小島毅のレビュー一覧
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この一冊はもっと高く評価してもいい気がするが、何分筆が走りすぎているというかエッセーなので・・・。
しかし、日本において、中華皇帝の権威を元にした政権ができそうになっていたこと、そして、それは「天皇になろうとしたか否か」といった日本史的な文脈とは一切関係ない、東洋史的な事件である、といったこの本の主張は、非常に合理的だと思います。
日本にそうした中華冊封体制が必要であったか、あるいは、中華皇帝を受け入れた日本というものがどのような道をたどったであろうか、そうしたことを「今から遡って考える」なら、足利義満に高い評価はできないでしょう。
しかし、足利義満は日本史では誰も(少なくとも天皇という存在が -
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“儒教が日本の近代化を支えた”というとかつて森嶋通夫氏が『なぜ日本は「成功」したか?―先進技術と日本的心情』(1984年)で提起した問題を想起させられるが、こちらは日本がなぜ近代化に成功したかを中国哲学受容の長期的視点から論じたもの。
著者は「はしがき」において「19世紀には儒教の教義内容が武士の間に広く浸透して国政改革への志を育んでいた。明治維新はこれを思想資源としている」(p.9)と述べ、たとえば丸山真男などに批判される江戸時代の体制教学としての朱子学などはむしろ近代西洋の学術体系を移入するさいの「培養基」となった点を重視するべきと主張している。慧眼だと思う。朱子学的教養に支えられた能吏 -
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トピック的に日本史を眺めるというもの。著者は中国思想史家なので癖があるように思う。東アジアという視野を持って日本を見るのはそのとおり必要なこと。皇国史観の批判を今更してもと思ったが、著者はそこから射程を儒教や自由主義や民主主義まで伸ばし、人を食らうものという。それには賛同するが、現在だから言えるのではないか、それこそ著者の言う当時の人の考えや行動を現代の観点で採点するというものではないかという疑念を拭いきれない。すべての宗教、イデオロギーを嘲笑するニヒリズムが一段高いところに位置するというのは正しいのか。何も信じずに人間社会は成り立つのか?
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平家台頭から源平合戦、鎌倉幕府設立に至る武家の成長、独立の時代の意義、特色を、広く東アジアにおける時代環境の中で論じた書。
中国大陸では、遼・金と宋(南宋)の南北並立時代であった。
平家、平清盛が権力を振えた一つの理由が日宋貿易からの巨富であったが、中国からは宋銭、日本からは金(ゴールド)が主要な貿易品であった。そして、日本で金を産出するのは奥州平泉。平泉と言えば、義経との関係。
源平合戦と言っても、大きな枠組みで言えば、貿易、すなわち海外との交流を是とする平家、土地を基盤とする東国武士団に担がれる源氏・頼朝、中国北方とも繋がりを持つ奥州平泉氏、これら3つの集団があって、その中で -
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放送大学の教材を改稿した本で、朱子学と陽明学を中心に宋代以降の中国思想史をわかりやすく解説しています。
本書とおなじタイトルで、名著として知られる島田虔次の『朱子学と陽明学』(1967年、岩波新書)がありますが、本書は「文庫版まえがき」で書かれているように、朱熹や王守仁らを「研究対象として突き放す立場」をとるとともに、「過去に存在した思想教説を彼らの意図に即して解析する」という方法にもとづいています。とくに、それぞれの思想家たちが彼らの生きた思想状況のなかで抱えていた問題にどのように対処しようとしていたのかという意図をあぶり出し、そこから思想形成にいたる過程を、ある意味では「覚めた」視線で書 -
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元は新書だった本らしい。この本の特色は、思想としての靖国神社のバックボーンを、神道ではなく、儒教/朱子学と規定しているところ。著者によると江戸時代の水戸藩で育まれた「国体」思想が、明治維新を経て、戦前に復活したということらしい。
確かにこの「国体」概念というのは、日本独特のものである。日本は戦時中においても、ファシズムとも君主制とも異なっていた(もちろん、共和制でも民主制でもないが)。その中心にあったのは「国体」という不気味な概念だった。
この「国体」とは、「神話の時代から脈々と継がれてきた、天皇を神と仰ぐ国民体制」と言える。いま国民体制と書いて国家と言わなかったのは、普通の国家体制とは違う、 -
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[ 内容 ]
かつて東アジア世界で日本が日本として生きていくために活躍した、一人の偉大な政治家がいた。
その名は足利義満。
いま、日本の行く末が不透明になりつつあるなか、六百年前に「この国のかたち」を明確に構想し、周囲の雑音を一掃してその構想に向けて邁進したこの人物に、われわれは学ぶべきことが多い、と思う。
とりわけ、彼の「東アジア性」をわたしは高く評価したい。
―最新の歴史学の知見と朱子学研究の成果をもとに、気鋭の歴史学者が、逆臣・義満像をくつがえす。
[ 目次 ]
序章 消えた金閣
第1章 日本国王源道義
第2章 義満時代の東アジア情勢
第3章 ゆがんだ南北朝史
第4章 東アジア思想史上