小此木啓吾のレビュー一覧
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何か自分自身にとってかけがえのないものを失ったときに人は、非常事態においては生命維持を優先して喪失感をすみにおいやり、また日常においても社会という枠組みのなかにおける自分の立場を意識して喪失感をおしつぶしてしまう。このような外からの圧力がない状況においても、失った物や人に対する罪悪感や優越感など、さまざまな感情が入り交じることで、純粋に喪失の対象を悲しむということが実はできていない。
それでは、失った事物を本当に悲しむとは一体どういうことなのか。それをフロイトの研究に沿って、さざまざな例を引きつつ紹介するのが本書。
「『悲哀の仕事』は、そのような断念を可能にする心の営みである。しかしながら、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前半の本当にさわりの部分は面白い。後半も少し面白く為になる内容が書いてあるが、全体的に価値観が現代と違っていて今ひとつピンとこない。「そう…かなぁ?」「ぇえ〜?」と思いながら読み進め続けることになったので苦痛すぎて中盤の退屈なフロイト話は全部飛ばした。
終章の、フロイトが母親から死について教えられた時の話が良かった。
「人間は土から作られていて、土に戻らねばならない」
そして母親が団子を捏ねた捏ねカスを見せて、
「人間もこういうカスでつくられているだけ」
あとP66の望郷の一説も良かった。
肝腎要の対象喪失の克服にはどうしたらいいのか具体的な策については自分の中ではボーンヤリ。 -
Posted by ブクログ
近親者の死や失業といった、自己のアイデンティティの喪失を引き起こすような出来事を体験した人びとが直面する危機と、そこからの回復の可能性について考察している本です。本書では、そうした体験を「対象喪失」と呼び、その心理的体験をフロイトにしたがって「悲哀の仕事」(mourning work)と解釈しています。
著者は、精神分析学の創始者であるフロイトが父親や同僚のフリースに対する激しい心理的葛藤を演じていたことについて比較的ていねいに検討をおこない、フロイトの精神分析学の確立が、まさに「悲哀の仕事」として解釈できることを示しています。
また、深刻な現代の対象喪失の経験を持たない現代、新たに生じつ