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Posted by ブクログ
「中東イスラム世界の諸問題には、共通した構図があるように思えてならない。 一つめは、イラクやシリアのような人工的につくられた〝国もどき〟が持つ本質的な矛盾である。つまり本人たちの同意なく、多くの宗派・民族の集団が無理やりに一つの国境線に押し込まれたという現実である。 二つめは、アフガニスタンやイエメンが経験したような、伝統社会から近代社会へと移行する際の困難さである。両者の間を隔てる深い亀裂がある。アフガニスタンやイエメンは、この亀裂を無理をして一気に越えようとした。それがともに失敗し、亀裂に落ちて出口のない内戦状態から抜け出せないでいる。 こうした失敗を見ると、これまで秩序を保ってきた伝統社会のあり方にも敬意を払う必要がありそうだ。」(『中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌 (NHK出版新書)』(高橋 和夫 著)より)
Posted by ブクログ
私は、中東の政治について、全く疎いが、ニュース等で中東のことが知りたいと思ってた時に出会った、非常にわかりやすく、うれしい本。
中東は「国もどき」≒国家として体をなしていない国がほとんどという表現が、乱暴な表現のようでいて、「そうなんだろうな」と思える説明がしてあった。王様はたまたまその国の中心を治めているだけで、地方は地方で独自に有力者が収めている。王様は内政/外政ともに微妙な駆け引きを行い、国を治めている。という。日本の江戸時代も、ヨーロッパも国といっているが、地方は地方の文化があったということと同じだろう。
そんな「国もどき」の代表がサウジアラビアであり、そのサウジアラビアの、動きが最近、強国風になっている。。。
また、シリアについての記述など、民衆を殺戮しているアサドは気の触れた悪魔としか思っていなかったが、アラブの春の流れから、放っておくと自分の命がなくなるため、対応方法を冷静に選択すると、このような非情な結論となるということが分かった。色々な周辺国との駆け引きも「政治」的な判断が重々されていることが分かった。また周辺諸国のそれぞれの視点から見て、アサドを容認するかしないかの差もよくわかった。
正義は国の数だけあるし、利害関係でそれぞれの国は動いている。
Posted by ブクログ
2016年(平成28年)の書籍であるから、既に10年の歳月が流れているが、今(2026年)を予測したかの様な内容だ。世界はアメリカによるイランへの攻撃でホルムズ海峡が封鎖され、石油という資源に大きく頼っている現状が改めてリスクであると気づいたし、世界経済崩壊の足音が響き始めている。正に本書タイトル「中東から世界が崩れる」と言わんばかりの状況を目の当たりにしている。それもこれもアメリカ大統領トランプ氏の発言やSNS投稿によるものではあるのだが、中東という薄氷の上をあっちに行ったりこっちに行ったり、日本を始めとした「中東の石油」に頼る各国は氷の上で滑って転ばない様に右往左往しているかの様である。因みに数日前に停戦合意と言いながら、攻撃をやめないイスラエル。解放されたのはほんの一瞬、再び閉じられるホルムズ海峡。一体いつになったら安定は訪れるのだろうか。ここで言う安定とは、中東諸国の市民の安全だけでなく、世界経済に欠かすことのできないエネルギー資源「石油」の安定も含んでいる。
本書は中東地域を巡る主要なプレイヤーであるイラン、そしてサウジアラビアに着目して、中東情勢を紐解きながら、将来の予想や日本の採るべき政策について意見を述べていく内容となっている。日本は過去の歴史から、イスラム世界に於いて、信頼できるパートナーとして一定のプレゼンスを発揮してきた。今回のイランへの攻撃の最中でも日本のタンカー数隻がホルムズ海峡を突破している。そこにどの様な取り引きがあったかは判らないが、今回の件で改めて注目されたのはイランにとって日本はかつてより友好国であったという事実であった。因みに一時期は両国の間には石油だけでなく自動車部品や医療関連の取り引きがあった。これも核開発疑惑の経済制裁により多くは停滞してしまった。今なお貿易額は低迷を続けている。だが日本は石油の輸入をアラブ首長国連邦やサウジアラビア、クウェート、カタールといった中東諸国に頼っており、その割合は全石油輸入量の95%にも上る。よってこの地域の安定が崩れる事は、正に日本経済にとっての崩壊に繋がりかねない。
そして今新たな脅威となっている中国の存在。同じ石油輸入国としてだけでなく、世界中に影響力を及ぼそうとする中国の存在は日本のプレゼンスを相対的に下げるだけでなく、世界の軍事力の均衡・バランスにとっても、大きな脅威となっている。
本書は国としての実力として、イラン・トルコ・エジプトを挙げ、サウジアラビアについては、アメリカの及ぼす力はあるものの、国としては脆弱で、この地域の主要なプレイヤーにはならないものとして扱う。寧ろ国を持たない最大の民族であるクルド人、そして歴史的に繰り返し領土的野心を見せてきたロシア、前述した中国、常に不安定さを助長させる役割を担うシリアなど、次々と取り上げて、中東情勢を解りやすく説明している。また中東各国から敵対視されるイスラエルも含め、この地域が抱える不安定さと問題の諸元について、できる限り単純化して解説しようとする。そこには単純な宗教できない対立だけでは説明しきれない、各プレイヤーの事情が盛りだくさんである。
正に10年経った今も崩壊の起点になり得るこの中東情勢について、おさらいの意味も含めてタイミング良い一冊である。
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