河野龍太郎のレビュー一覧
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経済学には全くの門外漢ですが、読みやすい文章で丁寧な解説に何か理解できたような感触を持ちました.p197のまとめにあるように、「過去四半世紀の間、日本では、時間当たり生産性が3割上昇しましたが、時間当たり実質賃金は全く増えていません.むしろ実質賃金は、近年の円安インフレもあって、減少しています.ただ、実質賃金が増えなくても、長期雇用制の枠内にいる人は、毎年2%弱の定期昇給があるため、賃金カーブに沿って賃金は上昇しています.属人ベースで見ると、四半世紀で、賃金は1.7倍となります.このため、日本の大企業エリートは、1世代前に比べて、自分たちの実質賃金が全く増えていないことを十分に認識していません
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日本経済の現状を取り巻く構造的課題を概観できる一冊。とくに、アベノミクスと呼ばれた金融緩和が進められた10年間の結果と、企業が利潤を労働者の賃金上昇に反映せずに自社株買いや海外投資といった株主資本ばかりが膨らんだ格差拡大の構造を分かりやすく説明している。
2000年代からの構造不況から日本の企業生産性は30%も向上しているが、賃金水準は横ばい傾向であり、近年のインフレ基調から実質賃金はマイナスに陥っている。いわばこの収奪的システムが日本のマクロ経済を形成し、アベノミクスの金融緩和が成長戦略へと結びつかなかった原因となっている。そのため消費に回る可処分所得が減少するスパイラルに突入し、それらが -
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いろんな要素が上手くハマったのが30年の高度経済成長なら
いろんな要素が悪くハマったのが失われた30年
失われた30年を解説してくれる本
この先40年、・・・60年と続かなければいいけど
「物価高」「実質賃金が上がらない」とマスコミ・メディアは取り上げるけど
ストライキ、暴動、インフラ不全など起きる気配もないので
「なんとなく不安」をSNSやマスコミが煽っているだけに見える
経済が低迷しているのは明らかだけど
水道水が飲めて、コンビニが24時間どこでも開店していて、
夜中に女の人が歩けて、子どもたちだけで登下校できる国なんて
世界的に少ないので恵まれた環境にいることが理解できない
「足 -
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ネタバレ日本経済の死角-収奪的システムを解き明かす
著者:河野龍太郎
2025年2月10日第一刷発行
2025年4月25日第五刷発行
20年間で生産性が30%上がっているのに、賃金が上がっていないのはなぜ?それは、儲けても現金をため込んでいく大企業の行動がが表面的な理由。ただ、その遠因はバブル崩壊後発生した金融システムの変化がある。
スマホとネットで相当生産性は改善しているのに、なぜ過去同じ仕事してきた諸先輩と給料が同じなのかとは、時々思っていた。その直感的な疑問に答えてくれる本。
賃金が上がらないから消費が伸びない。人口も減るし、消費が伸びないから国内消費が伸びない、だから大企業は日本国内には -
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ネタバレ1.「収奪的システム」の概念と実態
著者が最も強調するのは、**日本経済に内在する「収奪的システム」**という概念。
これは、企業が内部留保を積み上げる一方で、賃上げを抑制し、非正規雇用を拡大することで、労働者への分配を抑えるメカニズムを指す。
また、金融機関が企業へのリスクマネー供給に消極的であることや、政府が企業の「貯蓄過剰」を許容する政策をとってきたことも、このシステムを助長していると指摘している。
このシステムは、日本企業がグローバル競争力を維持するために「人件費抑制」という安易な方法を選び続けた結果、国内の消費を冷え込ませ、デフレを長期化させる悪循環を生み出した根源であると喝破してい -
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ネタバレ日本の経済停滞の原因を、通説にとらわれず、データを紐解きながら、解き明かす良書。
-日本の生産性は過去数十年で30%アップ。されど、より低い生産性伸び率の国よりも賃金上昇していない。
-実質賃金の低下→ベアも、インフレと合わせたら、単純実質ゼロアップ。
-されど、長期雇用者は昇給でその現実が見えてない。
-他方で、長期雇用の枠外に置かれた派遣職員は、収奪されて、安い賃金で据え置かれている。
→日本でも始まっている政治的な分断への影響あり?
-海外投資も株も、日本国内の雇用者の所得アップにはつながらず、結果、国内消費が伸びない。
-イノベーションは、本来収奪的で、どう包摂的な社会を目指すのか -
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哲学者の萱野稔人氏が金融緩和策に批判的な三人の専門家(藻谷浩介氏、河野龍太郎氏、小野善康氏)と対話形式でのインタビュー内容を文字に起こしたものである。
3人の中でも小野氏の内容が興味深かった。
小野氏の論理展開の大前提は、「お金が究極の欲望の対象になる」ということ。成熟社会では、モノがあふれていて、モノへの欲求がお金への欲求より低くなってしまったとする。
「成熟社会になってもまだまだ人びとにはほしいモノがある」との反論に対しては、
「もっているお金をつぎ込んで、ほしいモノを次々に買うのかと聞いてみると、大概の場合、返ってくる答えはこうです。『いや、お金がもったいないから買わない』
この言葉こ -
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2013年刊行の少し古い本。三人の著名エコノミストがアベノミクスの掲げる金融緩和を真っ向から否定し、その危険性を解く。
自分の理解できる範囲で、何で金融緩和が意味がないかという理由は2点)。
1.日本は人口オーナス期(現役世代が減少して高齢化社会)に入っていて、人口が減っていくところに需要は生じないというもの。需要のないところにお金をジャブジャブ注ぎ込んでもその効果は?
2.人は豊かになっていくとモノではなくお金の所有願望が強くなっていくというもの。ものが溢れている日本にお金をジャブジャブ注ぎ込んでも実際にお金がモノに変わるのか?
2番目については思いあたる節もあり目から鱗。ミニマミスト思考と