トルーマン・カポーティのレビュー一覧

  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    映画から入り小説→映画と何度もループしてしまう大好きな作品。
    ホリー・ゴライトリーの奔放な美しさと、その裏側にある苦悩、自由を求めるあまりその自由に苦しむ、ホリーの言う"いやったらしいアカ"は、現代人、とくに都市で生きる僕らに通ずるものがある。
    オードリー・ヘプバーンのキュートさがこの作品を有名にした一助であることは間違いないが、物語としては小説の方が好みである。映画版の結末はややご都合主義というか、映画を見終わった人たちが肩透かしを喰らわないように配慮したのでは、と感じる。小説の結末の方が、ホリーというどうしようもなくは魅力的な人間の内面を表していると思う。

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    2025年11月26日
  • 草の竪琴

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    ネタバレ

    夏、そして今ひとたびの秋、そして再び冬。それは螺旋ではない。傘の落とす影と同様、閉じ込められた円環。もし跳躍しなくてならないとしたらそれは今だ-ぼくは思い切って切り出した。「ヴェリーナ、ぼくはここを出て行きたい」

    ドリーとキャサリン。コリン。ツリーハウス。3人の会話が聞こえてきそうな、風景が目に見えるような、素敵ななおとぎ話の世界。コリンの成長。良かった、とっても、良かった。

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    2025年09月20日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    ホリーが物語の中の彼女と寸分変わらず、生きて幸福を掴んで欲しいと願わずにいられない。
    同時に変わらずにいられないだろうとも思ってしまう。

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    2025年09月14日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    ネタバレ

    何回読むねん、というくらい何回も読んでる本。
    下記文章を読みたいがために何度も何度も読み返す。

    「要するに『あなたが善きことをしているときにだけ、あなたに善きことが起こる』ってことなのよ。

    いや善きことというより、むしろ正直なことって言うべきかな。規律をしっかり守りましょう、みたいな正直さのことじゃないのよ。

    もしそれでとりあえず楽しい気持ちになれると思えば、私は墓だって暴くし、死者の目から二十五セント玉をむしったりもするわよ。

    そうじゃなくて、私の言ってるのは、自らの則に従うみたいな正直さなわけ。卑怯者や、猫っかぶりや、精神的なペテン師や、商売女じゃなきゃ、それこそなんだってかまわな

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    2025年08月30日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    映画は未視聴。とにかく魅力的なヒロインが描かれている。長い台詞を気持ちよく読ませてくれるのは技術?魅力的なクラスのマドンナが冴えない主人公のことをなぜか気に入ってお互い特別視してるみたいな作風の先駆けのような感じ。村上春樹が映画に苦言を呈していたので、映画も観てみよう。

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    2025年05月10日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    ネタバレ

    普通とはかけ離れた自由奔放さはホリーの魅力。でも全くの考えなしなわけではなくて、その普通とかけ離れた経験が今のホリーの確固たる意志の源となっている。とはいっても完全なる強い女性というわけでもなくて危うさもある。激しく生きてプツンと壊れてしまいそうな。そんなホリーと過ごしたときが主人公にはあったのに、もうどんなふうに生きているのか今は全く分からない。しみじみと感じさせられる儚さと美しさが魅力的な作品。

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    2025年03月27日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    ネタバレ

    有名すぎてずっと敬遠していた本。僕は見栄っ張りな性格なので、手垢のついた名作をいまさら読むのが気恥ずかしい。そもそもティファニーは宝石屋だ。食事をする場所ではない。それならなぜ『ティファニーで朝食を』なのか。しかしその意味を教えてもらってから、どうしようもなく読みたくなってしまった。

    ホリーはとびきりチャーミングな女の子だ。みんな彼女に魅せられてしまう。だから自然と男たちが集まってくる。しかし誰も彼女を理解できない。ある男は彼女をこう評した。「あんたは脳みそをぎゅうぎゅうにしぼり、彼女のためを思ってさんざん尽くしてやる。ところがその見返りに受け取るのは、皿に山盛りの馬糞だ」。その男は彼女をハ

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    2024年12月31日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    ネタバレ

    チョコレート色の石でできたアパートメント、コンクリートを打ち付ける雨の匂い、喧騒に溢れ誰もが自由なニューヨーク。それらがありありと文章から伝わってくる素晴らしい翻訳だ。
    やはり村上春樹の文体は凄い。何が凄いのか言語化できないのがもどかしいのだが、生命力に溢れている文章というか、いい意味でとにかく表現が生々しい。
    私は読書の感想によく「心地いい」という言葉を使うことがある。ふと気づいたのだが、「心地いい読み心地」と「読んでいて心地いい」はまったく違うことだと思う。無論、本作は後者であり、文章を目で追うことはこんなにも快楽なのだとしみじみ実感させてくれる読書体験だった。

    表題作『ティファニーで朝

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    2024年12月26日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    やっぱり小説は良いなあと思った。
    作品自体の内容や心地いいリズム感もあるが、
    読み終わったあとに煙草を吸いながらホリー・ゴライトリーのその後、人間性、雰囲気、容姿、仕草等々を考える。
    その時間があるだけでこの本を読む価値があると思える。

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    2024年07月25日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    不朽の名作、傑作である。
    さすがと言うべきか、村上春樹の訳も素晴らしい。
    映画の『ティファニーで朝食を』とは切り離して読んでほしいと村上春樹は言うが、それはかなり難しい。どうしても、あの可憐なオードリー・ヘップバーンを思い浮かべてしまう。
    とはいえ、原作をはじめて読んだが、映画とは少しストーリーが異なる。映画ほど綺麗事で片づいていない。厳しく、つらい現実の要素もだいぶ含まれている。
    それでもやっぱり、ホリーの自由奔放、天真爛漫な性格、生き方は魅力的だ。
    その前提として、ホリーの類まれな容姿の美しさがあるようには思うが…。
    もしホリーの器量が人並み以下だったら、物語は成立しないだろう。ティファニ

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    2024年06月23日
  • 遠い声、遠い部屋

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    河野訳は正直読みにくさも目立ったが、村上訳はさすが。あの魔術的描写の奔流の良さを殺すことなく、よくここまで訳し切るなと感心してしまう(Monkeyの対談を読む限り、村上氏もずいぶん苦労したようだが)
    ストーリーの妖しさもたまらないが、読み手を間違いなく選ぶ本。

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    2023年10月16日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    オードリー・ヘップバーンがホリー役を演じる映画の方は観たことがなかったが、確かに彼女は小説版のホリーのような汚さやふしだらさ、危うさが感じられる人ではない。もしいつか映画をリメイクする際はホリー役をマーゴット・ロビーに演じて欲しいと思うのは私だけでしょうか(マーゴット・ロビー好きの一意見)。
    この話は映画版『ティファニーで朝食を』でイメージされるような綺麗なストーリーではない。が、確かに名作であったと思う。イギリス文学とはなんとなく異なり、主人公やホリー、ジョー・ベルなど、様々な登場人物のその時々の感情が読み取りやすいものだったように感じる。
    ホリー・ゴライトリーというこんなにも危

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    2025年08月29日
  • 遠い声、遠い部屋

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    初めて読んだカポーティは、春樹さんの訳に、山本容子さんの素敵なイラストのついた『おじいさんの思い出』や『クリスマスの思い出』だったけど…

    あの時のノスタルジーにもっと幻想性を持たせたような…

    幻想的でときに凄まじく、あまりにも美しい描写や比喩たち。
    容易く読めないけれど、魅力的すぎて沼に浸かるような読書体験でした。

    母をなくしたジョエル。
    叔母のところに父からの手紙が届く。
    父に会いに行くためには、
    そのランディングという街に行くには、機械化された交通手段がないという。

    もうこの序盤で、私はファンタジーの世界に入っていくのかしらと思ってしまいました。

    ジョエルの唯一の安らぎだった黒人

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    2023年08月31日
  • ここから世界が始まる―トルーマン・カポーティ初期短篇集―(新潮文庫)

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    カポーティのキャリアの中でも超初期の、習作ともいえる短編集。訳者のあとがきにもあるように、きちんと校正が入ったらもっと修正がかかりそうな部分も多々あるが、それを補って余りある瑞々しい感性や表現力に圧倒される。状況としては2人の人間が会話している場面を切り取っただけのような話でも、それぞれの台詞や仕草、周りの光景の描写から、あまりにも多くのことが読み取れる。
    ひとつひとつの作品は本当に短いけれど、読み応えはすごい。それぞれの作品を読み終えるたびにしばらくその余韻に浸ってしまう。

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    2023年03月05日
  • ここから世界が始まる―トルーマン・カポーティ初期短篇集―(新潮文庫)

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    取るに足らない場面の過不足ない情景描写や、華麗とも言える人物造形、物語のプロットの完成度、ところどころに点在する星のように燦然と輝く一節が、のちの鮮烈で煌びやかな才能の開花を予見させる。

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    2022年10月06日
  • 遠い声、遠い部屋

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    ネタバレ

    高校の時読んだ『ティファニーで朝食を』以来のカポーティ。春樹訳に惹かれて読んだ。
    普段ミステリを読むことが多いから起承転結やキャラクターの面白さとかに注目して読んじゃうけど、久しぶりに読んで文章表現の美しさに驚いた。
    両親の喪失から、ランドルフが父に成り代わり、そしてそのランドルフも……ここで終わっちゃうの?!とも思ったけれど、主人公の夢なのか、空想なのか分からない部分もあって、どこまでが本当か分からないからこそ、そのラストでも納得だなと思った。

    次は『草の竪琴』を読みます。

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    2025年10月31日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    他人に迷惑をかけてはいけない精神のある日本人からすると、ホリーの自由奔放な生き方は心底羨ましいのではないかと思った

    万引きは当たり前のように、警察に捕まったのに割と簡単に海外に逃げているし、なんだかゆるいところがあるけれど、それが日本との価値観の違いなのかと疑問には感じた

    村上春樹の文体が大好きな身からすると、この作品が好きなのか、村上春樹が好きなのかは判断しかねたが、この後の行方は読者におまかせ系の終わり方は個人的に好みでないため、星4に

    もう一度読んでみたいし、映画も見てみたくなった

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    2025年10月07日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    初カポーティ。映画でも有名な表題作はまだ観ていません。どうやら原作と映画はまた違う雰囲気のようです。ヘップバーンが演じたホリー・ゴライトリーがどのような人物に仕上がっているかはわかりませんが、本書のホリーはとにかく天真爛漫。誰もが振り向く美貌さと誰にも縛られない奔放さに小説の枠を超えて人々は魅了されるのでしょう。そんな彼女はどこかへ旅立ち、残された人々は彼女の記憶や痕跡を寂しく思いつつもただ楽しむ。そんな余韻すら魅力的な小説でした。
    他に収録されている「花盛りの家」「ダイヤモンドのギター」「クリスマスの思い出」も余韻が素敵な小説ばかり。心にすっと入ってくる良作でした。

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    2025年07月22日
  • ティファニーで朝食を(新潮文庫)

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    ネタバレ

    目の前を干渉できない嵐が通り過ぎたようだった。
    ホリーは、その名前はホリーでなくても、どこかで彼女の求めるままに暮らしていたのではないかと思う。

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    2025年07月08日
  • ここから世界が始まる―トルーマン・カポーティ初期短篇集―(新潮文庫)

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    カポーティの思春期(!)から青年期にかけての短編集。習作集って言ってもいいくらいかな。
    20歳前後で彗星のごとく現れた天才。この天賦の才をさらに幼い頃に示した作品の数々がアーカイブから見つかり、それをまとめたもの。
    おそらく才能を持った画家が幼い頃に見せるように、カポーティも頭の中にあるものを文章にしたくて仕方がなかったのだろうなというその衝動が伝わってくる。
    物語としても、構成としても、大人からしたら確かに荒い。でも余韻の残し方であったり、脳内で再構成される情景に深みを出す記述だったり、あるいは人物に対する圧倒的な共感力だったり。「ねえ、こう書いたら気持ちいいんでしょ?」っていう技巧はもう誰

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    2025年07月06日