黒岩比佐子のレビュー一覧

  • 音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治

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    黒岩比佐子著、角川ソフィア文庫 2009 『音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治』
    聾唖の写真家・井上孝治の写真を多く掲載した本。
    「音のない記憶」とあるが、別の種類の音が聞こえてくる本でもある。
    掲載写真は、そういった写真家についての事前の知識を与えられてから見るわけだが、
    子供たちが外を走り回って遊んでいた昭和の時代の、遥かな音が感じられたと思う。

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    2018年08月10日
  • 明治のお嬢さま

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    皇族・華族・上流階級の奥方様やお嬢様の生活を知る事が出来る一冊。
    どちらかというと鹿鳴館デビューした母を持つ娘さん達の時代(明治中期~後期)の話。
    明治の世になり、西洋諸国の文化がどんどん入って来て意識改革もどんどん進む。妾を持つのが当たり前の父と、一人の妻だけを愛する息子。世代によって考え方が異なってくるのが良く分かって面白い。
    大正天皇の皇后様、徳川慶喜の娘、三菱財閥に嫁いだ官僚の娘さんなどなど、旦那様やお父様はよく本で読むけれど、その家族である女性達に目を向けたこの本は新鮮で面白かった。
    参考文献も豊富で面白そう。読み倒したい。

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    2012年06月29日
  • パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

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    筆者が命をかけるようにして上梓した最後の作品。
    冬の時代を生き抜いた堺利彦の人生と重なり、ずっしりとした重みを感じる。
    生きることの使命とは。
    「然し決して死にたくはない。死にたくはないが、又善く死にたいといふ欲望もある。」
    2人の思いがこの言葉に集約されている。

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    2012年03月17日
  • パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

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     やっと手に入れた。黒岩さんの遺作、堺利彦評伝。
     幸徳秋水でなく、大杉栄でなく、堺利彦を選んだ理由が、わかるなあ、黒岩さんらしいなあ。
     丁寧に丁寧に、つむがれていく著者の思いが、くやしくも泣けてくる。

     さておき、これを読むと、本当の意味でフェミニズムというかジェンダーを実践したのは、堺利彦であるということか。大杉栄夫婦(妻、伊藤野依)にはいっときものすごいはまった時期があったが、言ってる事とやってる事は合致せず、「理想家」ではあったが、「実行家」ではなかったんだなー、とか思ったりして。
     

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    2011年06月15日
  • パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

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    なんという強靭な精神力としたたかさ、そしてどんな苦境にあってもユーモアを忘れない懐の深さか! これまであまり語られることのなかった『売文社』での堺利彦の奮闘ぶりが今に甦る。

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    2011年03月12日
  • パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

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    「人を信ずれば友を得、人を疑へば敵を作る」。その信条の通りに生きた人。堺利彦の生涯と共に、日本の社会主義者の足跡を記した渾身の作品でもある。

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    2011年02月26日
  • 明治のお嬢さま

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    P30~
    乃木希典 学習院女学部教育方針

    一、凡そ徳操の中でも、質素と云ふ事が、最も能く守らねばならぬ事である。
    一、質素は価の多少にあらず。
    質素といへば、単に価を多く費やさねばよい、人に貰つたものだからよい、安く買入れたものだからよいといふ訳ではない。たとひ廉価なものでも、質素の精神に叶はないものは、高価でも質素の精神に適つたものに比べて、遙かに劣るのである。
    一、最も卑しむべく恐るべきもの。
    無理に品物を廉く買はうとし、また貰うべからざるものを人から貰つて喜ぶやうなことは、最も卑しむべきである。又質素とは金銭のみの事ではない。特に彼の正しからぬ贈与を受け、又は価をねぎつて得た品を喜ぶや

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    2011年02月23日
  • 『食道楽』の人 村井弦斎

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    ネタバレ

    i文庫HDで少しだけ「食道楽」を読み始めたところで読んだのだが、実に素晴らしい研究。このような素晴らしい研究テーマを掲げ、粘り強い調査を行い、読ませる文章を書ける研究者が夭逝してしまったのは残念至極。「パンとペン」も期待大。先日読んだ「雑食動物のジレンマ」と言ってることがまるで同じで百年経ってもほとんど人間の食には進歩がないのかと驚愕。魯山人などは著書のなかで村井を相当馬鹿にしているが、売れる人に対するこういうやっかみって、今も昔も変わらんな、と。昔のほうが権威主義が強かった分、余計酷かったかも。食育が見直されてるなか、この人の著作がまた見直される気もするな。

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    2011年04月03日
  • パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

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    労作だ。やはり売文社、出版関係の章は興味深い。翻訳の数々…
    ジャック・ロンドンをあらためて読もう。荒川義英の本のエピソードは時代を浮かび上がらせる。

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    2012年03月03日
  • パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

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    堺利彦、荒畑寒村、大杉栄、黒岩涙紅、添田亜蝉坊、添田知道、高畠素之、尾崎士郎、山川均、白柳秀湖、幸徳秋水、青野季吉、宮武外骨、「平民新聞」「萬朝報」「売文社」、このどれか一つにでも関心がある人にとって、面白い一冊に仕上がっています。人間味あふるる堺利彦さん、そしてその娘さん真柄さんがよく描かれている。

    思想弾圧の厳しかった時代に
    よくぞ ここまでの信念を貫き通した人々
    その存在を きちんと伝えておくことは
    私たちの使命でもあると思う。

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    2012年08月24日
  • 明治のお嬢さま

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    明治時代の環境と生活、ついでにお嬢様の様子も少し、といった内容です。
    明治時代の知識が皆無に等しい私としては、明治の説明が多めで、とてもよく理解できました。ただ、途中でふと「お嬢様情報はどこ?」と我に返ったりしたので、「明治のお嬢様」情報がメインでがっつり、という目的の方は肩透かしをくらうかもしれません。
    当時の写真もあり、読み物としてはとっても楽しめました。明治に木造12階の塔で8階までエレベーターがあったってすごい!

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    2010年04月07日
  • 明治のお嬢さま

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    ネタバレ

     明治時代、士農工商が解消し、四民平等の世の中になったとはいえ、皇族、華族(旧大名、公家、富豪など。公・侯・伯・子・男爵)、士族、平民の階級が。ノンフィクション作家の黒岩比佐子さんが、華族の令嬢たちの生活の様子を再現しました。「明治のお嬢さま」、2008.12発行。広大な御殿、部屋数は70、使用人は150人・・・。嫁探しの授業参観は面白いです。九条節子は在学中に皇太子(大正天皇)の妃に。驚きは華族の70%が妾持ち(家系の存続、財産の継続)。明治天皇も皇后の他に5人の典侍(側室)を。大正天皇以来側室なしに。

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    2022年04月20日
  • 明治のお嬢さま

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    1880年から90年代生まれの明治のお嬢様に関して、女性誌や新聞記事から本当の姿を明らかにした一冊。束縛され、生き方を決められ…明治の女性の姿を見ると、本当の日本はこう、とか称賛されたり昔は良かったのにと嘆かれる意味が分からなくなる。ホント、一部の男性のみのためにある社会。今の世の中のほうが全然いいから。こんな世の中とか歌う人も多いけど!

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    2018年02月28日
  • 明治のお嬢さま

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    明治時代の家族・皇族といった上流階級に属する女性について書かれた一冊。当時の上流階級の女性がどのような価値観の中で生き、どのような生活を送っていたのかを知ることができる。また、上流階級の女性についてのみならず、それを説明するにあたって当時の世情なども書かれているので、大変勉強になる。当時世間での、女性や結婚、家庭に対する価値観の違いを、読みながら現代と比較するのも面白い。また、世間の美人像の変化や女性の容姿の変化もこのあたりの時代なので、苦心し様々に工夫している様を想像するのも面白い。
    本書には、当時の写真も数多く載っているので目でも楽しめる。

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    2017年04月23日
  • 音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治

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    ひさしぶりに質の良いノンフィクションに出会えた。途中、関係者のくだりが長すぎと感じたが、筆者の誠実さが伝わる本

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    2014年05月21日
  • 音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治

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    昭和30年代の福岡の町や人々の暮らしを撮ったろう者の写真家 井上孝治さんのことは、数年前、NHKの特集を見て知りました。

    その頃読んだ堺利彦の評伝を書いた黒岩比佐子さんの名前を番組のエンドクレジットのなかに見つけ、調べてみたら彼女のデビュー作が井上さんのことを書いたこの本でした。

    買ったまま本棚でずいぶんと寝かせ、熟成させていましたが、いよいよ読み頃を迎えたようです。

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    2018年01月18日
  • 明治のお嬢さま

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    籠の鳥は嫌だなぁと思いました。

    お屋敷が広すぎて、台所から100m移動するうちに冷える料理しか食べないので猫舌であるエピソードとか
    茶・琴・花・歌を幼少よりマスターしていないといけないとか
    お箸は先から1cmしか汚さぬように食べねばならぬとか

    私には無理ですし人権無くて嫌です

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    2012年06月23日
  • パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

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    ネタバレ

    苦境を笑いとばし、文で闘う堺利彦の抵抗の精神


     大逆事件以降、社会主義運動は「冬の時代」を迎える。その時期に、翻訳・編集会社「売文社」を興し、運動の資金稼ぎを行った堺利彦を描く一冊だ。幸徳秋水、大杉栄、荒畑寒村らキラ星に比べると履歴も地味だし、これまで論じられる機会の少なかったが堺利彦だろう。本書は初の堺についての本格的な評伝であり、著者・黒岩比佐子さんの遺作でもある。
     若き日の堺は無頼放蕩の繰り返しだ。遊ぶために「文」を書く。しかし万朝報に入社し社会主義へと目覚めていく。大逆事件では連座を免れるが、仲間たちの死刑執行後、その遺体を引き取るのは堺だった……。
     冬の時代に堺は売文社を立ち

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    2012年04月24日
  • パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

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    大逆事件によって盟友の幸徳秋水ら同志12人を殺害された悲しみと怒りのなかで、「売文社」という人を喰った名前の出版プロダクション会社を設立し、同志たちを食わせ、「冬の時代」の社会主義運動をささえた堺利彦の人間性と才能、ユニークな闘い方に新鮮な光をあててみせた力作、労作である。
    1910年の大逆事件で秋水を失い、1923年の関東大震災で大杉栄を失った堺自身、つねに官憲のターゲットになっており、いつ暗殺されてもおかしくなかった。天寿をまっとうできたのは、ほんの偶然にすぎない。著者はそのことについて、冒頭でこう述べている。
    「私は、あえて『幸運にも』といいたい。”ドラマチックな死”ではなかったために、

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    2012年01月29日
  • パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い

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    ネタバレ

    堺利彦の伝記であり、明治から大正にかけての社会主義者の流れであり、そしてその時代の出版界の生き生きとした記録である。黒岩さんが堺利彦に魅かれる気持ちがよくわかり、丁寧に文献を掘り起こしておられるので、一級の資料としても貴重な作品だと思います。そして何より「売文社」を始めとして、出版界の様子が面白かったです。

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    2011年06月24日