日高敏隆のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
初めて日高先生の著書を読みました。
「面白い」より「興味深い」という言葉がぴったりな本でした。
10のエッセイと御退官時の講演を読み、考えることができます。
意味が深すぎたのか一度では私の理解が追いつかず、何度も読み返す文がありました。それでも噛み締めるうちにじんわり染み渡ってくる、そんな内容です。
イマジネーションとイリュージョン、自然の中での人間についてなど
多くのことを考えさせられました。
色々な問題が生じている現代だからこそ、日高先生の考え方やものの見方を
あらゆる価値観の中の1つとして1人でも多くの人が共有できていると
もう少し世の中に柔軟さが生まれるのかなと思います。
私もいつか -
購入済み
蝶は飛び、ヒトは歩く
子どもの頃、ぼくはいわゆる昆虫少年で、昆虫採集に明け暮れていた。小学校の高学年になる頃には、蝶ばかり、それもアゲハ科の蝶ばかり追いかけていた。ちょうどその頃、この本が出版され、ぼくの本棚にやって来て図鑑の隣に収まった。
残念なことに当時のぼくは、この本の面白さを十分に読みとって味わうことはできなかった。ただ蝶の美しさに魅せられていただけだったし、蝶がぼくの目の前を飛んでいたから追いかけていたのに過ぎなかった。
しかし、なぜ蝶はそこを飛んでいたのか。飛びながら何をしていたのか、なぜそのような飛び方をしていたのか……?
この本は、明らかにされた情報を知識として紹介する図鑑や解説書のような本と -
Posted by ブクログ
物事の見方、考え方の習慣を一新してくれる可能性のある本です。気になったところを転記します。◆「宙(そら)に浮くすすめ」人間は理屈に従ってものを考えるので、理屈が通ると実証されなくても信じてしまう。実は人間の信じているものの大部分はそういうことではないだろうか。いつもぼくが思っていたのは、科学的に物を見るということも、そういうたぐいのことで、そう信じているからそう思うだけなのではないかということだ。何が科学的かということとは別に、まず人間は論理が通れば正しいと考えるほどバカであるという、そのことを知っていることが大事だと思う。そこをカバーするには、自分の中に複数の視点を持つこと、一つのことを違っ
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Posted by ブクログ
良質な本という感じがぷんぷんするよ。ひと頃、「〇〇しなさい」調のタイトルをつけたビジネス・自己啓発書がたくさんあったけど、この本は「〇〇してごらん。ぼくはそういうふうにしてきたよ、こういうふうに考えているよ」と、動物行動学の第一人者でありながら独立独歩であった著者がやさしく示唆してくれる自己啓発書。「示唆」としたとおり答えがそのまま載っているわけじゃなくヒントをくれるような感じだけど、そのぶん広く適用できる知のヒントが書かれていると思う。
響いたのは「正しく見えることと、ほんとうに正しいかどうかは関係ない」(p.47)とか「自分の精神のよって立つところに、いっさい、これは絶対というところはない -
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1900年代前半に、ほぼ野生状態の動物と共に過ごしたすごい動物行動学を成立した人の自伝的なやつ。
実際にその人が体験したエピソードがてんこ盛りでとてもおもしろい。ガンの鳴き声を把握して会話できてるのがもはやおとぎ話かのよう。
そこらの沼から水をひとすくいしてアクアリウムを作るという話を読んで自分もやりたくなったが、今はそんな池や沼なさそうなんだよなぁ…
肉食動物は、うなり合うだけで実際に殺し合ったり、弱い相手を殺すまで戦うということはなく、勝敗が決まった段階でもう争いは止まるものだが、ハトなど、相手を傷つける力を持たず、逃げ出す力を持つ動物を檻の中など「逃げられない環境」に置くと、弱いほう -
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副題にある通り、動物行動学入門としての名著中の名著。
学者らしく教養深く、かつ、自然動物への愛にあふれた文章に満ちている。
科学的な姿勢と、ユーモアあふれる詩情豊かな表現が両立する事を教えてくれる。
科学者のエッセイや文章というと、高度に知的である人の書くものでとっつき難いかもと思ってしまう。でも、この本はとても読みやすい。愛情深く自然と生き物に寄り添い、その自然のままの姿を愛するローレンツの文章は、特に泣かせにかかっているわけでもないのに、自然と涙が浮かんできた。ハイイロガンのマルティナの話は、とくに。
ソロモン王の指環が無くても、動物を理解する事は出来るのだ。 -
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利己的な遺伝子、ホトトギスはどうやってホーホケキョ と鳴くのか。他のホトトギスから話して育てた鳥に、カラスの鳴き声を聞かせても興味を示さないが、ホトトギスの声には耳を傾け、学習する。環境か、遺伝か、というが学ぶべき内容が遺伝で決まっているのだ。
その他、textureや倫理の話が印象的。
視覚から触覚を感じる、texture. それを彼は冬から春の山に見出す。なんとも言えない、ふっくらとした春の色。
青砂浜辺の美しさは、偶然により創り出されたもの。自然の倫理、人間の倫理、建築の倫理様々のものがあるが、どれかを通すのではなく、そのやりとりの中、共生の中で新しい美しさが生まれるのではないだろう -
Posted by ブクログ
『はだかになり野生に帰って、野生のガンたちの群れの社会に溶け込み、ドナウの堤であるきまわったり泳いだりするのが、私の研究の本質的な部分を占めていた。なんと幸福な科学だろう』(P170)
著者のコンラート・ローレンツは、オーストリアの動物行動学者。
動物とともに生活し、刷り込みなどの研究を行い、ノーベル生理学・医学賞を受賞する。近代動物行動学を学問としての基礎を築いた。
題名である「ソロモンの指輪」は、旧約聖書のソロモン王が「魔法の指輪をもち、獣、魚、鳥たちと語った」と(※これは誤訳で、正しくは「大変な博識で、獣、魚、鳥たちについて語った」なのだが)いう記述からとっている。
読んでいる印象で -
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Posted by ブクログ
コンラート・ローレンツ(1903~1989年)は、オーストリアの動物行動学者。近代動物行動学を確立した人物のひとりといわれ、1973年にノーベル生理学医学賞も受賞している。
本書は、研究エッセイをまとめたローレンツ博士の代表作のひとつで、1987年に邦訳が出版されている。
題名は、偽典(旧約聖書の正典・外典に含まれないユダヤ教・キリスト教の文書)のひとつとされる『ソロモン書』に記された、あらゆる動植物の声までも聞く力を与えると言われる「ソロモンの指輪」の伝説を踏まえて、その指輪がなくても多少は動物の気持ちがわかるものだという意味を込めて付けられたのだという。
本書には、ハイイロガン、コクマルガ