高橋和夫のレビュー一覧
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「またミーハーな本、選んじゃったよー」と思いながらワクワク読むが「あれ?なんか古い」「ギャー!2019年発行じゃねーか」バイデン以前の第一期トランプ政権だった。でもイランから見たサウジアラビア、イエメン、シリア、もちろんアメリカ。すごいわかりやすくて読んで悔いなし。アメリカのこともサンダースとか後継者とか、もっと知りたくなった、節目の年齢の夏に相応しい良い本だった。人生半分生きたけど、死ぬまでに戦争なくなるんだろうか。。。アメリカのイスラエル支持者も変わってきてるということは希望だった。もっと早く読んでいれば良かったようで、今読んだからこその★5つ。
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書店で会計をするときに新書で1500円を超えていて少し驚きましたが、中東情勢を理解するための入門書として良書だったと思います。
本書を一読しただけでは、頭を素通りしてしまっていた情報も多かったですが、NHK BSスペシャルの「ネタニヤフと極右 ~戦闘拡大のジレンマ~」を見た後に、もう一度読み直すとイスラエルやネタニヤフ首相の動きについても少し理解が深まったように思います。
また同時に、紙面の都合上仕方がないとは言え、イスラエルの国内情勢についてももう少し詳しく書かれていると、イスラエルに対するイメージもまた違ったものになっていたかと思いました。 -
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テレビでコメントする学者として知っていた。どうせ権力側に都合のいい御用学者だろうと思っていた。ところが「朝日新書」である。それも普通の新書2冊分の厚さ。読み進めるとガザから始まり南アのアパルトヘイトへ。面白い。ぐいぐい読める。
ヒズボラ、アサド政権、イランへと話は進む。それぞれに長い歴史から解説されるのでほんとに面白い。
中東の複雑さや、関わっている米欧の、平穏より利権に走る様が物語として展開される。
面白さの原因は、学者の割に実は推測を大胆に提示していることにあるのではないか。
先に読んだ早尾貴紀「希望のディアスポラ」は行動する学者の書いたもので、高橋和夫氏の本は広く深くまさしく解説の書であった。しかしどちらもが世界史を教科書的な支配者側の視点でなく、逆の立場から見ることの重要性を述べているという共通点があると感じた。
ほぼ同時期にこの2冊に出会えたことは幸運であった。 -
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イランとアメリカがなぜここまで揉めるのか、イスラエルはなぜイランと揉めるのか等々、中東の政治状況の基本的な問題について、知っているようで分かっていない状況を整理したいと思っていたら、なんとアメリカがイランに攻撃を仕掛けた直後に本書が発売されるというタイミングの良さ。これは読むしかないと手に取りました。
本書はイランという国家の成り立ちから1970年代の中東戦争、冷戦期、そしてイラン・イラク戦争を経てアメリカの対テロ戦争、最後にオバマ・バイデン・トランプの時代に至るまでの経緯を分かりやすくまとめてあります。
かつてアメリカがイランの石油利権を握るため、親米政権を樹立させて武器供与までするほど肩入れしていたのに、親米政権がホメイニ師の革命で倒されると、大使館人質事件などを経て一気に「イラン=悪」という位置づけに変化しました。しかし、その後もイラクのフセイン政権や、ソ連との確執の中でアメリカがその時々の都合でイランに近づいては、袖にするというご都合主義でイランを振り回してきたことが良くわかります。
また、イランはかつての四大文明の時代から世界の歴史を担ってきたという歴史大国としてのプライドを持っています。日本から中東を眺めると、アラブとペルシャの違いがよく分かりません。著者は”アラブ人とペルシャ人を混同することは、日本人と中国人を混同するのと同じぐらいの大きな間違い”と表現していて、その例えは非常に腑に落ちました。そんなイランのプライドや、アメリカに対する猜疑心を全く理解していないトランプが、「ちょっとアメリカがその気になったら頭を下げてくるだろう」みたいな感じで手を出したのでしょうが、ローマ帝国や、モンゴル帝国の時代からそれら大国と鎬を削り、したたかに生き残ってきたイランが早々に折れるわけもないのが良くわかりました。
歴史上の位置づけから、近現代史に至るまでの流れが非常に分かりやすくまとめてあります。ただ、分かりやすくといっても複雑に絡み合う地域の話だけに、新書で500ページ近いボリュームです。特にアメリカの内政と対イラン政策の絡みを交えた近現代史あたりの章は興味深く読み通せました。 -
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とても分かりやすい、中東情勢の入門書でした。
歴史的にも内政によって中東政策が振り回されてきた米国、米国に対して愛憎入り乱れる感情を抱くイラン、裏でコソコソ動き回る悪の権化イスラエルの3カ国の長く複雑な歴史を俯瞰している良書です。
筆者はイランのルーツを日本の京都に喩えていますが、古代から文明を担ってきたという矜持がありつつも、その後奪われた苦難の歴史から外国に対する猜疑心が根深いとの事。ただ、米国に対しては長年の恨みの蓄積もありつつも、上手く取り入りたいという相反する思惑もあり、米国とイランの内政状況が変わる度に、お互いがうまく交わったり離れたりする事を繰り返してきた歴史があるのがよく分かります。
足元の中東情勢に関しては、その関係を引き剥がそうとしているイスラエルがまずあり、その甘言で誤った方向に進んでしまったトランプという事でしょうが、歴史は繰り返すというのは正にこの事ですね。 -
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2023年の10月7日に起きたパレスチナ・ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃。それに報復するかたちでイスラエルはパレスチナへの攻撃を現在まで続けている。
この攻撃は1948年の建国時に起きたナクバを超える最も大きな攻撃として、世界中で批判されている。
だが、これほどの人道的危機を巻き起こすイスラエルという国に対して国内の良識あるユダヤ人からの批判や、イスラエル外のユダヤ人はどう見ているのだろうか。
本書は建国されてから現在までにイスラエルがどのように変わっていったのかが記されている。
そして2026年3月現在起きているアメリカとイスラエルによるイランへの国際法違反と言える攻撃がなぜ起きたのかにまでリンクする部分もあり、この数年、周辺諸国に緊張を投げかけるイスラエルという国の背景が語られていく。
イスラエルという国は1948年からパレスチナに向けて度重なる攻撃を行ってきた。
過激な主張がある一方で、良識あるユダヤ人も当然いた。外部から見ているとシオニストたちが全て悪いように見えるのだが、実はそうでもなくてシオニストの中にも当然パレスチナ人への攻撃に対して批判する声はあったようだ。
それはイスラエルという国が建国されたときにパレスチナ人を追いやったということに対してユダヤ人のなかにも罪悪感を抱いていた人々が多かったこともあるようだ。
だが、そういった良識的なシオニストやユダヤ人たちはこの十数年で声を上げることが出来なくなっていったという。
特に2010年代に入ってからはパレスチナ人を含むアラブ人を人とは見ないように考える人が増えていったと記される。
それもあって現在ではイスラエル内ではパレスチナを激しく攻撃し、パレスチナ人を追い出すことに賛同するユダヤ人が80%近くもいるらしい。
その背景の一つにはイスラエルによる歴史教育に、イスラエルという国が元々ユダヤ人の国である。それをアラブ人が奪ったという教育があるからのようだ。
ユダヤ人は選ばれた民であるという選民思想も若い世代に植え付けられてきた。それが現在のイスラエルを反映しているようである。
だがそういった世論はなぜこの十数年で変わっていったのか。
複数の理由があるが、その一つにはこの十数年でポピュリスト政治家による過激な発言が影響してるとのこと。
世界中で極右政党が票を集める傾向が強まっているが、イスラエルではベンヤミン・ネタニヤフを党首とするリクード党の長期政権からは特にその影響が強いらしい。
だが市民からは反対の声などは挙がらないのだろうか、と疑問に思うかもしれない。
それが挙がらないとのこと。市民はイスラエル内の政治や社会変革への興味を失っており、市民を縛るような政策にも反対しない。
例えば、イスラエルは世界トップクラスの兵器開発やサイバーセキュリティ企業を抱えている。兵器やセキュリティ技術への技術開発の実験に使われるのはパレスチナ人だけではなく、イスラエル国内の市民たちにも使われている。
NSOグループが開発した世界最凶のスパイウェアと呼ばれる"ペガサス"がある。このスパイウェアは侵入するとデバイスのあらゆる情報にアクセスが可能になる。このスパイウェアを権力側が勝手に市民に用いてたりする。
諸外国では人権侵害として問題になるようなことや、法整備が必要なこともイスラエルでは勝手に行われる。
市民たちは厳しい公安国家社会化に大きな反発などを抱きにくくなってる。それで平和になれるならOKくらいに感じているんだとか。
この辺りは日本にも近い部分があるようにも感じた。
更にイスラエル内でのパレスチナへの擁護論などを徹底的に潰すような法律を通してきたことも大きい。
スパイウェアでの監視や、そもそも声を挙げにくいシステムを作り上げる。
それもあってイスラエルに住むユダヤ人が、パレスチナ人を助けたり、パレスチナのために声を上げたりすると「反ユダヤ」「ナチス」というレッテルが貼られる。
この「反ユダヤ」や「ナチス」という言葉もイスラエルは巧みに使っている。
イスラエル国内ではホロコーストの歴史も忘れ去られているらしい。それもあってか「反ユダヤ」「ナチス」という言葉をイスラエルに協力的ではない人々に投げかける言葉として使われている。
イスラエルは、自国に反対する意見は何でも「反ユダヤ」「ナチス」とレッテル貼りする傾向があるようだ。
イスラエル外の国や人々は、イスラエルが投げかける「反ユダヤ」や「ナチス」という言葉の持つ意味は重く受け止める。だが、イスラエルはこの認知のズレを狡賢く使ってる。
それもあって国内では過激なユダヤ人がリベラル、良識なユダヤ人に対して「反ユダヤだ!」なんていう笑い話みたいな出来事も多々あるんだとか笑
さらに絶句したのが、イスラエルはこの数年でその「反ユダヤ主義」を掲げているようなネオナチや極右思想の指導者、政党たちとの協力を率先して行ってきたということだ。
本来、協力関係など築くことなど無理そうに見える。だが、そういった政党や指導者たちは反ユダヤと同時に反アラブも掲げており、そこでの利害が一致しているからOKなんだそうだ。
更にイスラエル内では「ヒトラーは正しかった」なんていうトンデモ論も飛び交っている。ヒトラーのやり方は99%正しかったが、唯一1%の間違いはユダヤ人を標的にしたことだ、という考えが広まっている。
ネタニヤフはこのトンデモ論をイスラモフォビアに置き換えて使った。
何でもネタニヤフ曰く、ヒトラーにホロコーストを行うように唆したのは第二次世界大戦当時のエルサレムの最高宗教指導者(グランド・ムフティ)であったハッジ・アミーン・アル・フサイニーなんだとか。
ヒトラーは本当はユダヤ人を国外追放で済まそうとしてたのを、フサイニーに唆されてユダヤ人絶滅にシフトした、と。
このトンデモな陰謀論を使って、パレスチナ人=ホロコーストの裏の首謀者であるというロジックでパレスチナへのジェノサイドを正当化しようとした。
イスラエルのここまでの状況にウンザリする。だが、現在まで続くパレスチナへの激しい攻撃や、過激な政策はいずれ止めざるを得ないことも記される。
SNSでイスラエルのジェノサイドは世界中に発信された。
多くの人々や国からイスラエルに対して批判的な声が上がり、デモやBDS運動などが以前よりも活発に行われるようになっている。イスラエルはそれらの声を無視したり、反ユダヤと批判しているが、そういったカウンターが効果を与えるフェーズは過ぎたようだ。
しかし、ここにきてイスラエルは念願叶ってアメリカを巻き込んでのイランへの攻撃という最悪なカードを切ってしまった。
世界中に影響を与えるこの戦争がどのような影響を与えるのだろうか。
イスラエルの動向は今後もしっかりと注視したい。 -
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どうしてトランプ大統領が、今中東に対して軍事的行動に出るのか。
イスラエルのネタニヤフ首相とトランプ大統領の関係性がどうして親密なのか。
イランとアメリカの対立軸の背景には何があるのか。
サウジアラビアという国家の存在とアメリカとの関係性は。
アメリカ政治にどんな変化が生まれているのか。
こういった切り口から、アメリカイスラエル、そしてイランの対立がどうして、現状に至っているのかを、分かりやすく解説した高橋和夫さんの新書です。
イランに、アメリカとイスラエルがミサイル攻撃を行い、
イランが各地に反撃を行う意味は何なのか?
ざっと知るに、わかりやすい読み物と思います。
もちろん、地政学、軍事技術、経済環境など、この本に書かれている前提から変化している部分はあります。
ただし、大きなフレームとしてはそう変わっておらず、日本のテレビ新聞を見るよりも、よほど全体像が掴めます。
この本を読んで分かることは、アメリカイスラエルとイランの戦争が、そう簡単に解決することはないだろうという感触です。
多くの日本人に、イランとか、中東、そしてアメリカの社会は、何を求めているのだろうかと、考える余裕を持っていただくきっかけになる読書体験になることは、間違いないと思います。 -
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パレスチナとイスラエルの問題は宗教戦争だと誤解しがちですが、
ドラマ地面師のセリフではないですが、結局は陣取り合戦なのだな、と。
そこに「国」とか「民族」といった概念が入ってきてもうぐちゃぐちゃ…
それぞれに、それぞれの歴史があるし、同じ国に住んでる同じ民族でも目指すところはみんな同じではない。
イスラエル人とパレスチナ人だけの問題にせずに、その背景や関係各国のあり方・変遷にまで触れられてて非常にわかりやすい本だったと思います。また日本の外交にも触れられてて、改めてこの問題は日本にも深く関係しているんだな、と気付かされました。
個人的には「パレスチナ人が可哀想だから」とか「イスラエルの行動は人道に反する」なんて理由で行動する必要はないと思ってます。でも行動したほうが、巡り巡って自分にメリットがあるなら、行動すべきだなと(外交ってそういうものだと思ってます)
他にも著作があるようなのでそれも読んでみたいです
「知識が行動に変わる時、世界は動く」
この本の中で一番ハッとさせられた一文です -
Posted by ブクログ
非常にわかりやすいパレスチナ問題 ・19世紀末に、民族主義、帝国主義の流れで、ヨーロッパのユダヤ人が建国を目指してシオン山のあるパレスチナに移住「シオニズム」。そもそも、ある宗教の信者であることをもって「○○人」と分類されるのはユダヤ人をおいてない。神に選ばれた人達であるという認識であり、ユダヤ教では布教は行わない。
・搾取なき社会という理想を目指すという理想もあり、その地に移住したら農耕も自分たちでするので、現地の人と共存することは難しい。
・パレスチナはもともとオスマン帝国が支配しており、複数の宗教・人種が問題なく共存していたが、第一次大戦で連合国側のイギリスが、同盟国側のオスマン帝国を混乱させるため、アラブ人には「フセイン・マクマホン書簡」で独立を約束し、ユダヤ人には「バルフォア宣言」で国家建設を約束し、フランスとは「サイクス・ピコ協定」で大戦後の領地分割を約束した。大戦後は、国際連盟の委任を受けてイギリスがパレスチナを統治した。ユダヤ人の建国が許されたが、シオニズムは低調であった。
・第二次世界大戦では、ナチスによるユダヤ民族の排除・虐殺が行われた。中東自体は、イギリス・フランスに対抗するドイツ寄りであり、ドイツの敗北により虐殺を免れたパレスチナのユダヤ人は、大戦後、反イギリス攻撃を開始した。終戦後、国際連合はユダヤ人に同情的な国際世論の中で、パレスチナの再分割決議を出した。シオニストはこれを受け入れ、1948年にイスラエルの建国を宣言した。ただし、従来の居住地を大きく上回る領土がユダヤ人側に与えられ、パレスチナ人やアラブ側はこれを拒否した。
・アラブ諸国側は反イスラエルで第一次中東戦争を起こしたが、これを機に中東最大の軍事力を有するイスラエルがパレスチナを凌ぎ、徐々にパレスチナの居住地を奪っていた。これに対抗する運動はインティファーダ「大衆蜂起」と呼ばれ、レバノン、エジプト、ヨルダン、シリア、イラン、イラクなどの周辺諸国やアメリカ、ノルウェーなどの各国を巻き込んで紛争が継続している。
・EUは徐々にイスラエルに批判的となっている。日本は1973年の第4次中東戦争の際にイスラエル側、非友好国と判断され石油の輸出をストップされた。ペルシア国のイランからの輸出は続いたが、このときアメリカに助けを求めたが断られ、田中首相の判断で独自に親アラブの立場を鮮明にした。
・日本はパレスチナ自治政府に対する最大の援助国の一つであるが、外交の怠慢・失態により和平推進カルテット(国連、EU、アメリカ、ロシア)に参加できていない。 -
Posted by ブクログ
「中東イスラム世界の諸問題には、共通した構図があるように思えてならない。 一つめは、イラクやシリアのような人工的につくられた〝国もどき〟が持つ本質的な矛盾である。つまり本人たちの同意なく、多くの宗派・民族の集団が無理やりに一つの国境線に押し込まれたという現実である。 二つめは、アフガニスタンやイエメンが経験したような、伝統社会から近代社会へと移行する際の困難さである。両者の間を隔てる深い亀裂がある。アフガニスタンやイエメンは、この亀裂を無理をして一気に越えようとした。それがともに失敗し、亀裂に落ちて出口のない内戦状態から抜け出せないでいる。 こうした失敗を見ると、これまで秩序を保ってきた伝統社会のあり方にも敬意を払う必要がありそうだ。」(『中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌 (NHK出版新書)』(高橋 和夫 著)より)