高橋和夫のレビュー一覧
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私は、中東の政治について、全く疎いが、ニュース等で中東のことが知りたいと思ってた時に出会った、非常にわかりやすく、うれしい本。
中東は「国もどき」≒国家として体をなしていない国がほとんどという表現が、乱暴な表現のようでいて、「そうなんだろうな」と思える説明がしてあった。王様はたまたまその国の中心を治めているだけで、地方は地方で独自に有力者が収めている。王様は内政/外政ともに微妙な駆け引きを行い、国を治めている。という。日本の江戸時代も、ヨーロッパも国といっているが、地方は地方の文化があったということと同じだろう。
そんな「国もどき」の代表がサウジアラビアであり、そのサウジアラビアの、動きが最近、強国風になっている。。。
また、シリアについての記述など、民衆を殺戮しているアサドは気の触れた悪魔としか思っていなかったが、アラブの春の流れから、放っておくと自分の命がなくなるため、対応方法を冷静に選択すると、このような非情な結論となるということが分かった。色々な周辺国との駆け引きも「政治」的な判断が重々されていることが分かった。また周辺諸国のそれぞれの視点から見て、アサドを容認するかしないかの差もよくわかった。
正義は国の数だけあるし、利害関係でそれぞれの国は動いている。 -
Posted by ブクログ
チュニジアに始まったジャスミン革命が各国に飛び火し、世界情勢が予断の許さない状況になっている。こんなとき、該当国に関する、最近の書物に注目してみると、その書物自身も予断の許さない状況になっていることが良くわかる。このような変革を、どの程度事前に予期できていたかという、インテリジェンス能力が明るみに出てしまうのだ。
例えば、『チュニジアを知るための60章』という本。「政治外交と経済政策」という章を見ると、以下のような記述。
現在のチュニジアの安定が、ベン・アリー政治の強権的政治の産物としても、経済的豊かさを享受できる市民生活が営まれていることは認めなければならない。社会の安定は、欧州からの観光客を呼び込み、外国企業による直接投資などに好影響を与えている。今後チュニジア政治はどのように発展するのだろうか。経済発展とともに政治的民主化への期待も高まっている。
ちなみに、この本はチュニジアの歴史から文化まで幅広くカバーしており、読み物として非常に面白いのだが、2010年8月に発行されていることを考えると、上記の記述は少し残念だ。
一方で、『なるほどそうだったのか!! パレスチナとイスラエル』という本は、なかなか鋭い。以下「中東とイスラエル・パレスチナの関係」の章にあるエジプトの記述。
副大統領のムバラクが大統領に昇任し、その職に現在まで留まっている。エジプトはイスラエルとの平和条約は維持しているものの、エジプト国民の間では、対イスラエル友好政策は人気がない。両国間の観光や貿易も低いレベルにとどまっている。こうした両国関係は”冷たい平和”と形容されている。
ムバラクに対する国民の不満について示唆されおり、さらにこの後、エジプトのムスリム同胞団とガザ地区のハマスとの関係にも言及している。
本書を読むと、今回の一連の流れは、各国の固有の問題として起こった騒動が、情報伝達の発達によって連鎖しているのではなく、長年にわたる中東和平の問題と密接に結びついていることが良くわかる。また、本書の情報の見立てに間違いがなければ、今後、エジプト、ヨルダンの政情が変わると、ぎりぎりの均衡を保っていたイスラエルを巡って緊張が走る一幕を迎えることになるはずである。
さらに、本書で特徴的なのは、中東和平を巡るキーマンとしてノルウェーにフォーカスをあてていることである。ノルウェーは、イスラエルとは対ナチスへの被害者意識の共有から非常に関係が深い。そのうえ、天然資源に恵まれているため、石油供給源の心配をすることなく、PLOとも直接交渉をすることができたのである。そういった意味で、今後も、ノルウェーの動き方というのは注目に値する。
ちなみに日本は、パレスチナ自治政府に対する最大の援助国であるにもかかわらず、発言権はほとんどないほか、過去には大平・元首相(当時外相)が会談中に居眠りをして相手を激怒させるなどの失態もあったようである。
どのような状況であれ、国際的に存在感のあるプレーヤーであるために必要なのは、認識であり、姿勢である。関与しようとの姿勢がなければ、機会はただ過ぎ去っていく。インテリジェンスのある書物は、そんなことも示唆している。 -
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2016年(平成28年)の書籍であるから、既に10年の歳月が流れているが、今(2026年)を予測したかの様な内容だ。世界はアメリカによるイランへの攻撃でホルムズ海峡が封鎖され、石油という資源に大きく頼っている現状が改めてリスクであると気づいたし、世界経済崩壊の足音が響き始めている。正に本書タイトル「中東から世界が崩れる」と言わんばかりの状況を目の当たりにしている。それもこれもアメリカ大統領トランプ氏の発言やSNS投稿によるものではあるのだが、中東という薄氷の上をあっちに行ったりこっちに行ったり、日本を始めとした「中東の石油」に頼る各国は氷の上で滑って転ばない様に右往左往しているかの様である。因みに数日前に停戦合意と言いながら、攻撃をやめないイスラエル。解放されたのはほんの一瞬、再び閉じられるホルムズ海峡。一体いつになったら安定は訪れるのだろうか。ここで言う安定とは、中東諸国の市民の安全だけでなく、世界経済に欠かすことのできないエネルギー資源「石油」の安定も含んでいる。
本書は中東地域を巡る主要なプレイヤーであるイラン、そしてサウジアラビアに着目して、中東情勢を紐解きながら、将来の予想や日本の採るべき政策について意見を述べていく内容となっている。日本は過去の歴史から、イスラム世界に於いて、信頼できるパートナーとして一定のプレゼンスを発揮してきた。今回のイランへの攻撃の最中でも日本のタンカー数隻がホルムズ海峡を突破している。そこにどの様な取り引きがあったかは判らないが、今回の件で改めて注目されたのはイランにとって日本はかつてより友好国であったという事実であった。因みに一時期は両国の間には石油だけでなく自動車部品や医療関連の取り引きがあった。これも核開発疑惑の経済制裁により多くは停滞してしまった。今なお貿易額は低迷を続けている。だが日本は石油の輸入をアラブ首長国連邦やサウジアラビア、クウェート、カタールといった中東諸国に頼っており、その割合は全石油輸入量の95%にも上る。よってこの地域の安定が崩れる事は、正に日本経済にとっての崩壊に繋がりかねない。
そして今新たな脅威となっている中国の存在。同じ石油輸入国としてだけでなく、世界中に影響力を及ぼそうとする中国の存在は日本のプレゼンスを相対的に下げるだけでなく、世界の軍事力の均衡・バランスにとっても、大きな脅威となっている。
本書は国としての実力として、イラン・トルコ・エジプトを挙げ、サウジアラビアについては、アメリカの及ぼす力はあるものの、国としては脆弱で、この地域の主要なプレイヤーにはならないものとして扱う。寧ろ国を持たない最大の民族であるクルド人、そして歴史的に繰り返し領土的野心を見せてきたロシア、前述した中国、常に不安定さを助長させる役割を担うシリアなど、次々と取り上げて、中東情勢を解りやすく説明している。また中東各国から敵対視されるイスラエルも含め、この地域が抱える不安定さと問題の諸元について、できる限り単純化して解説しようとする。そこには単純な宗教できない対立だけでは説明しきれない、各プレイヤーの事情が盛りだくさんである。
正に10年経った今も崩壊の起点になり得るこの中東情勢について、おさらいの意味も含めてタイミング良い一冊である。 -
Posted by ブクログ
たまたま二週間ほど前に、同じテーマに関する著者の「生」講演を夫婦二人で聴いて来たばかりだったこともあり、その復習も兼ねて読んでみた。講演内容ともピタリとシンクロし、まさにハマス、イスラエル、パレスチナ、ガザの「今」を解説する極めて時宜を得た学びに繋がった。
先ず何よりも、分かり易い。
パレスチナ問題には予てから人並み程度の関心は持って来たつもり。いろんな本や記事も読んで来たが、どれも今一つ「すとんと腹に落ちる」感触が得られなかった。
それに対し、本書は初めて「すとん」と落ちた。細切れにしたテーマの切り口や語り口が巧みなこともあるだろう。これならば中高生でも十分に咀嚼出来る解説になっているのではないだろうか。
ハマスのイスラエル奇襲勃発から間もなく丸一年。出口の見えない戦争の終結に向けて、我々日本に、そして一人の日本人にすぎないオレ自身に出来ることはあるのだろうか?少なくとも、関心を失わないこと。そして、争いの双方の立場を僅かなりとも理解しようと試みる営みだけは続けることが肝要だ。