日高敏隆のレビュー一覧
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古本で購入。
動物行動学の専門家である著者が語る動物エッセイ集。
動物も人間も“今そうなっている”のにはちゃんと理由があるんだよ、という動物と人間の「論理」がテーマになってます。
小ネタが満載でなかなかおもしろい。
「左ヒラメの右カレイ」とは言うが、ヌマガレイはカレイ科なのに左側、シタビラメはヒラメとされるのに右側。
ヒラメもカレイも稚魚は普通の魚と同じ姿をしていて、成長過程で頭骨がねじれて目が移動する。目の通り道は細胞が順次に死ぬことでできる。
クモは脳の発達で食道が圧迫され、獲物の血液しか摂取できなくなった。
カエル(ガマ)が対象をヘビと認識する条件。こんな絵↓でもヘビだと思うらしい。 -
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いきなり性の話で、しかも表紙がこんな感じなので、借りるのが若干恥ずかしかったけど…
生殖の話は生物学的に必ず通る道だし、女として生きていても大体通る道だし、やっぱり面白い。
遺伝的に適応してきた多様性の話も興味深い。
科学とは「その時点におけるもっともレヴェルの高いウソである」という見解もなるほどと思った。
日高先生の思想的にも哲学的にも非常にレヴェルの高い話を面白おかしくやるって、私は単純に面白いな。ありがたいな。って思うけど、
中途半端に科学をかじってる人(残念ながら中高の先生とか)は、面白いのは学問じゃないと信じ込んでることが多いらしい(*_*)
竹内先生は「私に対して意地悪をする -
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新聞に連載したエッセイを集めた本。
短いので、気楽に読める。
虫の越冬のしかた、ヤモリがなぜ壁を這うことができるか、美形のサギが万葉集に登場しない理由の日高流解釈などが面白かった。
『チョウはなぜ飛ぶか』『ネコはどうしてわがままか』の著者だけに、今回も疑問文タイトル。
でも、「なぜ飼い犬に手をかまれるのか」という題の文章はない。
(そういえば、『チョウはなぜ飛ぶか』も、その答えは本の中にはなかったような・・・)
今回は、そこまで「外して」いなくて、おそらく「犬の由来」がそれに答える内容なのだろう。
「アルファ化症候群」とやらが、さらっと言及されるだけだったが。 -
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はじめの掴み方がよいです。
下ネタってか性の話って、やっぱり男女問わず興味のあることなんじゃないですかね?笑
もともと日高さんの研究分野も好きだし、本も読みやすいのでファンだったんです。
で、この本は日高さんとその教え子の竹内さんとの対談なんですね。
やっぱりお話も面白いと思ったし、考え方も素敵だと思いました。
科学ってこういう面白さがあるんだよって伝えてくれている。
別に絶対的なものでもないし、お堅いものでもない。
「これってもしかしたら、こうなんじゃないの?」っていう発想から生まれるある種のエンターテイメントが科学。
科学系の本を読んでいると(といっても、そんなに読まないですが…)ワ -
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[ 内容 ]
大雪渓の雪の上を一生けんめい歩いている小さな黒い虫たち。
彼らはどこからきて、どこへいこうというのか。
雪の上に食べものはあるのか。
日本を代表する動物行動学者である著者は、少年のころより生きものや自然とふれあいながら、じつにたくさんの疑問を胸のうちにためてきた。
身近な犬や猫の行動から、チョウやホタル、さまざまな虫たちの行動まで、深い関心を寄せ、疑問を解いていこうとする珠玉のエッセイ集。
[ 目次 ]
第1章 動物たちそれぞれの世界(庭のタヌキ;冬の越しかた;春のチョウ;小鳥の給餌;田んぼのカエル ほか)
第2章 動物の言い分、私の言い分(稲むらの火;京都議定書;二つの美;ト -
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生物の教科書に載っていた「刷り込み理論」のローレンツが書いた一般向けのエッセイである。動物とは全く関係ない『文学のなかの法感覚』という本の中で面白いととりあげられていたので手にとった。
ローレンツの業績は「動物行動の観察という当時は軽視されていた古典的な手法を厳密に用い、科学の名に値するものに仕立てたこと」(Wikipediaより)らしい。本書は一般向けエッセイなので、科学的な業績や理論に直接触れるものではないが、紹介されるエピソードやそこから導かれる結論には素人目に見ても怪しいものもある。
本書のみどころは、家を動物園のようにしていたローレンツがどのように動物を見ていたかがわかることだ -
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植物を研究する人はどのように植物に興味関心を持ったかを知りたくて読む。
植物の話というよりは、それを介して世界をどう見るかという方が主題であった。植物、動物の様々な特徴を観察し仮説検証を繰り返す中で、物事の成り立ちの複雑性を気づき、決まった真理等を見出しそれに沿って生きることに疑問を呈している。それよりかは、真理とされているものも一時点で通っている考えにすぎない一種の幻(イリュージョン)ととらえて、複数の視点を持ちながら分からないことも受け入れる姿勢が良いとのこと。
決まった答えや正しさに固執しがちだが、そうではなく寛容な態度で物を見たり人に会ったりして、いろんな疑問を持ちそれを自由に解明 -
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「環世界」という聞き慣れない単語が主題である。かなり古い科学の本。
環世界というのは生物の知覚能力に従って、生物自身が知覚することにより理解できる環境のことである。主観的な環境とも言える。
一般的に環境という場合は物理的、物質的な環境、すなわち客観的な環境のことを指していて、環世界とは異なる。
当然、ゾウリムシのような単純な知覚能力しか持たない生物の環世界は単純である。
といったような話。
大切なのは、自分自身が知覚していると思っている環境とはあくまで自分自身の環世界でしかなく、鳥や昆虫など別の生物はまったく別の世界を知覚しているのだということを理解したうえで想像力を働かせることなのかなと思っ -
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僕は写真を撮る。写真撮影をやっていると、何を撮ったらよいものか、わからないという話を見聞きすることがある。写真撮影はカメラを構えてシャッターを切りさえすれば写真は撮れる。「何を撮れば?」その回答は「撮りたいものを撮れ」としか言いようがない。写真の内容そのものには主体性が必要ないから、写真撮影において“産みの苦しみ”的な悩みはありえないというのが、僕の考え。写真を撮る、という行為自体に主体性が存在するのだから、撮影者は、シャッターを切ることのみに専念すればいい。考えて撮る必要はない。シャッターを切りさえすれば写真撮影は可能だからだ。それでは良い写真を撮ることができないと反論を受けるかもしれないけ
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動物行動学者のエッセイ。
動物行動学は、動物を観察してその行動についてを研究する学問。モンシロチョウは下を飛ぶのに、アゲハチョウはなぜ高いところをとぶのか。花、メスに、どうたどりつくのか。
正しい見方とはなにか、いろいろな立場からみてごらん。相対的にみてごらんと。
とにかく読みやすい。軽い文体なのに味わい深い。動物行動学というものが認められていない時代の話。東大や京大の違いなどもさらりと。苦労話ではなく、楽しそうに振り返っている。
時代によって見かたも価値観も変わる。
絶対的なものなどない。
なんだかほっとするような、本。
なにかモヤモヤするときに読み返したい。