福井憲彦のレビュー一覧
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世界史についての本。
興亡の世界史というシリーズの中の最終巻。2007年に出されていたが、文庫化されるにあたって新しく手直しされたもの。
従来の世界史というのは西洋史を中心としたものであったが、本書ではそれに対してもっと多文化的で中立的な世界史を提唱している。
人口問題については、人口バランスとその国の繁栄について書かれており勉強になった。日本は戦後の復興期、高度成長期に人口ボーナス期を迎え、一気に経済繁栄した。これからは急速な高齢化と少子化で人口減少時代を迎える。経済的な縮小はやむを得ないだろうと思う。しかし、世界的には人口増加による環境問題に直面しており、日本の人口減少は今後に必要な世界的 -
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ただ教科書的にイベントの羅列をするのではなく、誰もが知るような大きな出来事の背景を非常にわかりやすく解説してくれている。
長らくヨーロッパの帝国主義・植民地化の動きの背景となるマインドがわからずにいたが、産業発展・文明化されていない他国の啓蒙やキリスト教の布教という極めて一方的な理由であることがわかった。中には投資先の拡大という理由もあった。
「投資先の拡大」と書いて思ったけれど、
産業革命以前には、裕福な貴族と、家庭内手工業的な働き方だった市民や農民と明確に区別がなされ、その範囲内での経済活動であった。もちろん税金の免除など特例がなされていた貴族層に対して不満はあったにせよ、自らの意思で経済 -
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学習院大学学長(フランス近現代史専攻)の福井憲彦(1946-)による近代ヨーロッパ史概論。
【構成】
1 ヨーロッパによる海外進出の開始
2 世界交易における覇権争い
3 18世紀における社会経済と政治
4 「啓蒙の光」と近代思想の誕生
5 人口増加の開始から「移動の世紀」へ
6 革命に揺れる大西洋世界
7 ウィーン体制と48年諸革命
8 工業化と社会の変容
9 農村のヨーロッパと都市のヨーロッパ
10 科学技術の実用化と産業文明の成立
11 国民国家とナショナリズム
12 植民地帝国という野望の衝突
13 さまざまな帝国主義
14 第一次世界大戦という激震
15 歴史文化の継承と芸術的創造 -
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ウェルキンゲトリクス。カエサル(ローマ)の侵略に抵抗したケルト人。フランスの英雄。p.28
ユーグ・カペーの「カペー」はあだ名で、ケープの意味。ユーグがケープを愛用していたから。p.50
セーヌ川とシテ島を結ぶ石造りの橋「ポン(橋)ヌフ(新しい)」。「新しい橋」だが、セーヌ河にかかる橋で一番古い。p.100
三十年戦争で財政難になり、マザランは増税法令を作る。法令を承認する権限をもつ高等法院(官職をもつ貴族が運営)が、これを拒否。すると、マザランは官職の給与を4年間停止した。これに官職をもつ貴族が反発した。フロンドの乱。p.119
ルイ14と15の放漫財政の尻ぬぐいのため、ルイ16は経 -
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パリの歴史をざっと網羅できてよかった。
時系列ではあるものの、宗教・政治・芸術・学問など、テーマが統一されていない中で時間が流れていくような構成になっていたので、ちょっと読みづらかった。(慣れたけど。)
パリはかなり昔からデザインされた街という点で特殊なのだと感じた。
山手線一周ほどの広さなのにかなりの区があって、それぞれ特徴があったり、右岸と左岸で雰囲気が違うのはそうしたデザインされた街だからこそなんだろうなと思った。
パリ左岸は学問が発展したエリアということで、フランスの学問の歴史が書かれていた。
ワインがやや学問チックだったり、ミシュランが評論チックだったりする理由がなんとなくわかっ -
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このテーマを1冊でまとめることに無理を感じたが、大きな流れをつかむには勉強になった。
・14世紀にペストが大流行した後、15世紀半ばから17世紀半ばにかけて人口は増加したが、17世紀半ばからは気候の寒冷化を背景として疫病・飢饉・戦争の三悪によって人口は再び停滞した。
・18世紀に北西ヨーロッパで経済成長が始まった要因は、マメ科植物の導入や畜産との併用などによる農法の技術改良によって食糧事情が好転したこと、それに伴って人口が継続的に増加したこと、ギルドなどの同業組合が衰退して職業活動が自由になったこと、経済活動がヨーロッパ外へ膨張したことがあげられる。
・イギリスでは、17世紀にピューリタン革 -
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現代社会を理解する上で、近代ヨーロッパ史に関する厚みのある知識は必要不可欠であろう。というわけでこんな本を買ってみた。「世界を変えた19世紀」とは銘打っているが、ポルトガルのアジア交易から第一次世界大戦まで、扱う時代は幅広く、レコンキスタを起点とするヨーロッパの膨張から、第一次世界大戦によるヨーロッパの疲弊までが対象となる。語り口はややイデオロギッシュというか、今の価値観で帝国主義を断罪するようなところがある。それはそれで一つの歴史観ではあろうし、そういった歴史観をもとに本が書かれることを否定するわけではない。しかしながら、そういう視点とは別に、帝国主義を生んだヨーロッパの内在論理の変遷を追い