高橋啓のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
最初は7つの独立した短編に見えるが、最後の「第七」で全てが繋がる。哲学者でもある著者らしい、鋭く冷徹な視点で人間の限界を執拗に攻める。
2025年最後に良い本を読んだ!
第1話「エリセエンヌ」
SF風に楽しめるが、過去の自分と今の自分が連続した存在ではなく、ただ積み重なった層の上に今が乗っているだけ——という存在の不連続性。
第2話「木管」
元ロックスターの音楽をめぐる物語。他の話に比べて少しエンタメ寄りで異色だが、やはり人間の行動は「人間の枠」から逃れられない。
第3話「サンギーヌ」
寓話的で読みやすい。物質と反物質、量子もつれのように、我々の目にはそれぞれ別の物質のように見える世界の -
Posted by ブクログ
圧巻。現代世界を「認知市場」という観点から社会的分析を行うブロネールの筆致に面食らう。
不安や心配という人間の根源的な感情を取り込みながらソーシャルネットワーク世界は無限に肥大化していく。
ナチュラルでピュアな失われた黄金時代を求めるルソーを源流するとする一派への批判、トランプを筆頭とするネオポピュリズム的言説をまとう人々への分析など、非常に多角的で鋭い論考を堪能できる。主権を持った政府側の一方的な上からの意図的な支配、それに対する素朴な民主主義を掲げる人々の被害者視点からの下からの反抗、両者の分かりやすい対立では収斂しない短期的な利益へと傾倒してしまう「人間」という種に対する批判的分析。
構 -
Posted by ブクログ
終盤のある章の終わりでしばらく放心状態になって動けなくなり、物語の最後の1文で泣き出しそうになった。
すごかった……暫定今月の1位。この著者の別の本も絶対読む。最近読んだミア・カンキマキさんの「眠れない夜に思う〜」と同じように史実に著者の考えや生活が挟み込まれる形式だが、当たり前だがそういうエッセイみたいなのとは全くもって別物。事実だけでも読み応えがある上に、ちゃんと全体が「小説を書くこととは何か」という作品になっている。事実のちょっと手前に著者がいて、その著者と一緒に事実を目撃している感じ。書いているうちにその事実と一体化していく作者を見守る読者になる。いや、、すごかった。
なぜ私たちはナチ -
Posted by ブクログ
20年前、彼らはヒロシマとナガサキを知っていた。
読み始めてすぐに一旦停止。
内容が内容なだけに、歴史の勉強のやり直し。
そうしてから読んでも、読むのに時間がかかった。
時系列で話が進まないし、作者の感情も入りすぎているように思う。読みにくい。
本当にこういった作品は好きじゃない!!
だけど・・・。
その時の情勢が目に浮かぶ・・・。
昔の話なのに(1世紀も経っていない。途中で作者が言っていた)その場の臨場感がそのまま伝わる。
20年前のボクはプラハの街を歩いたのに、そういった歴史を一切知らなかった。
言いたいことは、天に星、地に石コロの数ほどあるけれど・・・
ボクは、この英 -
Posted by ブクログ
アウシュヴィッツに大量に送られてくるユダヤ人をまるでオーケストラの指揮者のように振り分ける-この本では、収容所に到着してすぐ行われる選別を「オーケストラを奏でる」と多くのシーンで表現されている。異次元の残虐行為、すなわち人体実験が描写されている箇所は少なく、その描写も極めて淡白なもの。むしろ「死の天使」の戦後の逃亡劇を通してを持たない怪物ヨーゼフ・メンゲレの卑劣さ・心の惨めさ非常にリアルに伝えている。そう、彼は私たちと何ら変わりもないちっぽけな人間なんだ。戦争犯罪-非常に難しい。戦時下の東欧では市民の手によりポグロムが多発したが所詮彼らは無責任。愛国心ゆえに国家に忠誠を尽くした人は、負ければ立
-
-
-
-
Posted by ブクログ
おフランスの哲学者による藤子F不二雄SF(すこしふしぎ)風短編集。取り扱うテーマがあえて順不同で、胡蝶の夢あるいは高い城の男、若き日の自分による断罪、個人主義の行き着く先、信仰の行き着く先、既に確定した未来、持つ者と持たざる者のゼロサムゲーム、百万回生きた猫あるいは人生やり直し機。現代フランスのアイデンティティの危機を反映してか、登場人物は常に揺らいでいる。アイデンティティの危機とそれをもたらすテーマを様々なガジェットを用いるため、読みやすくなっているのも事実。なお、冒頭に述べた通り藤子F不二雄のすこしふしぎだなぁ、と思ったため、すべての話があの絵柄で脳内を流れていった。