小此木啓吾のレビュー一覧
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初版が79年なので古い本だが、内容は古くなっていない。
どんな人でも、関わりのある対象をなんらかの形で失った時には、「悲哀の仕事」によってその喪失から立ち直らなければならないためである。
対象喪失は死別や離婚だけでなく思春期の親への反発や家族との不和にも適用できる。
悲哀の仕事とは、適切に悲しみ、対象の理想化や悪玉化から脱出し、罪意識を経て、自らの中に居座っていた対象と和解をすることで、人は自然な精神状態に戻ることができるというものである。
この悲哀の仕事のプロセスがフロイトの論を元に分かりやすく書かれている。
悲哀から立ち直るのは自然な心の働きであるが、現代のような全能感の達成された時代 -
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小此木啓吾 「 対象喪失 」 対象喪失により引き起こされる悲哀 に関するフロイトの研究をまとめた本。対象喪失とは、愛情や依存の対象であった者の死、アイデンティティの喪失など。
著者の主張で 驚いたのは
フロイトの悲哀研究は、父の死を経験したフロイトの自己分析から行われているとした点。悲哀の心理プロセスを、転移、投影同一視、未開人の喪の慣習 から 紐解いている
悲哀を避けるな 克服せよ という 父性的メッセージを感じる
*悲しみを悲しみ、苦痛を苦痛として味わう〜人間にごく自然に与えられた心のプロセス
*人生は対象喪失の繰り返し〜悲哀と対象喪失をどう受容するかは もっとも究極的な精神課題であ -
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愛する対象を失う悲しみをカガクする一冊。本書は、愛情・依存の対象を失うこと(「対象喪失」)に対する心のメカニズムを、フロイト研究でも有名な精神科医の著者が一般読者向けに解説したものである。その内容は、精神科医として著者がこれまで診てきた患者を例に「対象喪失反応」について分析した章と、フロイト研究者として彼の精神分析理論が構築される過程を分析した章に分かれる。
著者は、対象喪失に対しては「その悲しみや思慕の情を、自然の心によって、いつも体験し、悲しむことのできる能力を身につけること」(p.156)が大切だとする。一見すると”当たり前“の話に思えるが、実際には、その”当たり前“が非常に難しいこ -
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フロイト派とユング派、日本を代表する両派の第一人者である小此木氏と河合氏の対談が収録されていて、とてもおもしろかった。教科書や専門書だけでは分からない、フロイトとユングの細かい人物像や、最後の方は日本文化論にも及んで、読み応えがあった。日本文化論のところでは、今の日本が抱える問題点が、両氏が対談した昭和53年のころから何も変わってないと思えたり、またこのころすでに予見されてたりして、そういう点も興味深かった。
ただ、対談、すなわち口語であるので、とても分かりやすい部分と、いまいち伝わりきれてない部分とがあり、その点が少し残念。これからもフロイトとユングのことは勉強していくことになると思うが、折 -
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夫婦のこと、育児のことで肩に力が入りすぎないように、折に触れ読み返して思い出したい話がたくさん。
「(定年後の夫婦が)無理して一緒に何かしなくてもいい」山田
「(夫婦間に)会話がないことを一概にいけないとは言えません」小此木
「結婚してからいろいろあったけど、最期まで一緒にいてよかったという夫婦の方が多いのではないでしょうか。」
「今は夫婦の悪い面ばかり取り上げられていますけど、夫婦が長く一緒にいることのポジティブな意味が、もっと主張されてもいいのではないでしょうか」山田
「だんだん年をとってきて、自分の外見的な魅力が衰えたとき、夫婦のような、不合理といえば不合理な、鎖みたいなものがあ