昭和処女「御伽話」と題名に書いてあることは伊達ではなく、まさに御伽話であるこのお話
御伽話風にこの話のあらすじを書くと、「お姫様が王子様の呪いをとき、ともに立ち塞がる試練を乗り越え幸せになる話」である。
モチーフとしているお話は「蝶々夫人」と「ロミオとジュリエット」である
劇中、蝶々夫人が
...続きを読む帰らぬ恋人を想う歌である「ある晴れた日」を流し、シェークスピアの話も出てくることからもわかる
いよいよ二人が残酷な運命に立ち向かうときには「ロミオとジュリエット」のお話を仁太郎が常世に読み聞かせるのである。
まさに今からお話と同様の悲劇が起ころうとすると予告するかのようにー
モチーフにしている話はどちらとも悲劇であるが故に、それだけならばこのお話は悲劇で幕を下ろすことがふさわしいだろう
しかし、作者はその運命に抗うため、このお話に魔法をかけたのである、そう、物語の冒頭でおじいからもらう「魔法のカメラ」である
この魔法の内容はこうだ「これで好きな女を撮るとな、必ず結ばれて末長う幸せになると云われるすごいカメラやねん。」
その魔法はいよいよ常世がジュリエットのように仁太郎の死を儚んで自死しようとするときに奇跡を起こす。
自死に使用しようとした毒薬である昇汞水が、砂糖水に入れ替えられていたのである。
仁太郎は祖父からカメラを譲られ、カメラを趣味としていたため、そしておじいの話に縋るため常世の写真を撮り、
それを現像するために消毒用に与えられていた昇汞水を使用してしまっていた、その時嫌な予感を感じ、砂糖水へと入れ替えてしまっていたのだ。
常世はそれを仁太郎からの「生きろ」というメッセージであると受け止め、自死をやめる。
まさに魔法のカメラが無ければ起こり得なかった奇跡である。
ジュリエットが自死しなかったロミオとジュリエットの結末はどうなるか?
そう、生き返ったロミオと結ばれるのである。
魔法の奇跡により残酷な運命を乗り越えた二人は結ばれ末長く幸せになる、まさに御伽話である。