あらすじ
オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。第29回太宰治賞受賞作。
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Posted by ブクログ
外国から移住してきた3人の女性の話。言葉の壁、そして異国での孤独感‥‥読んでいて苦しかったです。初めは相容れなかった3人が最後には友情を感じ、お互い助け合っていく、現地の人たちからも受け入れられていく、そういうラストで良かった!
余韻に浸れる、良い作品でした。
Posted by ブクログ
それでもイタンジたちは強く生きていく。
アフリカから難民として渡ってきたサリマ。夫と共に日本から渡ってきたサユリ。2人の女性を軸として、オーストラリアの田舎町で生きていこうとする異邦人の生き様を描いた小説。
第二言語という異国で生活するための言葉を獲得したサリマだが、彼女の底にある強さは今までの人生と息子への思いにあった。決して奪われないものがある。それは自分の人生を肯定するための尊厳。日が沈んでまた新しい日が来るたびに、新しい自分へと生まれ変わり、階段を登っていくのだという前向きな強さ。
サリマからハリネズミと呼ばれるサユリは、幼い娘を事故で亡くす。大学で学び、書くことを手放そうとした彼女に、サリマは「違う」と伝え続ける。結局彼女は書き続けることを選んだ。様々な事情に振り回される彼女も奪われないものを見つけた。それが母語で書くことだった。
言語は思考を形作る。コミュニケーションの手段となる。マイノリティつまり「イタンジ」である登場人物たちが、自分の中にある奪われないエネルギーを見つけ、立ち上がっていく姿は美しい。まるで鮮やかなオレンジの夕陽のように感じた。
Posted by ブクログ
アフリカのナキチ(サリマ)と日本の伊藤さゆり(ハリネズミ)、パオラ(オリーブ)を中心にした、オーストラリアでの生活の話。ナキチは夫がフラフラしていて男の子の子どもが2人いる。さゆりは夫が大学の先生で、子どもは女の子1人だったが、もう1人女の子が生まれた。パオラは夫がいて、成人した子どもが3人いる。ナキチもパオラも様々な大切なものを失ってきたが、それと同時にかけがえのない大切なものを見出せた。恵まれない環境や人間関係の中にあっても、自分のすべきことを見つけ生き生きと変わっていく姿に勇気をもらえた。
Posted by ブクログ
アフリカ難民の女性と日本人女性がオーストラリアで逆境を克服しながら、力強く成長していく物語。
出だしの文章が非常に暗い感じで数ページ読んで読むのを止めてしまった。
一日おいて再度読み始めたが、アフリカ難民の女性の逞しさを感じながら読み進むことが出来た。
アフリカ難民の女性の物語は普通に表されているが、日本人女性の事は恩師への手紙という形で表されているのが興味深かった。
ただ、日本人女性の1歳の子供が亡くなるというお話は、1歳の孫がいる私にはかなり辛い話だった。物語の中で、母親はかなり落ち込みはしたが、何とか立ち直りはしたけれど。
結果としては、ハッピーエンドだったので読んでよかったよかった!