吉村喜彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
収録されている5作品。どれもじんわりと心に染み入る内容でした。
題材となっている内容も、バーで酒が入りこんでいる時はこんなこと話してるかもという内容で、電車や自室で読んでいるのにバーカウンターに座っているような感覚になります。リバーサイド閉店の話は今の所出ていないので、今後本作をシリーズ化してもらえるととても嬉しいですね。
ちなみに、自分も田園都市線を利用しているので、電車に乗って多摩川を越えるたびに本作の「空はさくら色」を思い出し、ジーンと来ることがあります。ただ、以前名古屋にあったバー「オー・ド・ヴィー」を母親がずっと「オードリー」と呼んでいたことも併せて思い出すので、すぐに冷めてしまいますが…… -
Posted by ブクログ
多摩川沿いにあるバー・リバーサイド。そこを訪れるお客さんと初老のバーのマスター、沖縄出身の若いバーテンダーの琉平とのやりとりがじんわり面白い。人生のそれぞれのステージでそれぞれ悩みがあり、ここに来たからって解決されるわけではないけれど、ちょっと身が軽くなったり、きっかけをつかめたり。それぞれに出されるお酒、お酒に合わせたおつまみが美味しそうで。お酒は飲めないけれど、チェダーチーズにギネスを混ぜ込んだポーターチーズやギネスで煮込んだシチュー、シンプルなペペロンチーノなどどれも食べてみたい。ホントにあったらいいのに。でも、あってもウーロン茶は頼み辛いお店だからな・・・。ノンアルコールカクテル作ってくれるかな。
-
Posted by ブクログ
この人の本を読むのは初めて。
後で知ったんだけど、『ビア・ボーイ』の続編だったんだね。
こっちから読んでしまったよ。
酒類・食品を扱う商社の宣伝部で働く上杉が主人公。
自社のウィスキーを売るためより良い広告を作ろうと奔走する上杉だが、
社内政治にばかり気を配る上司や同僚たちと対立してしまう。
それでなくてもウィスキーの売上が低迷しているのに、
会社はさらにウィスキーを売るものにあるまじき方向へを傾き始める。
それを知った上杉は数少ない仲間と共に社内悪に立ち向かおうとするのだが…
乱暴な言い方をすれば、『半沢直樹』のようなお話でした。
ウィスキーの酒類やうんちく話がもっと展開されるのかと期待してたけど、
どっちかというと企業モノですね。
これはこれで悪くないし、比較的重くて堅めな話なのに読みやすかったし、
こういうお話だと知った上で手を出すには良い一冊です。 -
Posted by ブクログ
江戸一番の地物の酒を造ろうと奮起する蔵人たちの粋な時代小説です。
主人公は灘の酒蔵で育った次男坊。父親を亡くし、姉と入り婿の夫婦に代替わりしたところで厄介払いのように江戸の叔父の酒蔵である『山屋』の立て直しを命じられる。江戸へ下ってきてみれば、上物として飲まれているのは灘物ばかり。江戸酒は水割り酒で飲まれてばかりと知って、本当に美味い江戸の酒を造ろうと心に決めた彼は、ひょんなことから知り合った浪人の龍之介らとともに山屋で働き始めるのだが、その矢先、仕込み中の酒が全て腐る火落ちが起きてしまう。杜氏も蔵人も離反が相次ぎ、万事休すの山屋は心機一転、酒造りの仲間集めから再起を図るのだが。
日本酒が飲みたくなるお話でした。江戸の人のための江戸酒作り。とても楽しく読めました。
現代で普通に使われる『くだらない』の語源を初めて聞いたような気がします。今は東京には『上京』するものという感覚ですが、江戸の当時は江戸には『くだる』ものだったんですね。京都が上方で、灘で作られた酒が江戸に船で下っていく。情景描写が細かく、私も一緒に江戸の町で町人の方々の姿を見ているようでした。ライトな読み口でしたが内容はきちんと重みがあってよかったです。
私はあまり焼酎が得意でなく、美味しいと思って飲んだこともないのですが、この話を読んで美味しい日本酒を飲みたいと思いました。いつか米焼酎にチャレンジしてみたいです。
このお話の中では描かれない登場人物たちのその後のお話も色々とありました。龍之介と生き別れた元奥さんのその後や、小次郎の淡い恋の行く末などもそうですが、想像の余地がある終わりになっているのも余韻があっていいと思います。
江戸の気っ風と酒のいい香りを感じる、味のある酒蔵再起のお話でした。