あらすじ
「失われた30年」で日本の生産性は上がっているのに、実質賃金が上がらないのはなぜなのか? 労働法制、雇用慣行、企業統治、イノベーション……日本経済の長期停滞をよみとく際の「死角」や誤算を白日のもとに晒し、社会が陥りかけている「収奪的システム」から抜け出す方途を明示する。予測的中率に定評のある最注目のエコノミストによる、まったく新しい経済分析の渾身の快著。経済構造に関わるあらゆる謎が氷解する。
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何度も読み直しているうちに、著者に洗脳されてしまいそうなくらい力のある主張が多い。(悪い意味ではない)
諸問題が裏で実は繋がっていることを具体的に紐解いてくれる。おそらく多くのことは正確なのだろうが、政府や日銀にとっては都合の悪いこともあるのかも知れない。
話題になることが多くなった、収奪的と包摂的の対比ということのきっかけとして大きな意味を持つ一冊であろう。
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私が著書を手に取ったのは、次の理由があったから。
1.日銀や政府の金融政策の解説を読みたかったから。
タイトルに日本経済と書かれていたので、金融政策に触れていると思った。
2.自分が経済的に豊かになれるヒントを知りたかったから。
読み終わった後、知りたいことがあったかどうか。
1.について、日銀や政府の金融政策や、大手企業の経営者の傾向が書かれていた。最近、日銀が利上げを行った背景を理解することができて、満足した。
2.著書の最後に、日本経済が豊かになるヒントが書かれていた。それは、限界生産性をあげること。自分が会社の仕事にどうアプローチすればよいか、また自分の事業をどう成功させるのかを考えるヒントになって、満足した。
最後に、YouTubeのエコノミストとは、考えが全く違っていた。本の方が、丁寧に解説してあり、自分に合っていたと思う。
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大企業は人件費を抑え込んできた。
バブル崩壊後、労働時間の減少が大きな影響を与えていた。
イノベーションには、包摂的なイノベーションと収奪的なイノベーションがあるとのこと。
大多数の人々には大きな負担や苦痛を強いるイノベーションがある。
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日本経済は過去30年、生産が上がらなかったのでは無く、大企業が人件費を抑え続けてきたために停滞していた。前半は日本経済について、後半は経済に影響を与える社会制度やイノベーションについて述べられる。特に興味深かったのは、イノベーションには収奪的と包摂的の2種類があるという論。蒸気機関による第一次産業革命においても最初の100年は労働者の実質賃金は上がらなかったという。むしろ工場での長時間労働により労働者は搾取されていた。それが鉄道網の敷設、電信網の敷設により経済全体が拡大すると労働者にもイノベーションの恩恵が広がっていった。イノベーション自体は元来野生的であり、社会として飼い慣らす必要がある。そのためには社会が包摂を志向する必要があり、社会のビジョンが大切だと論が進む。日本経済の成長のためにはイノベーションが大切だと、テクノロジー面のみに着目した意見は頻繁に見るが、テクノロジーだけでは経済のパイを大きくすることは出来ず、どんな社会を目指すのか、そのために必要な社会制度はどんなものか、より広い視野が大切だと実感した。
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私が社会人になった頃、就職氷河期と言われ、何社受けても希望の会社は最終面接まで行けず、相当の苦労があった事をよく記憶している。そのうち就職先はどこでも良くなってきて、全く希望と関係ない業種にまで手を伸ばしたりした事も覚えている。結局、上場企業なら何でも良くなって(活動に疲れた事もあり)、一社合格した時点で面倒になってやめてしまった。今思えばその後の人生に関わる重大事にも関わらず、よくもそんなに早く諦めたなと、当時の自分に文句が言いたくて仕方ない。だが、毎日遊び呆けているような大学生にとっては、そもそも働く事自体にいきなり前向きになれと言われても無理な事だし、法学部で大半の友人が公務員になる中、自分は一般企業で実力をつけたいなどと言いながら、試験勉強からも逃げていたのではないかと思う。自分の世代はそういう意味では景気の波のどん底みたいな時代。もっとも、大学出たての若造が日本経済に何かしらの興味や問題意識を持っていたとも思えず(その割には大学の授業は経済系も多くとっていたが)、社会人一年目は早々に仕事の大変さを見に染みて感じながらあっさりリタイアした。今考えればその後にit系で大量に人材が必要で、上手くそこに滑り込んだことは、私の人生を大きく変えた。本書と全く関係の無い話をしながらも、何とか話を結びつけるなら、それからうん十年、私の給料といえば確実に上がっている。最初に入ったit企業も当時のitバブル真っ只中でテレビなどのメディアにも取り上げられるようなイケイケドンドンな会社だった。給料は酷かった。残業規制などは全く考えることなく、月に残業時間が150時間越えるなと当たり前。これは当時にあっても違法だったんじゃ無いかと思う。だが幾らでも仕事があったし、やればやるだけ自分にスキルがついてるという実感もすごかった。そこから資格取得や転職、そして昇進などを続けて、前述した通り給料は上がっている。というか上げてきたつもりだ。
だが、最近は何を買うにも、これってこんなに高かったかな、と購入を躊躇する事も増えた。車の買い替えにしても、一昔前の1.5倍ぐらいはするんじゃ無いかと思う。結局私みたいな安物好きは人生を楽しめていないという人も居るが、良いものを安く買いたいというのは誰もが考える事で、今の物価高騰は吐き気がするほど凄いと感じる(酔っているので稚拙な言い回しになっているが)。兎に角給料は上がってきたけど、それ以上に家賃やら車の維持費やら、食費やら光熱費やら、そして趣味の楽器もバカ高い(楽器は海外に発注して完成に2年かかったから円安が進んで、なお高くなった)。実質的には裕福にはなっていないと言うのは勿論私だけの感覚では無い。このまま行くと少子化も進んで、内需に頼る日本経済の縮小は必然だと嘆きながらも、先ずは自分の所属する会社が潰れないように、日々を生き抜くのに精一杯。そうしている間に定年を迎えて、貯蓄だけに頼っていると、死ぬまで財が目減りするのを眺めるだけになるのかな。そうならない様にもう少し勉強して、真面目に10年先の事も考えてみるか。そんな(今は)不勉強な私にもだいぶわかりやすく、今の日本の経済の問題点を教えてくれる一冊だ。そして、そこから自分なりにどうこの問題と向き合い、どの様な方向性に進もうか考えさせてくれる一冊でもある。大変勉強になった。
Posted by ブクログ
論旨が明確。根拠も明確。
・日本では、労働生産性は上がっているのに、実質賃金が上がっていない。日本の労働生産性は、ドイツ・フランスより高い。ドイツ・フランスは、実質賃金が20%程度上がっている。
・企業(特に大企業)から家計への所得移転が進んでいない。バブル崩壊で、メインバンク制が崩れた。その後のリーマン・ショックやコロナで「貯蓄」があったことにより雇用を守れた。団塊の世代がおり、年配者が多いので、給与を上げると経営がきつい。大企業の意思決定層は、定期昇給があるので、ベアがなくても給与が増えているため、給与が上がっていないという実感がない。これらたくさんの理由から、企業は貯蓄をし、インフレ率相当で給与を上げればよい(実質賃金は±0でよい)という「ノルム」が生まれている。すなわち実質賃金は、上がらなくてよいという判断が当たり前になっている。
・日銀が、大規模緩和を2010年頃から続けてきた。これは、労働力不足によるコストプッシュインフレが起こる可能性がある。大規模緩和+労働力不足で、短期にインフレ目標2%の達成をねらった。しかし、高齢者と女性の就業が広がり、10年以上の緩和を続けることになった。この結果としての円安は、交易条件の悪化をもたらし、家計をさらに苦しくした。
・一方で、現在は、高齢者と女性による労働の追加が難しく、かつ「働き方改革」によって残業の上限が抑えられているため、労働力不足になっている。これがコストプッシュ型のインフレ圧力を高めている。1990年代に、土曜日が完全休業日になったときに、日本の潜在成長率ががくっと下がっている。労働投入量の減少が潜在成長率に与える影響は大きい。
Posted by ブクログ
すごいです。
霧が晴れていくような、世界が立ち現れてくる感覚。索敵できて全貌があらわになったような爽快感。閉塞感の正体を言語化・見える化することができました。これを正解・不正解とするかは別問題ですけど。
経済学のお勉強という感じではなく、実社会でどう活かしていくか、人類の知恵としていくか、前向きに考えていく内容です。
とても参考になりました。
Posted by ブクログ
私が最も信頼するエコノミストの新書。デフレからインフレに変わる中で、なぜ家計の実質所得が伸びないのか等、経済の論点を明瞭に解説している。金融市場の仕事に就いて、河野氏の勉強会には幾度も参加して勉強させてもらったが、河野氏はかなりの読書家で、多くの市場関係者とディスカッションして自説を練り上げる。学生にもぜひ読んでほしい本。
Posted by ブクログ
実質賃金がアップしない。確かに問題だ。
他方、経営者からすれば、正社員を簡単に解雇できないのだし、賃金も下げられないのだから慎重になるだろう。
Posted by ブクログ
非常に明快な経済書。
第1章の図1-1で示されるグラフ(日本の生産性と実質賃金)がすべてを語っています。
日本の実質賃金が低迷しているのは、生産性の問題ではないことを国際比較などから明らかにし、儲かっても溜め込んで、実質賃金の引上げも、人的資本投資にも慎重な大企業が長期停滞の元凶であることを確認した上で、なぜそうした状況に陥ったのか、歴史的に分析しています。加えて、社会情勢が大きく変化して、家計の直面するリスクが大きく変化したにもかかわらず、それに応じた社会保障制度のアップグレードを政府が怠り、セーフティネットで包摂されない人が増えていることも長期停滞の理由として挙げています。
こうした「収奪的システム」が長期停滞を引き犯しており、アセモグルらの論考を参照して説明しています。
また収奪的システムに陥った要因として、労働市場の変化、コーポレートガバナンス改革の陥穽なども挙げ、本来収奪的であるイノベーションをどう扱うべきかを論じます。
【目次】
第1章 生産性が上がっても実質賃金が上がらない理由
1 なぜ収奪的な経済システムに転落したのか
アベノミクスの大実験の結果/成長戦略の落とし穴/未完に終わった「新しい資本主義」/生産性が上がっても実質賃金は横ばい/米国の実質賃金は25%上昇/欧州は日本より生産性は低いが実質賃金は上昇/日本は収奪的な社会に移行したのか/儲かっても溜め込む大企業/不良債権問題と企業の貯蓄/筋肉質となった企業がとった行動/守りの経営が定着/定着したのは実質ゼロベア?/家計を犠牲にする政策/異次元緩和はいつ行われるべきだったか
2 コーポレートガバナンス改革の罠
青木昌彦の予言/メインバンクの代わりに溜め込んだ/メインバンク制崩壊とコーポレートガバナンス改革/コーポレートガバナンス改革の桎梏/非正規雇用制という収奪的なシステム/良好な雇用環境の必要性/収奪的な雇用制度に政府も関与
3 再考 バラッサ・サミュエルソン効果
生産性が低いから実質円レートが低下するのか/日本産業の危機
第2章 定期昇給の下での実質ゼロベアの罠
1 大企業経営者はゼロベアの弊害になぜ気づかないのか
ポピュリズムの政党が台頭する先進各国/実質賃金が抑え込まれてきた理由/問題が適切に把握されていない/属人ベースでは実質賃金は上昇している/実質ゼロベアが続くのか
2 実質ゼロベアの様々な弊害
インバウンドブームを喜ぶべきではない/賃金カーブの下方シフト/賃金カーブのフラット化も発生/実質賃金の引き上げに必要なこと
第3章 対外直接投資の落とし穴
1 海外投資の国内経済への恩恵はあるのか
一世代前と比べて豊かになっていない異常事態/海外投資は積極的/国際収支構造の変化/海外投資の拡大を推奨してきた日本政府への疑問/好循環を意味しない株高
2 対外投資は本当に儲かっているのか
勝者の呪い/高い営業外収益と無視し得ない特別損失/キャリートレード?/過去四半世紀の円高のもう一つの原因/円高危機は終わったのか/資源高危機/超円安に苦しめられる社会に移行/なぜ利上げできないのか/日銀は「奴雁」になれるか
第4章 労働市場の構造変化と日銀の二つの誤算
1 安価な労働力の大量出現という第一の誤算
ラディカルレフトやラディカルライトの台頭/高齢者の労働参加率の高まりのもう一つの背景/女性の労働力率の上昇は技術革新も影響/異次元緩和の成功?/第二のルイスの転換点?/労働供給の頭打ち傾向と賃金上昇/ユニットレーバーコストの上昇
2 もう一つの誤算は残業規制のインパクト
コストプッシュインフレがなぜ長引くのか/働き方改革の影響が現れたのは2023年春/需給ギャップタイト化の過小評価は2010年代半ばから/古典的な「完全雇用状態」ではない
3 消費者余剰の消滅とアンチ・エスタブリッシュメント政党の台頭
ユニットプロフィットの改善/グリードフレーションか?/大きな日本の消費者余剰の行方/小さくなる消費者余剰/消費者余剰の消滅とアンチ・エスタブリッシュメントの台頭
第5章 労働法制変更のマクロ経済への衝撃
1 1990年代の成長の下方屈折の真の理由
長期停滞の入り口も「働き方改革」が影響/構造改革派の聖典となった林・プレスコット論文/構造改革路線の帰結/潜在成長率の推移/週48時間労働制から週40時間労働制への移行/労働時間短縮のインパクト/バブル崩壊後のツケ払い
2 再考なぜ過剰問題が広範囲に広がったか
誰がバブルに浮かれたのか/実質円安への影響/今回の働き方改革も潜在成長率を低下させる/かつての欧州とは問題が異なる
第6章 コーポレートガバナンス改革の陥穽と長期雇用制の行方
1 もう一つの成長阻害要因
これまでのまとめ/メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用/雇用制度を変えようとすると他の制度との摩擦が生じる/メインバンク制の崩壊と日本版コーポレートガバナンス改革の開始/メインバンク制のもう一つの役割/理想の経営からの乖離/冴えないマクロ経済の原因とは
2 略奪される企業価値
株式市場の実態/収奪される企業価値/本末転倒の受託者責任/米国の古き良き時代とその終焉
3 漸進的な雇用制度改革の構想
ジョブ型を導入すると一発屋とゴマすりが跋扈/長期雇用制の維持と早期選抜制の導入
第7章 イノベーションを社会はどう飼いならすか
1 イノベーションは本来、収奪的
果実の見えないテクノロジー革命/ハラリが警鐘を鳴らしたディストピア/イノベーションの二つのタイプ/生産性バンドワゴン効果は働くか/平均生産性と限界生産性の違い/第一次産業革命も当初は実質賃金を下押し/実質賃金の上昇をもたらした蒸気機関車網の整備/汎用技術が重要という話だけではない/資本家や起業家への対抗力を高める/戦後の包摂的なイノベーション/自動車産業の勃興のインパクト
2 野生的なイノベーションをどう飼いならすか
1970年代以降の成長の足踏み/イノベーションで失われた中間的な賃金の仕事/イノベーションのビジョンとフリードマン・ドクトリン/具体案を提示したのはマイケル・ジェンセン/成長の下方屈折とその処方箋/ノーベル経済学賞の反省?/経済政策の反省/野生化するイノベーション/収奪的だった農耕牧畜革命/AI新時代の社会の行方/既存システムの限界/付加価値の配分の見直し/反・生産性バンドワゴンを止めよ
===
Posted by ブクログ
賃金が上がらないのは、生産性が低いからではない!
結構衝撃的ではないだろうか。
日本も生産性はアメリカほどではないが上がっていた。でも、その間、労働者への還元はなかった(ベースアップなし)。
それが四半世紀も。。。
これが、日本が貧乏になった理由だ、と。
労働者に還元されないから、日本国内でモノが売れない。そのため、日本への投資はせず、もっぱら海外への投資を行う。
この成果も日本には還元されない。
儲かってはいるから株価も上がるが、日本では現金以外への投資が少なく、これも国内には還元されない。
言葉を定義してから使ってもらえるともっとわかりやすくなるのに、もったいない。
最初の方からずっとでてくるゼロベアがベースアップなし、であることを説明したのは、200ページを超えてから、だし。
Posted by ブクログ
日本で生産性は上がっているのに賃金が上がっていないのはなぜ?
生産性向上でなく利益の配分を。包摂的経済へ。
我々雇われる側も2%の定期昇給で満足し、円安インフレで実質賃金は増えていないことに気付いていない。
溜め込んだ企業がコロナを乗り切り、雇用でなく自社株買いをすることで株価は上がり経営者は儲かり海外への投資、現行のイノベーションでは平均生産性は上がるが限界生産性(労働需要)は減る。
資本所得の税の優遇により、労働からの税負担率は上昇。増大する高齢者の社会保障費を現役世代で賄うため、企業は正社員でなく、非正規雇用を促進。
なるほど、それが今の抽象的な貧しさに繋がっているのかと。
収奪的な構造のなか我々の最適解とはなんなのか。
Posted by ブクログ
労働時間が問題ならこれからしばらくも辛いのではないかと思わざるを得ない。あと、ガツガツした昭和な雰囲気も悪くないのかも、世の中の賃上げプレッシャーとして。
Posted by ブクログ
今迄疑問だった事に少なからず腑に落ちたり教えられる事があって勉強になり読んで良かった。
失われた30年と言われ、主要国との比較で日本だけ賃金が横ばいで増えてない事からどんどん貧しい国、安い国に成り下がっている事を示すワニの口グラフとかもよく見てきたけど、本書で提示されるそうなった理由は、あまり今迄見聞きした事のないものが多く納得感あった。
例えば、「1988年いこ、日本の時間当たり生産性は30%程度上昇し、50%上昇した米国には及ばないとはいえ、25%程度上昇したドイツや20%程度上昇したフランスに比べると高めであり、決して不出来とは言えません。一方で、日本の時間当たり実質賃金は、ドイツ、フランスに大きく劣後してい」るのは、「労働者の権利を重視する社会民主主義的な傾向の強いドイツ、フランスでは、(略)企業が新たに付加価値を生み出した際、株主がリスクテイクの対価として期待する資本収益率を上回る利益については、労働者にも分配するレント・シェアリングの社会慣行が根付いている」から、とか、大企業は儲けを内部留保に溜め込んでいるが、それは90年代初頭のバブル崩壊後の不良債権、金融危機に端を発して、その後のリーマンショック、コロナ禍時に功を奏するという成功体験が、未だに根付いているから、というのには納得。
利益剰余金が、90年代末に130兆円だったものが、アベノミクスを経て2022年度550兆円、23年度600兆円。「GDP統計でーー雇用者報酬は300兆円程度ですが、1〜2%のベースアップに相当する3〜6兆円の積み増しすら難しいとされてきた一方で、利益剰余金はそれをはるかに上回るベースで拡大していて、23年度は何と50兆円の増加」とは!。数字が正に示しているわけだ。
以下気に留めておきたい数々
・喫緊の課題は所得再配分
・経済成長を促すメカニズムは、新興国には先進国の事例がお手本になるが、先進国向けのそれは経済学的には分かっていない
・合成の誤謬
・日本の長期雇用制は、成長の源泉である人材育成に有効なのに、ないがしろにされて来た
・非正規雇用がコロナ禍でも雇用の調整弁となってしまった
・日本社会は正社員の長期雇用を守る為に、正社員の実質賃金を抑え込むとともに人件費の一部を固定費から変動費に変換する為のイノベーションとして非正規雇用制を生み出した
・今の日本は、一世代前の実質賃金から全く増えてなく、これは19世紀以降の先進国の中で極めて異例
・正社員の残業は、景気拡大局面において、柔軟な労働供給として日本経済における隠れた強みだったのが、働き方改革、残業規制で弱体化
・最近の相次ぐ値上げは「囚人のジレンマ」から漸く脱した
・経済成長の実力たる潜在成長率は、①労働投入②資本投入③人々の創意工夫、の3つ
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①日本の実質賃金が上がらない理由
デフレではなく、他国に劣らない生産性の向上にもかかわらず、経済の低迷および震災、コロナの断続的なマイナスイベントの中でゼロベアがノルムとなってしまった。大企業正社員は、年功での給与アップはあるため、それを実感していない。
②イノベーションは収奪的
スマホのようなものは基本的に収奪的である。生産性は上がるとしたら、分母を減らして平均限界生産性をあげているのが基本なため、経済に貢献しない。するイノベーションは限界生産性(人員を増やした時の売上増分))が上がるイノベーションである。
③労働時間が経済成長に効いている。完全週休二日制、今回の働き方改革の中小企業への適用により、経済にマイナス貢献している。
日本は、因果関係は置いておいて企業が価格をあげられなかったため、消費者余剰は大きい。しかし円安、インバウンド、インフレに応じた値上げでで消費者余剰が生産者余剰に移行している。後者はGDPにカウントされるものであるが、国の経済厚生としては消費者から生産者に移転するだけなので、変わらないはずであり、国民/有権者の反感を買っている可能性が高い。
Posted by ブクログ
論旨が明確で、繰り返し説明されており、分かりやすい。日本では、生産性が欧米と遜色なく上昇しているのに、実質賃金は上昇していないとの主張。その原因は、大企業が将来の危機に備えて、内部留保を増やすなどしており、人材育成や賃金上昇に利益を充ててこなかったからとしている。それを無理に収奪的なものと結びつける必要はない気もするが、多数の気づきを与えてくれる良書。
Posted by ブクログ
海外との物価格差のからくりが気になり購入。(為替だけでは到底説明できない格差のため)
企業が溜め込んでいて、人件費に回さないからというのがその理由として説明されている。確かに理屈は通ると感じたが、では従業員である我々はどうすれば良いのか…
また、(結果的に)経済格差に不満を持つ層の耳に心地よい話のためか、本の帯紙などの売込み文句(私達の働き方は間違っていなかった云々)が上記に迎合する表現になっているが、それが本の質を落としかねないことは残念。
Posted by ブクログ
生産性と賃金 なぜ失われた30年になったのかを論考。生産性が上がっていないから賃金も上がらないと思われがちだが、筆者はそう思っていなくて、生産性は30%向上しており、企業が賃金に反映しなかったのが停滞の原因考えている。それについては説得力がある。散漫にならないようにか、主点がそこだけに絞られている。
Posted by ブクログ
消費者余剰と生産者余剰の話が興味深い。
日本は消費者余剰が多くお得感が高いが、消費者余剰はGDPには反映されない。
一方で生産者余剰を多くするとGDPに反映され、生産性も高くなるので、諸外国に比べてGDPや生産性が伸び悩んでいるのは、価格をあげてこなかった経営判断が原因である。
正直、消費者余剰の多い今の日本は住みやすい状態だと思うので、GDPや生産性に変わる尺度が必要なのではと思った。
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経済学には全くの門外漢ですが、読みやすい文章で丁寧な解説に何か理解できたような感触を持ちました.p197のまとめにあるように、「過去四半世紀の間、日本では、時間当たり生産性が3割上昇しましたが、時間当たり実質賃金は全く増えていません.むしろ実質賃金は、近年の円安インフレもあって、減少しています.ただ、実質賃金が増えなくても、長期雇用制の枠内にいる人は、毎年2%弱の定期昇給があるため、賃金カーブに沿って賃金は上昇しています.属人ベースで見ると、四半世紀で、賃金は1.7倍となります.このため、日本の大企業エリートは、1世代前に比べて、自分たちの実質賃金が全く増えていないことを十分に認識していません.多くの場合、1990年代末の課長や部長に比べると、現在の課長・部長の賃金は名目でも、実質でも減っています.」 団塊世代の小生はある意味で幸せな時代に会社生活を過ごしたのだと思っています.将来の日本の雇用制について本書の後半で議論がありましたが、ジョブ型への転換は難しいと感じています.
Posted by ブクログ
日本経済の現状を取り巻く構造的課題を概観できる一冊。とくに、アベノミクスと呼ばれた金融緩和が進められた10年間の結果と、企業が利潤を労働者の賃金上昇に反映せずに自社株買いや海外投資といった株主資本ばかりが膨らんだ格差拡大の構造を分かりやすく説明している。
2000年代からの構造不況から日本の企業生産性は30%も向上しているが、賃金水準は横ばい傾向であり、近年のインフレ基調から実質賃金はマイナスに陥っている。いわばこの収奪的システムが日本のマクロ経済を形成し、アベノミクスの金融緩和が成長戦略へと結びつかなかった原因となっている。そのため消費に回る可処分所得が減少するスパイラルに突入し、それらがアンチ・エスタブリッシュメントを叫ぶポピュリズム政党の跳梁を招いている。
とくにイノベーションのような技術革新・構造転換は収奪的性格を帯びており、包摂的な社会保障や雇用維持の仕組みとセットにすることが求められる。一方で経営者は短期的な株価上昇や配当維持といった成果を求められ、働き方改革やコーポレートガバナンスといった制約の増大によって企業業績の向上が労働者には反映されなくなっている。労働という価値が目減りする時代において、果たして個人はどのような対抗策を採っていけば良いのだろうか。
Posted by ブクログ
大まかな内容は理解できたが、細かい説明は難しく、あと何回か河野氏の本をよんでみないといけないかもなぁ。
こういう本は、若い世代の人が読んで、経済の流れや現状を把握するべきだと思う。
Posted by ブクログ
いろんな要素が上手くハマったのが30年の高度経済成長なら
いろんな要素が悪くハマったのが失われた30年
失われた30年を解説してくれる本
この先40年、・・・60年と続かなければいいけど
「物価高」「実質賃金が上がらない」とマスコミ・メディアは取り上げるけど
ストライキ、暴動、インフラ不全など起きる気配もないので
「なんとなく不安」をSNSやマスコミが煽っているだけに見える
経済が低迷しているのは明らかだけど
水道水が飲めて、コンビニが24時間どこでも開店していて、
夜中に女の人が歩けて、子どもたちだけで登下校できる国なんて
世界的に少ないので恵まれた環境にいることが理解できない
「足るを知る」の精神がないから、もっともっと欲しいが止まらない
国の制度、法人の利益構造etc 複数の要因が絡み合って
30年かけて落ちてきたのだからゆっくり少しづつ回復することを望む
Posted by ブクログ
失われた30年について考察。
さらにこれから目指すべき社会について言及。
数字の明示も有り難いが文章としての書き方がわかりやすく非常に読みやすい。
終盤にかけて主張が全面に出ていて面白い。
Posted by ブクログ
日本経済停滞の従来の議論である生産性の低さや成長戦略の無さといった話ではなく、大企業を中心とした実質賃金の引き上げが必要であるという指摘は目から鱗だった。
なぜこのような時代になっても終身雇用を維持するべきかについてはもう少し考えたい。
Posted by ブクログ
1.この本を一言で表すと?
7つの「死角」から日本経済の長期停滞を分析した本。
2.よかった点を 3~5 つ
・1998 年から 2023 年までの間に、生産性は累計で 30%ほど上昇していますが、実質賃金は横ばいのままです。(p24)
→初めて聞いた話で、かなり驚いた。
・コーポレートガバナンス改革の罠
(p46)
→新しい視点でコーポレートガバナンス改革を分析している。
・日本の長期停滞の元凶は、儲かっても溜め込んで、実質賃金や人的投資に消極的な日本の大企業(p66)
→これが第一章の結論かと思う。
・超人手不足社会が到来する中、介護や教育を含め、市場経済には必ずしも馴染まない仕事を担う人々の処遇につい
て私たちはもう一度考え直す必要があります。(p93)
→ここは政治の指導力が必要な部分ではないだろうか。
第 4 章 労働市場の構造変化と日銀の二つの誤算
1 安価な労働力の大量出現という第一の誤算
高齢者と女性という安価な労働供給の新たな出現は 2%インフレ目標の早期達成を阻んだ大きな要因になった(p140)
→ほかの経済アナリストが指摘しない新たな視点だと思う。
第 5 章 労働法制変更のマクロ経済への衝撃
1 1990 年代の成長の下方屈折の真の理由
2 再考なぜ過剰問題が広範囲に広がったか
→労働時間短縮が 1990 年代の低迷の真因だとする説は説得力がある。
第 6 章 コーポレートガバナンス改革の陥穽と長期雇用制の行方
3 漸進的な雇用制度改革の構想
→再チャレンジが容易にできる労働市場を目指すべきなのは全く同意。
第 7 章 イノベーションを社会はどう飼いならすか
2 野生的なイノベーションをどう飼いならすか
→イノベーションは本質的に収奪的である事に我々が気付かないといけないと思う。
2.参考にならなかった所(つっこみ所)
・消費者余剰の消滅とアンチ・エスタブリッシュメント政党の台頭
→経済とアンチ・エスタブリッシュメント政党のつながりがしっくりこなかった。
・ジョブ型を導入すると一発屋とゴマすりが跋扈(p220)
→なぜそうなるのか理由の説明がない。
3.実践してみようとおもうこと
・賃金を上げるために政治がすべき事はなにか?
5.全体の感想・その他
・日本では過去四半世紀、時間当たり労働生産性は 3 割上昇したが、時間当たり実質賃金は横這いという事実はかな
り衝撃的であった。
・4 章の内容から、外国人の技能実習生は見直すべきだと個人的には思う
Posted by ブクログ
流し読み。定期昇給に隠された実質賃金の低迷、バブル崩壊と労働法改正による労働時間減少の影響、収奪的なイノベーションが支配者だけの利益にならないように。
Posted by ブクログ
「失われた30年」で日本の生産性は上がっているのに、実質賃金が上がらないのはなぜなのか?
日本の賃金が上がらない理由をいくつもの事実から読み解く。
基本的に現在の新自由主義を批判する内容になっていると思う。
他の国に比べて、生産性は上がっているのに賃金はなぜ増えないのかを語っている。
賃金上昇を阻害する要因として
①メインバンク制崩壊に起因する企業の保守的体制
②雇用を全面的に守るために全員で低賃金を受け入れる
③①と②からくる企業の内部留保
④残業規制と週40時間規制による労働力の不足
⑤フリードマンとジェンセンの経済背策を是としたブルジョワたちの流れ
(株主優先理論とエージェンシー理論)
戦後日本が採用してきた政策が良きにしろ悪きにしろ現在の実質賃金の低迷を生んでいるわけで、格差の拡大と財政難を生んでいると感じる良書である。
ただ、その中で自分は何をしていくのか、何をしてきたのかという本質は問われると思う。
Posted by ブクログ
1990年基準では日本は生産性向上に比して実質賃金が上がっていない
⇔同年基準では生産性が日本ほど上がっていないフランス・ドイツは実質賃金上昇
※属人ベースでは定期昇給のある会社では賃金増加しているが、
国単位では増加していない
1990年初頭からの経済不況は、過剰投資の他に
40時間労働への移行による労働投入の減少も原因
→供給の制約による経済低迷の影響は、現状の働き方改革でも進行中
メインバンク制の崩壊
→企業が雇用維持のために利益剰余金を留保
→コーポレートガバナンスの強化で株主の利益を重視
限界生産性(労働を追加したときに増加する生産量の指標)を上げるべき
→汎用性があり新たな需要につながる分野のイノベーションへの投資など
⇔既存業務の代替・効率化によるコストカットなど平均生産性を上げるだけでは、
労働削減など家計への恩恵が少ない