山野良一のレビュー一覧
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■学んだこと
・貧困問題は自然によってできあがったものではない。社会が作り上げたものなので解決できる
・ひとり親家庭はOECD全体で見ても、二人親家庭と比較して3.8倍貧困率が高い。日本は5倍以上の差が現れている
・スウェーデンは2/3のひとり親が正規雇用であるのに対して、日本は40%以下でしかない。
・日本の母子家庭の就業率は83%、OECDに加盟している国々の中でも高水準。ワーキング・プアが多いことを示している
・北欧の国でさえ、政府が介入する前の貧困率は日本とさほど変わらない→日本は政府による福祉の介入が足りない
・日本は貧困問題に対して、自己責任論・人的資本論を押し付ける文化がある。貧 -
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子どもを巡る、保育、養護、療育、貧困対策、性の多様性、居場所作りなどについて各テーマごとにコンパクトにまとめられており、第一線で活躍しマスコミにもよく登場する筆者たちが現場発の生の声で語っている。
今保育士の受験勉強の途中で、児童養護や福祉について学んでいるので、乳児院や養護施設、里親、虐待からの保護などいろいろディープな環境にある子どもたちの事情に興味があって読んでみた。
正直読んでいて辛くなる。
一般人に縁がありそうなのは保育園の待機児童問題くらいで、その他は不幸にして家庭や親に恵まれなかった子たち、または、生まれつきの障害や性的マイノリティーなどの苦労を負った子たちだ。
しかしその -
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自分自身が貧困家庭で育ち、学歴を得て今では社会階層を登った身としては複雑な感想だ。学部に入学した時の国立大授業料は20万、4年後の大学院は40万。大学院はさすがに学費が捻出できなかった。授業料免除の恩恵を得たのと、毎晩のアルバイトで辛くも卒業できたが、授業料免除は誰もが使える制度ではなく、貧乏人が高等教育を受けるのは当時でも並大抵ではなかった。本書で事態が更に悪化している事を知った。国立大の授業料は高すぎる。
社会正義追求の為にはこのような「社会的相続」は是正すべきだとの思いがある一方で、自分の子供達には誰よりもお金を注いで教育を付けたいと望んでしまう。人間というのは都合のいいものだ。
本書は -
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親の経済的困難が子どもに及ぼす影響として、不健康、虐待、親の長時間労働、ストレス、心身の未発達、無力感・ボイスレス、親族・近隣から孤立、不十分な衣食住などが挙げられる。大人の貧困は見えやすいが、子どもの貧困は親に隠れて見えにくい。文化的な資本の不足なども起こって、小さい頃に触れるべき教養も受けられない。
貧困問題は色々な見方や考え方が存在し、多角的に考察することが大事だ。
日本が先進国の中で子どもの貧困率が高いという指摘に驚いた。実は6人に1人が貧困だという。何をどこまで貧困というかの基準もちゃんとあって、世帯の家族構成人数や総所得、生活で使える金額などを計算し、基準となる貧困のラインを割り出 -
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この本の題名「子どもの最貧国・日本~学力・心身・社会に及ぶ諸影響~」に表現されるように、本書は子どもの貧困について、あらゆる角度から考察している。
自らが児童福祉司として勤務しているときの実情から、アメリカの事例・文献研究など、膨大な量の研究結果を基に、現在の子どもたちがおかれている状況について考察している。
これほど理論的に、そして明快に、現代の子どもの置かれている状況について解説している本は稀であり、私自身、読んだことがない。
日本において、これまでの社会福祉政策の犠牲となってきたのは、常に、未来を担う子どもたちであった。
その子どもたちを救わなければ、後でもっと大きな費用 -
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・日本は失業率が著しく低いのにも関わらず、貧困率は先進十五ヶ国の中で高い部類だと言える。OECDの中でも最も高い就業率を示している。→ワーキングプア状態
・経済的格差が子供と触れ合う時間の格差を生んでしまっている。世帯収入が少ない家庭ほど、仕事に費やす時間が長く、育児に費やす時間が短い傾向が表れている。
・貧困率のもとになっている所得よりも、金融資産の額で見る方が、豊かな家庭と貧困な家庭の格差は遥かに大きい。ジニ係数の差分が大きい。失業して2、3ヶ月で貯金が無くなってしまう母子家庭の割合は59%。ほぼ相対的貧困の割合と等しい。
・再分配後の子供の貧困率の方が、家族の税引き前の収入のみに基 -
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まず著者が基本的に「プロ」の福祉関係者であるという点、そして統計等の基本を学んでいる人物であるということから、記述内容が徒らに主観に走らず、客観的で説得力に富んでいるという点で、安心して読める。
もちろん、いわゆる「ライター」という現場主義の人たちが歩き回って集めた現場の事実にも価値はあるけれど、まず問題の根本がどこにあるのかという点を「知る」ためにはこのような書き手のものから始めるのがやはり妥当だと思うので。
子どもの貧困が叫ばれてもう数年は経つと思うけれど、この本に書かれた内容が未だ現実味を十分持って受け取れるということは、状況が一切好転してはいないことの証左だろう。
だとすれば次はルポル -
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考えさせる数字が列挙されており、説得力がある。解決策も示唆的。
・ここ25年を見ると、子どもの貧困率は好景気によって好転するものではない。
・日本はシングルマザーが就労している率がOECD中で一番高い。
・日本の父親の場合、平日子どもとふれあう時間はないが、収入によって休日ふれあう時間が変わる。
・妻が主婦の場合の方が、共働き世帯よりも貧困率が高い。
・高卒の親の子どもの貧困率は22%、大卒は8%。
・どうして国立大学の授業料だけで国際比較するのか?日本は75%が私立。しかし、先進国は私立大学はほとんど存在しない。
・国保の保険料は、応能負担と応益負担の部分があり、逆進性がある。
・(家庭の -
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ネタバレ本書での筆者の一番の主張は、日本という国は子供の貧困率が高いにも関わらず、政府はそれを取り上げず、社会的ネグレクトを行っている、ということである。
私も本書を読むまでは、子供の貧困に対する問題意識は希薄であった。むしろ、日本は豊かな国で他国の子供の同情すらしていた。
外国のかわいそうな子、というような映像はTV等でよく流されるが、自国の問題はどの程度の意識をもって見ているだろうか。
本書ではデータの多面的な分析から、貧困が子供に与える影響や、経済的支援の効果がどの程度あるかを示している。
恐らく、筆者はこの書籍を通じて一人でも多くの市民の意識を改善するために執筆したと思われる。
御一 -
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[ 内容 ]
家賃を払えず、児童養護施設に預けられる3歳のミヤと4歳のシン。
生活保護の申請を受理してもらえず、給食の時間までぐっとお腹が鳴るのを堪える小2のタクヤ…今や7人に1人の児童が経済的に困窮しており、ひとり親家庭はOECD諸国中で最貧困である。
日本は、アメリカと並ぶ最低水準の福祉となってしまった。
しかも、日本だけが事実を無視し、対策を取らず、貧困の子どもたちを社会的にネグレクトしている。
本書は、この問題に対して私たちの認識を研ぎ澄ますために書かれたものだ。
日米の児童福祉の現場経験をふまえ、理論・歴史・統計などの多角的な視座で実態を検証し、解決策を考える。
[ 目次 ]
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