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甲虫の羽音とチョウの舞う、花咲く野原へ出かけよう。生物たちが独自の知覚と行動でつくりだす〈環世界〉の多様さ。この本は動物の感覚から知覚へ、行動への作用を探り、生き物の世界像を知る旅にいざなう。行動は刺激への物理反応ではなく、環世界あってのものだと唱えた最初の人ユクスキュルの、今なお新鮮な科学の古典。
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Posted by ブクログ
人間以外の多種多様な生物は機械のように単純な仕組みで成り立つものではない。
生物それぞれに主観的な世界がある。それを環世界と言う。ダニは特定の匂いや、温度、接触に反応する世界を持っている。ウニは末端の器官から得る刺激そのものが世界を認識させている。
このように生物には、われわれ人間の見ている世界とは異なる世界が広がっているのである。
生物学を学ぶために、人間の見ている世界の認識を一旦脇に置き、生態を考察することが大切だ。
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岩波文庫は難しい本が多いですが、その中で読みやすい本を選ぶとしたら本書を紹介する人も多いはず。ページが薄く、主張が一貫しているので理解しやすいです。本書はカントの自然学の理論が前提にあるように思われます。
Posted by ブクログ
人はしばしば、自分が見えている世界を「生物にはどう見えているか(環境)」と捉えがちだが、本書が説くのは「生物は世界をどう見ているか(環世界)」という視点。人の目には部屋の中に机や椅子、本棚が見えていても、飛び回るハエには机の上の皿にある食べ残ししか知覚されていない。飼っている犬には食べ残しの他にも椅子やテーブルといった"座れるもの"が知覚されているかもしれない。さらに人の中でも、読書家であれば本棚は別の色を帯びてみえるかもしれない。
このように似ているようで異なる、生物の数だけ存在する環世界という発想がとても面白かった。
ユーザーであれば使いやすさや工数削減、エラー率を知覚するだろうし、経営層であればROIやKPI、全体最適を知覚し、そしてエンジニアはコード品質や安定稼働をそれぞれの視点から知覚しているはず。つまり、ステークホルダーの数だけ環世界が存在して、Agentic AIもプロンプトや学習内容、MCP、確率的統計といった独自の環世界を基に判断しているだろうと意識する良い学びとなった。
また、盲導犬の調教を例に示されるように、異なる環世界を共有することの難しさ、それでも想像し理解する姿勢が出発点になるという示唆も。
挿絵の魅力もさることながら、「完全な国内平和を維持している『反射共和国』といえよう。」 「失敗に終わった結婚飛行を物語っている。」など分かりやすいんだか分かりにくいんだかな比喩表現も味わい深かった。
Posted by ブクログ
愛のある日高敏隆の翻訳が素晴らしい。著者のユクスキュルはエストニア出身の動物比較生理学者で、1934年に「動物と人間の環世界への散歩」という原題で出版された。副題の「見えない世界への絵本」が示すように、動物にとっての世界は人間の見る世界とはまるで違うことを科学的な説明とクリサートの絵で巧みに伝えている。訳者の日高は、その動物にとっての世界を「環世界」という訳語を発明して表現した。象徴的なのは第1章で、目が見えず音も聞こえないマダニの生活史を追い、光感覚と嗅覚でその世界が作られていることを描く。さらにマダニは獲物が通りかかるまで時には何年も待つことから、マダニと人間にとっては流れる時間さえ違うと説く。人間の見る世界がすべてというのは大きな誤りであることを教えてくれた。
Posted by ブクログ
なるほど、生物それぞれが持つ「環世界」という概念。人間の環世界、ダニの環世界、カラスの環世界といったように多種多様な独自の世界があるという考え方に感心しました。それぞれの環世界は知覚も視覚も違けりゃ時間の感じ方にも生物によって違う。またこの概念は実験に基づいた自然的なものから、超自然的な魔術的環世界まであるとの事でそれもまた面白い。さらに人間の中でも、各個人の持つ知識の違いで見える環世界もまた異なってくるといった指摘も頷けた。頁数も少なく、例や図もふんだんに使われているから読みやすかった。
昔の人が(おそらく)人生を賭けた功績を手軽に文庫サイズで手に入れる事が出来るのは、何というか本というものの有り難さを感じられますねえ。
Posted by ブクログ
読み難く十分に理解することはできなかったが、環世界(Umwelt)という考えはとても面白かった。
すべての生物は、自分の感覚器官と運動器官を通して「独自の世界」を構成している。生物が感覚できる環境である知覚世界(Merkraum)と生物が働きかける環境である作用世界(Wirkraum)の両者が繋がり、その生物にとって完結した環世界(Umwelt)がある。
読む中で人間中心主義からの脱却というのがとても好ましく感じた。ヒトが生きる世界もまた一つの環世界にすぎず、その周りにはおびただしい数の環世界が多様に広がっている。
また、環世界を観察する際、われわれは目的という幻想を捨て、設計という観点から動物の生命現象を整理しなければならない。私が生物の構造や仕組みについて知ることを面白いと思う所以がわかった気がする。
小説ばかりではなく、生物系の新書にも積極的に手を出していきたいと思った。
Posted by ブクログ
(編集途中)
前から興味のあった「環世界」について深く学ぶことができた。
マダニの話は有名なので、ここに要点をまとめておく。
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ユクスキュルは、マダニを例に、生物がそれぞれ固有の「環世界」を生きていることを説明する。
マダニは目も耳も持たず、植物の上で宿主となる哺乳類を待ち続ける。哺乳類が近づき、汗などに含まれる酪酸の匂いを感知すると、枝から落下する。動物の体毛に触れると、その感触を手がかりに移動し、毛の少ない場所を探す。そして、皮膚の熱を感じると、そこに口器を差し込んで吸血する。
人間にとって世界は無数の刺激に満ちているが、マダニの行動を導くのは、匂い・接触・熱というわずか3つの知覚標識である。これらの知覚と、それに応じた行動が結びつくことで、マダニの「機能環」が成立する。
つまり、生物は客観的な環境のすべてを認識するのではなく、自分の生存に意味のあるものを知覚し、それに働きかけながら固有の環世界を生きているのである。
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そのほか、興味を持ったトピックを記録する。
【3章 知覚時間】
【5章 知覚標識としての形と運動】
【6章 目的と設計】
【9章 家と故郷】
【10章 仲間】
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