岡田温司のレビュー一覧
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聖書においてマリアと呼ばれる女性は複数存在する。その中で筆頭に来るのは当然に聖母マリアなわけだが、その次はといえばキリストと行動を共にし磔刑と復活とに立ち会ったマグダラのマリアということになる。娼婦から悔悛しキリストの死に相対したマグダラのマリアは、聖処女としてキリストの生誕を担ったマリアとは好対照の存在であり、古今数多くの美術作品のモチーフとされてきた。
しかし、マグダラのマリアが娼婦でありやがて悔悛したということは、新約聖書の四福音書のどこにも書かれていない。それどころか、グノーシス主義の影響を受けた外典の福音書には、預言者・幻視者として卓越した能力を持つ彼女の姿が描かれている。
現在僕た -
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『旧約聖書』における、神が天地創造の最後の日につくったアダムとイヴという存在は遠い遥か時空を越えて我々の周知の奥底にいまなお根付いている。名前くらいはきっと誰でもというくらい知っている。そのくらい、認知されている。近年でいえば、アップル社のロゴも、エデンの園の禁断の木の実に由来するものらしいし、遺伝子研究の「ミトコンドリア・イヴ」や「Y染色体アダム」もこの元来の神話にどうやら由来するものらしい。日本アニメ『エヴァンゲリヲン』、渡辺淳一著の『失楽園』も記憶に新しい。しかし、の内容把握にはまちまちで、たとえば、最初につくられた人間は両性具有であるアダムとし、またアダムの中の「思考の力」とされる『光
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・アウグスティヌスは、アダムの両性具有説にダメだし。
・リリスなる存在について。イザヤ34:14.
・アダムが男だ、という認識は決して当たり前ではなかった。
・アウグスティヌス「イブが助け手というのは子作りの意味で」。
・アダムの肋骨が何本あるか、またへそがあるかが論争に。
・予型論はアウグスティヌスがよく用いた。イブの誕生は、キリストから教会が誕生したことと相似。
・ミルトンは、アダムとエバの視点から創造を描いた小説を書いた。
・エデンには酒への言及がない点で、ペルシャのそれとは一線を画しているともいわれる。
・エデンはどこにあったか1東方2赤道直下、南の高い山、3メソポタミア、4パレスチナ -
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ネタバレ[ 内容 ]
聖母マリアやエヴァと並んで、マグダラのマリアは、西洋世界で最もポピュラーな女性である。
娼婦であった彼女は、悔悛して、キリストの磔刑、埋葬、復活に立ち会い、「使徒のなかの使徒」と呼ばれた。
両極端ともいえる体験をもつため、その後の芸術表現において、多様な解釈や表象を与えられてきた。
貞節にして淫ら、美しくてしかも神聖な、“娼婦=聖女”が辿った数奇な運命を芸術作品から読み解く。
図像資料多数収載。
[ 目次 ]
第1章 揺らぐアイデンティティ(福音書のなかのマグダラのマリア;外典のなかのマグダラのマリア;「罪深い女」=マルタの姉妹ベタニアのマリア=マグダラのマリア;隠修士としての -
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ネタバレ[ 内容 ]
処女にしてキリストを宿したとされるマリア。
処女懐胎はキリスト教の中心に横たわる奇跡であり、夥しい図像を生み出してきた。「無原罪」の「~がない」という否定形の図像化一つとってみても、西洋絵画に与えたインスピレーションは巨大である。
また、「養父」ヨセフや、「マリアの母」アンナはどのように描かれてきたのか。
キリスト教が培ってきた柔軟な発想と表象を、キリストの「家族」の運命の変転を辿りつつ描き出す。
[ 目次 ]
第1章 マリアの処女懐胎
第2章 無原罪の御宿り
第3章 「養父」ヨセフの数奇な運命
第4章 マリアの母アンナ
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆ -
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『マグダラのマリア―エロスとアガペーの聖女』(岡田温司、2005年、中公新書)
新約聖書の福音書に登場する、娼婦でもあり聖女でもある「マグダラのマリア」。本書は、この女性は一体どのような人物なのかということ、この女性が中世においてどのように人々に―あるいは芸術作品として―とらえられてきたのかについて解説している。
僕はキリスト教が専門ではないので、非専門外の人がこれを一回の通読で理解するのは不可能だったのですが、イエスの使徒の使徒とも称されるマグダラのマリアについての若干の、表面上の知識にはなったかなとは思います。
(2010年10月28日 大学院生) -
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原罪を持つエヴァと穢れ無き処女マリアの間の女性、マグダラのマリア。
多くの絵版と分かりやすい文章で読みやすかった。
そもそもマグダラのマリアはキリストの復活という重要なモチーフの証言者でありながら聖書では曖昧な存在である。
4つの主たる聖書の中で存在を否定的に書くものもあれば、好意的に記録しているものもある。
彼女に好意的ではなかったであろうペテロが教皇の座につく事で、彼女の偶像は娼婦、悪徳からの回心のイメージがついてまわるようになる。
欲望にその身を委ねながらも、イエスの教えに回心し、天上へ昇る事を許された女使徒。
そのモチーフは芸術家達の創造性を刺激し、貞淑にして淫ら、美しくかつ敬虔