あらすじ
日本の食文化は豊富な食材に支えられている。水田と農村、海と畑から食材がどのように生み出されるか、漬物・日本茶からワインまで、日本の地勢を読み解きつつ楽しく紹介する。
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Posted by ブクログ
以下、引用
●灘の酒は、江戸時代すでに、樽廻船などで江戸へ廻漕され、「下り酒」として人気を博してきた。西宮から神戸にかけてという沿岸の酒産地は、水運に適し、好適な立地条件となった。酒という重量物の輸送、とりわけ長距離の輸送には、当時は水運が不可欠であった。
●伏見もまた、水運に有利な立地条件であった。宇治川の中書島の港は、三〇石船などで淀川水運を通じて大阪へ、また高瀬川を通じて水運でも京と結びついていた。
●ただし西条は、かつて西国街道の宿場町(四日市)ではあったが、内陸なので近世における重い酒樽の輸送には恵まれていなかった。従って、西条の酒蔵はいずれも明治維新後の操業であり、(中略)特に、明治27年(1894)の山陽鉄道(JR山陽線)西条駅の開業が大きな契機となり、酒樽の遠距離輸送の可能性を開いた。駅近くのいくつもの酒蔵もこの立地条件にかかわるのであろう。
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歴史地理学の専門家である筆者が、食物・食材の栽培、生産、収穫、加工にかかわる文化的景観という、日本から失われつつある生活となりわいからなる景観にスポットを当てた1冊。文化的景観という視点は自分にとって新鮮で、仕事や旅行でどこか地方に出向く際、この視点で見てみようという楽しみが増えた。
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地理歴史文化和食エッセイみたいな一冊。
もちろん、新書で和食の世界を網羅するのは無理なのだが、コンパクトながら要点をおさえてあって、うんちく材料には事欠かない。
花ガツオが荒節(カビがつく前のカツオ節)を削ったものとか、緑の茶は江戸時代の終わりごろの技術開発とか、人里離れたところに柿の木があったら住居跡のこともあるとか、会話に挟めばもの知りっぽい(笑)。
食習慣は育った地域の文化や家庭に影響されるなあと今さらながら再確認した。富山県生まれの著者が慣れ親しんだ食べものの中には、未知のものも。蕪寿しとかおいしそう。
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<目次>
第1章 稲作と農村~奈良盆地・砺波平野と岐阜の棚田、そして酒蔵
第2章 寿司飯と調味料~和食のさまざまな味と産地
第3章 茶とダシの文化的景観~宇治・焼津、そして北前船
第4章 漬物と多様な発酵食品~京都・滋賀と奈良・三重・北陸
第5章 干し柿と干物~日本各地の名産品
第6章 果物と堅果~日本各地、それぞれの文化的景観
第7章 いろいろな畑と養殖~京都・淡路、群馬・滋賀、熊本・金沢、瀬戸内海・有明海
第8章 ブドウ園とワイナリーの文化的景観~山梨の日本ワイン、オーストラリア・イタリアの新旧ワイン産地
第9章 文化的景観が意味するもの~生活となりわいの物語
<内容>
最近、金田先生の本が新書で多く出版されている。「文化的景観」がキーワードだが、今回は「和食」。学術的な話はほどほどで、自分の経験談が半分くらい。第8章は、「和食」を飛び出して、オーストラリアとイタリアンのワイン談議が続く(編集がよく通したな、と感じた)。