高島俊男のレビュー一覧
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中国の政治史、特に複雑過ぎて理解する気も失せる現代政治史を大づかみに切り分け、「盗賊」をキーワードに
面白おかしくずぶの素人にも単純に理解できるようにまとめてくれた名著。
古来より中国は力が正義。いつの時代にも武装した民衆が集まり、実力で意見を通すそれが賊、冦、盗、匪などと呼ばれる。日本で言えば一揆が近いが、大きく違うのはその利己的な性格。正義を振りかざして政府に反乱もするし、同時に犯罪集団でもある。梁山泊でもあり、ISISでもある連中。
このとんでもない集団があることが、傍目には中国史を面白くさせているわけだが、困ったことに天下を取った中央政府も元はこういう連中にすぎない。しかも正規の政府に -
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週刊文春での連載終了以降、あまり読めなくなってつまらないなあと思っていたら、そうか、「本」で連載されてたのか。知らなかった。漢字を中心とした日本語の蘊蓄。もう大好きなんだよね。
しかしまあ言葉っていうのは本当に難しい。ゆめゆめ知ったかぶりして書くまいと思う。なにしろ頼りの辞書の記述にも当てにならないものがあると、高島先生はしばしば指摘してるんだもの。常日頃愛用している「広辞苑」はもちろん、最終兵器「日本国語大辞典」でさえ、間違った孫引きをしている箇所があると言われた日には、いったい何を信じればいいの~と途方に暮れてしまう。しをんちゃんの「舟を編む」でも書かれていたが、辞書というのは全く気の遠 -
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多くの人に読んでもらいたいと思いました。なんだか、いたたまれなくなる日本語×漢字の話。非常にわかりやすく解説してくださっているので、文体の好みは分かれるかもしれないけれど、若年層も読みやすいと思います。
文字を持たない日本語が他国の発明品である漢字をいかに取り入れ、どのように意識してきたか。文字を持ったがために、日本語がどのような影響を受けたか。そして、明治維新後や戦後、日本の言語がどう変わろうとした結果、いまわたしたちが使っている日本語があるのか。
「常用漢字の新字体」でものを書き、考える癖の染み付いた脳にはあまりにも悲しい日本語と漢字の話。「常用漢字」や「新字体」の正体をはじめて知って、 -
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少し前に、娘がユスラウメのジャムを作っりました。
ユスラウメって知らなかったので、wikipediaで調べてみました。「櫻」って漢字は、サクラではなく、「ユスラウメ」のことだったらしいです。
古から、言葉、漢字を介在して伝わってきている歴史を言葉、漢字を使わなくなることによって失うのは残念だなぁと思い始めました。
著者の高島氏も同じ思いではないかなと思います。ことば、日本語に対する愛情がとても感じられました。
話の中で興味深かったのは、漢字が入ってきたことによって、日本語の成長(抽象的な概念の生成)がなくなったということです。今までに考えたこともありませんが、どのような言葉を作ったのかなぁ -
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赤んぼが一番出しやすい音は唇音(m音とp音とb音)だから、世界中どの人種の言語でもたいがいお母さんを呼ぶ言葉は唇音である。
だとか、めっちゃやたら大量にちりばめられたマメ知識に感心するし、
あれ(=平安女流文学)は女が情緒を牛のよだれのごとくメリもハリもなくだらだらと書きつらねたものだから、あの方式でがっちりした論理的な文章を書くのは無理なのである。
などと、痛快にご意見を開陳してくれて、御大まだまだかくしゃくとお元気なんだなと安心する。と同時に、井上ひさしの「東京セブンローズ」を思い出してしまった。
日本語が世界に類のないけったいな成り立ちであり、その成り立ちに引きづられて日本語だけ -
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ネタバレタイトルから、日本でいう石川五右衛門、フランスでいうアルセーヌ・ルパンのような大泥棒を思い浮かべがちだが、この本では劉邦や朱元璋のような国を盗った大盗賊が挙げられる。そういえば、この二人は農民出身で最初は片田舎の盗賊として挙兵した。
中国では農業からあぶれた者(閑民)が武装して盗賊となるのですが、それでは困るとして国が閑民を兵とすることがよくあった。しかし、この兵のほうが盗賊よりも徹底的に略奪するなどしたから厄介だった。
注目すべきは毛沢東。本書では彼も一地方勢力として旗揚げし、勢力を拡大して中国全土を支配したという点で、劉邦や朱元璋と同じような盗賊皇帝として描かれている。
毛沢 -
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易姓革命などソレらしいことをいうが、言ったもん勝ちの後付の説明みたいなもんで、実際は、権謀術数と疑心暗鬼と大虐殺が満載の大盗賊たちの権力闘争。人間らしいっちゃぁ、実に人間らしい。
筆者は、史上最強の大盗賊は毛沢東だとして、こんなふうにバッサリと片付ける。
「つまり毛沢東の伝記の面白さは、共産党が人民を解放したの民衆が立ちあがったのというヨタを聞くのがおもしろいのではさらさらなくて、こいつの前では朱元璋も李自成もケチなコソ泥ぐらいに見えてくるという大盗賊が、中国をムチャクチャに引っかきまわすという、一般中国人にとっては迷惑千万の歴史が面白いのである。」(p259)
常にひどい目に合わされる庶 -
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日本語における漢字の位置付け、成り立ちから漢字の統廃合の動きなど、使われ方・在り方を時にエッセイ風に著者の私見も包み隠さず語られている。
「和製英語」という言葉があり時に批判の対象になったりもするが、本書で「和製漢語」という言葉が出てくる。中国から入ってきた言葉が日本人によってアレンジされたものだ。例えば「かへりごと」という日本語に漢字の「返事」をあててそれが後に「ヘンジ」と読まれるようになった、など。日本に限らずだろうが、外からきた言葉と元からある言葉が組み合わさって結果その国の言葉になる例はたくさんある。
本書で改めて気づかされたのは、「日本人は漢字を覚えるのに無駄にエネルギーを使って