金田章裕のレビュー一覧
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大学卒業以来、久々に読んだ歴史地理学の本。
日本の地形は主に侵食力のある河川によって作られたもの。
「堤防を作ると洪水が起きる」説明の箇所は必読だと思う。
堤防で完全に河川を囲ってしまうと、土砂が堆積して川床が高くなるため
さらに堤防を高くする必要がある。また、水の逃げ場が無いので、
一旦堤防が決壊すると、被害は昔よりも大きくなる。
また、堤防の後背地に開発されたエリアの地盤沈下が進めば、
相対的に河川水位より低くなり、洪水時の被害は大きくなる。
結局はイタチごっこを数十年・数百年単位で繰り返しているわけである。
どこに住むか検討するにあたり、地形の変遷に関する知識は必須。
今でこそ、日本 -
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先日読んだ「地形で読む日本」の前の作品があったということで、順番を違えて手に取った一冊。
著者が提唱する歴史地理学の入門第一弾という位置付けです。
歴史地理学は「空間と時間の学問」。歴史学と地理学における空間と時間のギャップへの、架け橋の役割をも果たすもの、としています。現在、歴史と地理は別々に学習すべきものという印象がありますが、もともとは一緒に学ぶべきものでした。確かに、歴史と地理はお互いに影響し合うものです。個人的に興味がある分野でもあります。
そして著者は、「私たち日本人はどこで暮らしてくたのか」を知るためには、空間と時間を同時に視野にいれた、歴史地理学の視角こそ有用として、この視点で -
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歴史地理学の入門書第2弾。
地理や地形から歴史を見ようとする内容の書としてはかなり本格的な一冊でした。前著より先にこちらを読んでしまったことを少し後悔しています。
日本の古地図の歴史を見ながら、日本人や外国人が日本をどのようにとらえようとしていたか、という所から始まり、過去の遷都の歴史とそれにまつわる背景、特に交通の発展や外交関係などを振り返り、解き明かしていったり、武士の拠点である城の立地の変遷を見ながらその意義がどのように変わっていくか、というかなり詳細の内容でした。
これまでの歴史とは違った視点で見ることができ、かなり考えさせられる内容でした。
▼大阪平野南部や奈良盆地に緒宮を構えた天 -
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日本の荘園図の検討から、当時の社会の実像をとき、さらに中国やローマの古代地図との比較によって各地域の古代社会の構造の違いを明示する。
現代の衛星すら使用した精確な地図にみなれた現在の人間には、東西を問わず古代の地図はとてもいびつなものにみえる。しかし、金田氏によれば現存する荘園図をそこに描かれた実地でひもときながめると、正確無比な現代の地図よりも感覚的にはしっくりくることすらあるという。
これは古地図が、その作製の際、あくまで人間生身の感覚が付されているからであろう。
もちろん、やはり古地図には歪な点が多々あるのだが、しかし、それはその地図が表現しようとする内容が現代の精緻な -
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著者は歴史地理学の分野の専門家。
まず、その分野がどんなものか興味があって、本書を読むことにした。
空間の学問(地理学)と時間の学問(歴史学)をつなぐ分野であるとのこと。
時間地理学なる分野もあり、ビッグデータの利用が進めば、これも何か進展がありそうな気がするが、本書では深くは紹介されていなかった。
さて、筆者は「微地形」(プレート移動など大規模な地殻運動でできたものではない地形)についての業績で知られる人とのこと。
私の出身地近くの濃尾地方が取り上げられることも多く、土地感覚があるので、興味深く読んだ。
人間が堤防(連続堤)を作ることで、天井川を作り出し、さらに水害のリスクを高めてしま -
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以下、引用
●灘の酒は、江戸時代すでに、樽廻船などで江戸へ廻漕され、「下り酒」として人気を博してきた。西宮から神戸にかけてという沿岸の酒産地は、水運に適し、好適な立地条件となった。酒という重量物の輸送、とりわけ長距離の輸送には、当時は水運が不可欠であった。
●伏見もまた、水運に有利な立地条件であった。宇治川の中書島の港は、三〇石船などで淀川水運を通じて大阪へ、また高瀬川を通じて水運でも京と結びついていた。
●ただし西条は、かつて西国街道の宿場町(四日市)ではあったが、内陸なので近世における重い酒樽の輸送には恵まれていなかった。従って、西条の酒蔵はいずれも明治維新後の操業であり、(中略)特に、明