平野卿子のレビュー一覧
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とてもよかった。
まずは、表題作『トーニオ・クレーガー』から。
繊細で、感傷的で、扱いにくいこの感情を、何と呼ぼう。
しかしその危うい心を、柔らかに緩やかに収束させるラストに、ほっとさせられる。
「つまり、いまそこに座っているあなたはね、なんのことはない、要するに〈普通の人〉だってこと」
トーニオが言われたこの言葉に、ショックを受けない少年少女が果たしているだろうか!
そう、トーニオも迷子なのだ。私と同じように。彼もまた、〈迷子になった普通の人〉なのだ。
そんなトーニオは、ささやかな故郷への旅に出る。そしてそれは、小さな決別と、大きな決意の旅となる。
「危険をものともせず、偉大でデモーニッシュな美の道を行き、〈人間〉を見下す誇り高い冷静な人々にぼくは敬意を払っている――。でも、羨ましいとは思わない。なぜなら、もし物書きを作家にできるものがあるとすれば、それこそが、普通の人であるぼくの愛――人間的なもの、生き生きとして、平凡なものに寄せる愛なのだから」
物語のラストで告げられるトーニオの決意は、まるで静かな祈りのようだ。
『マーリオと魔術師』も、とてもよかった。
悪魔的な人物の気味の悪さとその魅力を、じわじわと見事に描いた佳作。
美しくて悪魔的な人物、というのはそう珍しくない。しかし、醜悪で、くたびれていて、不機嫌そうな悪魔的人物というと、これは難しい。
しかし、この作品はそれをとてもよく描いていて、面白かった。その人物が登場するまでが単調に思えてしまうものの、それからの筆の乗り具合が素晴らしい。雰囲気に飲まれる一品。 -
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これも瀧波ユカリのブックリストから選んで読んでみた一冊。『無痛恋愛』の中で「女性の言葉には命令形がない」という話が印象に残っていたんだけど、それを補足するような内容で、興味深く読んだ。
まず、いわゆる「女ことば」が日本の伝統のように思われがちだけれど、実は明治時代に生まれたもので、さらに時代が下るにつれて「女性らしく美しいもの」として形づくられていった - という冒頭から一気に引き込まれる。著者は、外国人が日本語の女ことばに困惑する様子を例に挙げたり、西洋には「女ことば」は存在しないけれど、言い回しとして性別的な特徴が現れるという視点でも分析していて、とてもわかりやすい。
また、日本語に含まれる数々の性差別についても丁寧に指摘されていて、構造としての根深さを思い知らされた。面白かったのが、たとえば今では「夫婦」と書くけれど、古い和語では「めおと」と言っていたこと、そして多くの言葉が漢語に置き換わる中で男が先に来る語順に変化していったこと。日本にあった女系的な発想が、中国から渡来した家父長制によって上書きされていった過程として見ると、非常に興味深い。
筆者は小説、映画、ドラマなどを数多く引き合いに出していて、その鑑賞の引き出しの多さにも感心させられたし、取り上げられた作品に触れてみたくもなった。引用の使い方も的確で、筆者自身の視点がよく伝わってきた。参考文献の中に気になるものがいくつかあったので、いくつか試してみたい。 -
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ネタバレ本作は、トーマス・マンの自伝的要素が一番強い作品で、カフカが何度も読み返したらしい。
主人公トーニオが幸福な青春期を過ごしてから大人になり自分を取り戻す話。
故郷に帰り、実家のあった場所に帰ったり、そこには思い出の胡桃の木があったりするけど、ホテルで詐欺師と疑われたりもする。
でも、愛すべき平凡な人たちを再び発見したトーニオ。自分のことを芸術にハマって迷子になった普通の人、と女友達に言われて、故郷に旅に出たおかげだった。
1章ラストと9章(終章)ラストがつながるソナタ形式で、私は感情がブワッと昂ぶりました。
「これは価値ある、実りあるものだ。
ここには、憧れと、憂鬱な羨望と、ほんのすこしの軽蔑と、この上なく清らかな幸福感とがあるのだから。」
トーニオは決心をします。よりよい作品を書くと。
短い作品ではありますが、綺麗に纏まっていて、自分の青春を思い出したこともあり、良い作品だと思いました。 -
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大きく時代が変わる時、権力者は前の時代を否定します。煌びやかな西洋文明が余程眩しく憧れだったのか、明治政府は徳川時代を全否定し、国民も忘れ去りました。
家族団欒から性観念まで、現在日本古来と思っているものの殆どが、実は明治時代に人為的に作られたものです。そして女ことばもその1つというのを本書で知りました。
今では聞いて違和感を覚える女ことば、しかし、翻訳本などを含め意外にまだまだ目にしたり聴いたりする機会は多いです。
女ことばは、男が考えたカワイイと思う女が話して欲しいと考えた言葉、その将来に興味がある方は是非本書を読んでみてください。 -
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ネタバレめちゃくちゃ面白くてすぐ読み切っちゃった!!「女ことば」を通して、日本語をジェンダー格差の視点から見つめ直す本!
日本の女ことばの歴史、その歴史とともに生まれた女性差別、日本と西洋の女性蔑視、女へんはあるのに男へんはない漢字(僕・俺のへんはまさかの「人」。人=男?驚愕)、「女らしい」「男らしい」、一人称や三人称、かわいいは最強...?などなど、いろんなトピックを通してことばから透けて見える男性優位文化に愕然....。それと同時に日本のことばと男女差別の密接な関係性にまずは気付くことが大切だと思った。
納得しすぎた言葉
《男を表現するときには背後に「性を超えた人間性」があるのに対して、女の場合は 「性」から逃れられない。》
↑まじでコレすぎて泣いた。"男"が使われる慣用句は「男=立派な人間」のイメージのものばかりだけど(男が廃る、男が立つ、男の中の男 etc)、女々しい、女にしておくには惜しい等逆はろくなものがない...「俺を男にしてくれ」は鍛え上げてもらうみたいな広い意味があるけど、「わたしを女にしてください」は違う意味....。「女」の褒め言葉はいつもホモソーシャルな男たちにとっての「いい女」なのでだるい。
《世間で「女らしさ」「男らしさ」とされていることの多くは、性別ではなく、社会的な立ち位置、つまり「支配・従属」関係によって決まる。=女と男の視点で考えるのではなく日本特有のタテ社会の論理や上下構造に落とし込んで眺めると、見えてくることが多い。》
↑「女の敵は女」という言葉があるけど(もちろん逆はない)、女だからではなく、弱い立場に置かれた人間に共通の防衛手段だったんだと気づいた筆者はすごい。日本では一人称がバイナリーなために物心がつかない頃から自分の性を意識せざるをえず、年齢や社会的地位よりも性別が絶対的決定的な基準になりえる...
女が嫉妬深いといわれる理由のひとつも、男女関係が対等でなく、男はそもそも嫉妬する状況におかれにくいからだよね。
なくすべきは装飾としての意味しかない女ことばではなく、過剰な配慮をした女らしい言い回し!私もやたらと遠回りした言い方とかしちゃう時あるなあと心当たりがありすぎた。しかもそういう時って圧倒的に社会的な上下関係がある時。男性みたいに話さんといかんわけではないけど、必要以上に曖昧すぎる言い回しには気をつけよ。 -
Posted by ブクログ
不安症であるため、その対処法について知るべく本書を購入。
メンタルヘルスケアとしては、認知行動療法やACT、暴露療法、薬物療法など様々な療法が存在している中、本書は脳の仕組みを利用してパニック障害や不安症を克服していくアプローチを取っている。
脳は無意識下での処理において圧倒的な能力を持ち、意識の8万倍早く情報を処理していると言われている。つまり、無意識こそが我々の体を制御していると言っても過言ではない。しかし、無意識とは意識していないため変えようが無いのでは?と直感的には感じるが、実は日常の思考と密接に関係しており、普段の考えが自動的に神経間をつなぐシナプスにプログラムされ自動再生されるものが無意識となっている。
本書ではこの無意識を再プログラムするためのテクニックを紹介しており、実践する価値があると感じた。
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Posted by ブクログ
ネタバレ問題が起きやすい分野、パートナーとの関係、仕事、個人的な生活環境。私ならではの良い仕事についていて、能力がきちんと評価され、ふさわしい十分な給料をもらっている。
テンセンテンス法。すぐに到達しそうな目標ではなく、どんな人生を望んでいるかにについて、否定形を使わず、ひたすらポジティブに、現在形で、具体的に、自力で到達できる目標文を10個立てる。その10個の目標をのうちから毎晩一つを頭に浮かべてよく考える、においを嗅いだり味わう感覚を入れて五感を使い、頭の中で体験する。
ぐるぐる回るとき、逆回転させる。否定的な思い込みは、アーティフィシャルで滑稽な声でイメージする。トッポジージョ?感覚を変える。パワーポーズ。ワンダーウーマンかな。