た。

アフリカ難民の女性の物語は普通に表されているが、日本人女性の事は恩師への手紙という形で表されているのが興味深かった。

ただ、日本人女性の1歳の子供が亡くなるというお話は、1歳の孫がいる私にはかなり辛い話だった。物語の中で、母親はかなり落ち込みはしたが、何とか立ち直りはしたけれど。

結果としては、ハッピーエンドだったので読んでよかったよかった!

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2025年09月26日

Posted by ブクログ

話がわかりにくく、もっと深く書けそうな内容だと思った。オーストラリアで出会ったアフリカ、日本、イタリア出身の女性の交流を描く。オレンジ、太陽や子供のことかな

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2025年05月02日

Posted by ブクログ

人種差別だけでなく、女性差別もある世界をリアルに描いていると思いました。
サリマが息子の学校で故郷のことを話す場面が印象的でした。そんな世界が今も世界のどこかにあるということを意識すると、今の環境がいかに恵まれているか認識できます。今ある自分の世界で、出来ることを頑張ろうという気持ちになりました。

職場に外国からの出稼ぎの方がいるので、こういう気持ちなのかなぁと考えながら読みました。

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2025年02月11日

Posted by ブクログ

感想
アイデンティティを凝縮した言語。手放すことがあまりにも容易な現代社会。それでもあえて固執する。ずっと消えない灯火を灯し続ける。

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2023年05月01日

Posted by ブクログ

海外で暮らしたことがある人にはしみるのだろうな。
移民の受け入れとか外国人との共生とか言われるようになってきたタイミングで読めてよかった。
二つ目の言語は二つ目の人生を送るチャンスというフレーズにぐっと来た。そうだよなあ。移民でなくても同じ。もっと言えば、言語に限らず新しいことを始めるのは新しい人生をはじめるチャンス。

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2020年03月05日

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オーストラリアを舞台にした、女性が生きていくとはどういうことかを淡淡と描いた作品。
途中辛いだけに、最後はすこしだけ幸せになれます。

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2018年11月12日

Posted by ブクログ

オーストラリアに移り住んだアフリカ難民・サリマ。人種、肌の色、言葉、これらが違うことで異国で普通の生活が出来ないつらさが溢れた物語で占められているような感じだったが、読み進めるうちに希望に包まれていき、心が穏やかになるのが分かる作品だった。
特に、サリマが下の息子の授業でアフリカでの出来事を話すところから夫と離婚し2人の息子を連れて行く中、下の子がサリマのところに残った場面は涙と笑顔が込み上げてきました。
2014年の本屋大賞ノミネート作品ということで読みましたが出会えてとても良かった一冊です。

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2018年03月10日

Posted by ブクログ

難民サリマの悲喜、厭世、矜持、希望を織り交ぜて、彼女が心理的葛藤の中で自分を見出し、成長していく姿を著す。新たな環境に放たれて、女性として自活することの困惑が自信へと変じていく様が心に響く。対して、サユリの手紙は何なんだろう。家庭生活の愚痴、夫への半端なわだかまり、そんなのを長々と記した手紙を頻繁に読ませられるジョーンズ先生は、真にお気の毒である。自己研鑽するに決して不幸な立場とは思えません。単純にサリマの物語で良かった。

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2017年12月24日

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