佐藤真理子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
確か実家にこのハードカバー版があって子どもの頃目にしたことはあったけど、はてしないという題名に途方もなさそうな感じを受けてページを開くこともなく敬遠してしまっていた。
大人になった今、文庫本を購入して読んでみたら、これは大人向けの児童書というか、私にとっては大人になった今だからこそ出逢えて良かったと思う内容だった。
下巻では、バスチアンの感情や望みが映し出された世界が美しくもあり、恐ろしくもあった。
バスチアンが万能感に酔いしれて段々記憶だけでなく大事なものを失っていく姿には、アトレーユやフッフールと一緒にヒヤヒヤしたり落胆したりしながら読み進めた。
バスチアンがずっと欲しかったもの、押し殺してきた感情、それらを見失ったまま冒険を続け、ファンタージェンで創造主になって賞賛を得ても満出されるなく、代わりを求めて彷徨い続けた。
そんなバスチアンの心の穴が、アイゥオーラおばさんの家で過ごすうちに満たされていき、真に欲しかったものが浮き彫りになっていく場面は胸にくるものがあった。
物語の至るところにエンデからのメッセージを感じた。
-
Posted by ブクログ
バスチアンがファンタージエンの世界に入り込み、物語の中での冒険が始まる。
わくわくするような色んな風景や生き物が出てくるけど、ただ楽しいだけでは読めない。
ファンタージエンでバスチアンの望みが一つ叶うごとに、バスチアンは現実世界での記憶を一つずつ失くしていく。
記憶を失うごとに、何かを望み続けることが難しくなっていく。
力や権力を得るごとに、自分が本当は何者だったのか分からなくなっていく。
本当にものすごい設定だと思った。
最近流行りの異世界転生ものとは根本的に違う。強いメッセージ性を感じる。
物語の世界は、現実と対立するものではなく、現実をより豊かにする力を持っているはず。
想像力なくして人間の発展はないのだ。
手元に置いておいて、何度も読み返したくなる名作。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいじめられっ子の主人公が本の中の世界を救い、大切なものを見つけて現実世界に戻る物語
この本の異質さ、素晴らしさは、主人公が強力な力を手にして世界を救った後に、大切なものを失い、取り戻すパートにあると思う
太っていてかっこよくもなく、いじめられている現実から、本の中の世界ではたくましくかっこいい姿に変身し、世界を救う、そんな物語の中に入ったら、元の世界に戻りたくなくなる、誰しもそんな気持ちには共感できるのではないだろうか
しかし、逃げ出したくなる現実の中にこそ、本当に大切なものがある
現実世界で自分の物語に向き合うとする主人公の決意は、子どもだけでなく大人になった私にも力を与えてくれた
自分が特に好きなのは、以下のセリフ
悪も善も、美も醜も、愚も賢も、すべてそなたにとっては区別はないのだぞ
これがこの本に流れているテーマと感じる
二項対立で価値判断しがちな世の中だが、実際にはそれは単にマジョリティの物差しに過ぎず、しかも時代とともに変わる
だからこそ、比較ではなく自分の物語を生きなくては、と思わせられる -
Posted by ブクログ
ネタバレ会社の同僚と、エンデの話になった。私にとってエンデは、小5の頃に出会って夢中になって読み漁った思い出のある作家であるけれど、大人になって『モモ』を読み返して以来、疎遠になっていた作家でもあった。同僚が『はてしない物語』を絶賛している話を聞きながら、子供の頃、自分もバスチアンのように物置で本を開きながら本の世界に入って冒険できたらどんなにいいだろうと憧れたことを思い出し、本棚から久しぶりに引っ張り出して25年ぶりに読んでみた。
上巻はとても楽しくワクワクしながら頁をめくっていたのだが、下巻になって、読み進めるのが苦しくなった。バスチアンの姿に、自分自身を重ねてしまったのだ。誰かに認められたい、人から羨ましいと思われたい、美しくなりたい、賢くなりたい……。子供の頃はそんなことも考えず純粋に冒険譚を楽しんでいたと思う。でも大人になって、どれだけありのままの自分をそのまま認めて愛することが難しいか、知ってしまった今では、バスチアンの苦しみがより身に染みてしまった。そしてバスチアンが旅の終わりを迎え、生命の水にたどり着き、現実世界に帰ってくるシーンでは気づいたら自分のことのように泣いてしまった。私自身、今の自分自身を、ありのままに見つめて、愛せているだろうか?
確実に小5の私はそんなことを思わず読んでいたと思うが、それでもあの頃もこの本を読んでエンデにハマったのは事実で、あの頃ファンタジーエンを夢中に冒険してた少女が大人になって、同じ物語を全く違った目線で楽しむいい経験ができたと思う。今読み返してよかった本だと思う。
蛇足だがたまたまこの前に読んだ本がワイルドの『ドリアングレイの肖像』だったが、まさかの同じような題材の本(自分自身の内面に目を向ける本)を立て続けに読むことになり、本と本がリンクする不思議も久しぶりに。というよりもどちらも自分のお気に入りの本のため、自分の好みなのかもしれないが。 -
Posted by ブクログ
ネタバレファンタージエンに行ったバスチーユの物語。危うさを感じながらバスチーユの物語を読み進める。バスチーユの考えや判断がだんだん良くない方に傾いている不穏さが満ちてくる。スターウォーズのアナキンがシスに堕ちてしまうところに似て、苦しい。どうしてこうなってしまったんだろうと思ってももう戻れないところに来ている。しかも多くのことを忘れてしまっている。どうやって人間の世界に戻れるのかわからない。わからないままにどこへ向かえばいいのか、何をなせばいいのか、投げてしまいたくなるような世界。バスチーユとともに旅を続けるアトレーユとフッフールが最後は助けてくれるが、やや呆気なさも。あの辛い辛い辛いトンネル部分が面白さになる。