DNAの「二重らせん」構造は、1953年、分子模型を構築する手法を用いてジェームズ・D・ワトソンとフランシス・クリックによって提唱されたものである。二重らせん構造が明らかになったことによって、遺伝がDNAの複製によって起こることや塩基配列が遺伝情報を担っていることが見事に説明できるようになり、その後の分子生物学の発展に決定的な影響を与えた。この研究により、ワトソンとクリックはモーリス・ウィルキンスとともに、1962年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。
この発見は、20世紀最大の発見とも言われ、その経緯と人間模様を描いた作品は、ベストセラーとなったワトソンによる本書のほか、クリックによる『熱き探求の日々』、ウィルキンスによる『二重らせん 第三の男』のほか、この発見の鍵を握っていたとされるロザリンド・フランクリン(1958年、この発見にノーベル生理学・医学賞が与えられる前に37歳で死去)の視点から描かれた『ロザリンド・フランクリンとDNA―ぬすまれた栄光』(アン・セイヤー著)等、多数ある。また、福岡伸一のベストセラー『生物と無生物のあいだ』(2007年)が、これを詳細に取り上げており(トーンはフランクリンに同情的)、私も同書を読んでこの発見の背景を知った。
本作品は、上述の通り、多数ある著作の中のワトソンの視点から書かれたものであることを踏まえて読む必要はある。私は既に福岡氏の著作を読んでいるため、少々斜に構えて読むことになったが、それでも、一般的な日本人とは異なる、ライバルを設定して一つの大きな目標へと突進するワトソン(とクリック)らの研究姿勢は、ある意味興味深いものであり、それによって(西洋)科学をここまで発展してきたとも言えるのであろう。
(2020年4月了)