【感想・ネタバレ】Mattのレビュー

あらすじ

日本から移住してはや5年。父と二人、オーストラリアに暮らす安藤真人は、現地の名門校、ワトソン・カレッジの10年生(16歳)になった。Matt(マット・A)として学校に馴染み、演劇に打ち込み、言語の壁も異文化での混乱も、乗り越えられるように思えた。そこに、同じMattを名乗る転校生、マシュー・ウッドフォード(マット・W)がやってくる。転校生のマット・Wは、ことあるごとに真人を挑発し、憎しみをぶつけてくる。「人殺し! おれのじいさん、ジャップに人生台無しにされたんだ!」。第二次世界大戦、日本とオーストラリアの、負の歴史。目をそむけてはならない事実に、真人――マット・A――は、自らの<アイデンティティ>と向き合う。人種が、言語が、国が、血縁が、歴史が、17歳の少年の心と体を離さない。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

ワトソン10年生になったマットこと真人が、人種差別や自己嫌悪とひたすら格闘する一巻。
新しくやってきたマット.Wは、戦時中に日本兵に虐げられた祖父の影響で、真人=マット.Aを目の敵にして嫌がらせをしてくる。マット.Wの「ジャップ」という言葉に縛られて、無視しきれなくなった真人の葛藤が丁寧に描かれていて苦しくなった。乱闘になった2人を謹慎処分として、2人を更生させるためにさまざまな仕掛けを用意する演劇科のキャンベル先生が教育者としてとても素敵。キャンベル先生は差別と暴力を繰り返すマット.Wだけでなく、それを徹底的に無視しようとする真人の無関心も戒める。嫌い、というのは無関心よりずっと良い。自分が嫌いなのも、自分を主観的にも客観的にも捉えられるようになったということだと笑うキャンベル先生がとてもよかった。

0
2024年05月31日

Posted by ブクログ

MasatoからMattになっても日本人であることから逃れられない。日本人だけじゃない。それぞれの出自の刻印から逃れられない。収容所にいた刻印も含めて。違いが生み出す暴力や自殺。和解を安易に導かない。安易な昇華は求めない。名作です。

0
2023年01月22日

Posted by ブクログ

オーストラリアの名門校に合格し、新たな生活に入った真人。前作の「Masato」に続き、葛藤しながらも生活を楽しんで成長していく話 と思って読み始めたら、予測を上回るヘビーな内容だった。

オーストラリアではジャップと嘲られ、日本にでは帰国子女と呼ばれ、日本人とは感覚が違うと退けられ、自らのアイデンティティに苦しむ。
自国のコミュニティから脱することのできない親と、現地に馴染んでいく息子との広がっていくみぞ。
悲惨な展開もあるけど、教育制度の違いも面白く、先が気になってやめられない一冊でした。

0
2022年01月23日

Posted by ブクログ

前作『Masato』から成長した真人の10年生(16~17歳)の一年間が描かれている。  
MasatoからMattへの成長が文体にも現れて、対象読者年齢もその分あがっている。

オーストラリアに溶け込んでいたMattだったが、転校生で同姓のMattから憎しみをぶつけられることで過去に日本が犯した罪を知り、日本人であることと向き合わざるを得なくなる。
転校生Mattに怒り、父親が日本人意識を持ち続ける態度にも怒り、何より自分自身に怒っている。
I hate myself! が悲しいくらい繰り返される。
16歳の男子の悩む姿、怒りの爆発的なエネルギーに圧倒された。

前作では、母親に批判的な読み方をしてしまったが、続編で姉から見た母親の苦しみを知った。両方読まないと解らなかった。
本作では父親の弱さが書かれている。
「親に逆らうってことは、日本に逆らうってことだ」こんな言葉は、日本で暮らしていたら決して出てこないだろう。
日本にいたら、日本人であることをこれほど意識することもないだろう。
異文化経験は母国を理解し、自己を知ることなのだろう。
Mattの成長をこのあとも追ってみたい。
子どもの成長は親との葛藤の物語でもある。
Mattがこのあと親とどう関わっていくのか知りたい。

0
2021年07月08日

Posted by ブクログ

「Masato」の続編。  
小学生の時にオーストラリアに移ってきて、今は16歳。父との対立、日本人であるだけで拒絶反応を示す、戦争の負の記憶を持つ人たち。みんなのことが嫌いだし、何よりも自分自身が大嫌い。自分とは何なのか?アイデンティティを模索する少年の話。

キャンベル先生の「みんな言ってる、と、きみは言ったな?みんな、と。きみは自分の頭で考えるということをしないのか?きみのような人間には、人の痛みや悲しみを感じ取ることはできず、それを自分のこととして考えることもできない。」という言葉が刺さりました。

0
2020年08月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

5年生でオーストラリアに家族で渡ったあの「masato」の続編。
人種の違いや生活習慣の違い、それ以上に第二次大戦後の民族間のすれ違いなど、同じ名前の『Matt』との軋轢を中心にストーリーは進むけれど真人はまだ高校生。子供ではないけれど大人でもない世代の友人関係や家族との関わり方もひとつひとつ重みのある大切にしたい文章があふれている。
ストーリー的にはまだまだ続きがありそうなのでまた、続編を期待してしまう。

0
2019年04月03日

Posted by ブクログ

「Masato」の続編。
主人公は成長して、家族や学校やまわりの環境も変化して、前作よりもよりシリアスな内容だった。

ロビーのことはショックだった。
どうしてこんなことに、と思わずにはいられない。

Matt自身だけでなく、父、母、姉それぞれにいろんな思いと困難を抱えてる。

この先の主人公たちがどうやって成長し、自分の人生を生きていくのか、続編が楽しみ。

0
2023年10月27日

Posted by ブクログ

前作が良かったので続編

仲の悪い夫婦の関係を子供が冷めた目で見ているところとか、うざい親はほっとけばいいけど、面倒いのはほっとけないとかリアル。親子でも他人の始まり。「親に向かって」とかいつまでも言っても仕方ない事。人間としてどうなの?と言いたい。

新しく登場したw.マットがマサトがら日本人だという事で言いがかりの嫌がらせをしてくる。我慢を重ねるがついに行き着くところまで行って謹慎。
顔も生まれも変えられない事。それを受け入れて進んでいくのは生みの苦しみ。若者の葛藤だね。異国で住むのにはそれだけタフな精神力が必要だと思う。

ジェイクのおじいさんの「いい耳をしてるね。でも君の周りはひどい音だらけじゃないのかい?君の耳には醜い音が醜い音としてありのままに伝わる。しかしその中から良い音も正確に聞き分けられる。何よりの救いだ。」周りの言葉に惑わされず、「人間らしさ」に照らし合わせた物を選び取り入れろという事か。辛い経験をどの様に濾過するか、それも人間性。当たり散らすのみは虚しい。

話言葉は土地の番人。独特の言い回しとか省略語などいまだに英語に聞こえない。そこで弾かれ異邦人であると再認識させられる。

0
2019年07月10日

Posted by ブクログ

観光客ではなく外国で暮らす,育つということの難しさ,思っていた以上だ.真人にはジェイクのような親友がいたりして,苦しみながらも自分というもの,日本人ということに向き合っていけた.それは良かったことだが,この父親の自分勝手さだけは許せない感じだ.色々考えさせられる内容だった.

0
2018年12月02日

Posted by ブクログ

何処の国での話なのか、想像しながらスタートした。
帰国子女ってカッコいい響があるけど、大変なんだなってのが良く分かりました。

0
2018年11月11日

Posted by ブクログ

1作目の『Masato』が面白かったので期待してたのですが、少し「読みにくい」と思う文章が多かったと感じました。

オーストラリアに残ることを決めたマットでしたが、父親の生き方に反発したり、日本人を憎む転校生に突っかかられたりと、相変わらず過ごしやすいとは言えない生活を送っています。
カノジョができたり、バイトをしたり、理解のある「ベストフレンド」と触れ合う中で、自分の生き方を考え、また人生の中で「どのような役を演じるか」と葛藤するマットの姿は印象に残ります。

一方で、マットが葛藤し、悩む場面は表現が分かりにくい部分もあり、前作よりも感情移入しづらく感じました。
彼のように悩みながら青春時代を送ると、深みのある人間になりそうだなぁとは思いつつ、苦労が多くて大変そうで、真似はしたいとは思えません(笑)
まさに、小説で読むにふさわしい作品かもしれませんが、総じて「救い」が明確ではなかったので、読後感は少し暗いかもしれません。

0
2019年04月02日

Posted by ブクログ

思春期になって人生はますます複雑に!
オーストラリアの教育システムも興味深い。

日本とオーストラリアの歴史的関係もよく知らなかった。
日本人は(私だけかもしれないけど)戦争について知らないことが多すぎる。

0
2019年01月04日

Posted by ブクログ

「Masato」 では、父親の赴任でオーストラリアへやって来て言葉もわからず現地の小学校へ入った真人も、高校生。
日本の会社を辞め、オーストラリアで自分で仕事を始めた父親と二人暮らし。母親と姉は東京へ帰っており別に暮らしている。オーストラリアでの生活が長くなりマットと呼ばれ、すっかりオーストラリア人のように暮らしている。そこへ日本人嫌いの英国人のマットが転入してくる。
多民族国家であるオーストラリアで、日本人としてのアイデンティティーを考えざるを得なくなるマット。高校生らしい正義感や家族への思いを抱え、オーストラリアで生きていくマットの1年間。

過去の事、知らなかったではすまされない戦争の傷痕。それを乗り越えることが新しい戦争のない世界へのスタートラインであることは頭ではわかっていても現実では難しい。高校生らしい一途さも家族への距離感を持った愛情も好感度があった。

0
2018年12月06日

「小説」ランキング