小島毅のレビュー一覧
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宋といえば私の中で平清盛の日宋貿易のイメージしかなかったのですがこの本を読んで驚きました。隋や唐と比べて印象が薄い宋ではありますが、中国文化が圧倒的に洗練されたものになったのはこの時代だったのでした。
本書ではそんな唐の歴史とともにその文化面も詳しく見ていくことができます。写真も豊富ですのでその見事な陶磁器の姿も見ることができます。視覚的にイメージできるのでこれはありがたいです。
そして私が最も驚いたのは印刷術の発明によってもたらされた革命的な変化です。「本を読む」という行為が決定的に変容したその瞬間が非常に興味深かったです。
宋時代に印刷術が発達し、知識の意義が大きく変わりました。その -
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放送大学の講義がベースになっているだけあって、短いけれど読み応えがある。ある程度儒教の予備知識があって、だけれども朱子学と陽明学の本質的な違いがあやふやな初学者にとっては非常に有用である。
これを読むと原儒と宋学以降の儒教は別物であり、それらの差に比べれば朱子学と陽明学は親戚のようなものであることがわかる。朱子学も陽明学も治国、平天下が関心事で、その目的に至るアプローチに若干の違いがある感じ。一方で原儒は宗教だ。朱子学は静坐格物で読書と沈思、陽明学は致良知で善の実践という違いがあるが、本質的には政治哲学の一部。仏教や道教との違いも詳しく解説されている。
これで頭の中がスッキリした。 -
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偉大な“兄”中国と、“従弟”の日本。二つの国の成長譚が分かる本。
日本が中国に対して抱いてしまう、海を隔てているが故の理想と、拳を交えたことで知った弱さ。それは、日本人の、中国人に対する偏見=己との違いでもある。
その指摘には、この本が、子ども達に語るべき二千年史であるという、著者の誇りを感じた。
また、ことばに興味のある私としては、20世紀初頭までは東アジアの国際共通語であった中国語が、なぜ今はその地位を失っているかという疑問が湧いた。
権威主義に端を発する情報統制により、中国語の話者を統べることは、もしかしたら中国語を現代に生き永らえさせるための“必要悪”なのかもしれない。 -
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歴史をテーマにした新書には、ときどきものすごい本(下手な表現だけど、変わる言葉が見あたらない。)がある。
本書でもたびたび引用されているけれど、「室町の王権」(今谷明 著)はそれの代表事例。歴史教科書で出ては来るけれど、「独裁体制を打ち立てるため守護大名をいくつか潰したり、南北朝統一を達成し、室町幕府の最盛期を築いた将軍。しかし、後継者の時代に独裁体制は崩壊。」程度でしか知られていない人物に新たな光を当てて、日本史上空前絶後の大物であったことをあぶり出した作品。
もう一つ上げると、「儒教 ルサンチマンの宗教」(浅野祐一 著)も好事例。「聖人孔子」という、既成概念を根本から否定し、虚構の世界の誇 -
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歴史というものを、今自分が生きるこのときに起こる事象について考える、判断するための視点・材料というような捉え方をしたことがない。
この著者も後書の出口氏も触れている司馬史観にどっぷり浸り、あれが事実とまで認識していなくとも、あれは実際に起きていた、そういう流れの時代だったと思ってはいた。
まぁやはり、幼少のみぎりから学んで覚えて目にしてきた諸々のものが、それは実は違ってねと今更言われてもなのだが、違うのなら違うので仕方ないし、著者が言うように、過去の歴史はこれからの未来について考える一つの大事な考え方なのだと言う認識は、もう半分以上過ぎた人生のこれからを生きていく上で、大切に持って生きたいと思 -
購入済み
価値観が異なる人々の言動
五代十国から宋を扱った歴史書である。現代人の視点から見た経済史や階級闘争、生活史は新鮮で読んでいて楽しい。しかし、当時の為政者や軍人そして庶民はどのように考え、感じ、そして行動したかを記述することはより一層重要である。現代国際政治でも言えることだが「価値観が異なる人々の言動を自分たちの価値観で判断することの危険性」を本書では説いている。
現代の価値観では些細なことと思われる「称号」に、なぜ政治実務をそっちのけにしてまでこだわったのか そこのところを本書はついている。 -
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歴史の教科書に書かれてある太字が
全く違って見えてくる
そこのところが ほんとうに面白い
筆者が
「日本の歴史は世界と繋がっている。
ただし、だからといって、西洋の歴史を中心にした
見方はしない」
とおっしゃっておられるように
近隣にアジア諸国があり
その一国として「日本」もありますよ
という立ち位置の下で
当然、「我が国の歴史」に凝り固まることなく
さまざまな影響を受けながら
さまざまな視点を持ちながら
縦横無尽に語られる
「日本」の近現代史は
ほんとうに興味深い
そしてなによりも
読み手を
高校生になったばかりの我が娘さんに
語り掛けていく
その部分が
読み易さ、面白さ
につながって -
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「国体」「英霊」「維新」「大義」というキーワードについて原典にさかのぼって読み解く。薩長藩閥政府が明治革命ではなく明治維新と称した理由について『大日本史』、水戸学の論理から論じた箇所は、なるほどと思わせる。
「新撰組組長だった近藤勇を東京裁判よりもひどい一方的な断罪で復讐刑的に斬首し、会津で交戦した白虎隊をふくむ軍人たちのまともな埋葬すら許さぬままに、敵の本営だった江戸城中で仲間の戦死者の慰霊祭を行った連中。靖国を創建させたのはこういう人たちであった。」
「靖国問題が国際問題でなく国内問題だと私が主張するのはそういうわけである。戊辰戦争以来の未解決の歴史問題が、ここにはある。」 -
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朱子学と陽明学はどちらも儒学の学派であるが、何が違うのか?と問われると答えることは難しい。本書では熹と王陽明の生い立ちの違いから見られる対する考え方の違い、『論語』の読み方の違いを比較するという方法で、朱子学と陽明学の違いを解説している。中でも『論語』そのものよりも、朱熹が論語をどう解釈していたかという点に議論が移っていった点が興味深い。何しろ『論語』をそのまま読むと朱熹の解釈にはならなず、なぜ朱熹はこのように解釈したのかを考えなければならないからである。これは朱熹が弟子に対して異なる説明をしていたことが原因ではあるが、それ以上に、朱熹自身の考えを『論語』の解説に混ぜ込んでいたことが原因だろ
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不思議な本だった。
朱子学と陽明学について 丁寧に説明してあったが、私の期待していたものと違った。なぜ朱子学と陽明学が日本で受け入れられたのかと言うことを知りたがったのだが、朱子学の系譜、そして陽明学の系譜が、実に丹念に説明されていた。
思想文化的に解説。
朱子学と陽明学の学派が誕生した時代背景と問題意識に焦点を当てながら、『なぜ、彼らはそう考えたのか?』を明らかにする。
朱子学は、性即理。陽明学は心即理。
孔子 紀元前552〜479年。儒教が 王朝体制を支える思想となった。
それ以降 中華思想を支える思想的支柱だった。
儒教は近代以前の旧体制の象徴だった。
11世紀から12世紀に起こった朱子