大学卒業以来、久々に読んだ歴史地理学の本。
日本の地形は主に侵食力のある河川によって作られたもの。
「堤防を作ると洪水が起きる」説明の箇所は必読だと思う。
堤防で完全に河川を囲ってしまうと、土砂が堆積して川床が高くなるため
さらに堤防を高くする必要がある。また、水の逃げ場が無いので、
一旦堤防が決
...続きを読む壊すると、被害は昔よりも大きくなる。
また、堤防の後背地に開発されたエリアの地盤沈下が進めば、
相対的に河川水位より低くなり、洪水時の被害は大きくなる。
結局はイタチごっこを数十年・数百年単位で繰り返しているわけである。
どこに住むか検討するにあたり、地形の変遷に関する知識は必須。
今でこそ、日本各地は都市化が進み、以前は人が住めなかった
斜面や低地もコンクリートで覆われ居住できる。
昔その土地がどのような場所だったのか跡形も無いところもある。
さて、個人的に最も心配なことは、川を堤防で囲い、嵩上げや強化を繰り返し、
後背地をコンクリートで固めるという、人口増加時代のインフラ事業を
どう維持しているのかということだ。
気候変動による激甚災害が増え、今後人口が急激に少なくなる日本において、
全国各地に作りすぎたインフラを維持できるとは、とても思えない。
だとすれば、我々は普遍的に安全な地形の場所を選んで居住しなければならない。
結局のところ、河川の氾濫や山地の地滑りなどを回避できる場所、
即ち、伝統的に集落として発達してきた場所が選ばれるのではないだろうか?
数十年先の「危機」を考えると、古地図の閲覧は単なる趣味道楽ではなく、
現実味を帯びた実学であると感じさせられた。