高橋啓のレビュー一覧

  • 7

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    最初は7つの独立した短編に見えるが、最後の「第七」で全てが繋がる。哲学者でもある著者らしい、鋭く冷徹な視点で人間の限界を執拗に攻める。
    2025年最後に良い本を読んだ!

    第1話「エリセエンヌ」
    SF風に楽しめるが、過去の自分と今の自分が連続した存在ではなく、ただ積み重なった層の上に今が乗っているだけ——という存在の不連続性。

    第2話「木管」
    元ロックスターの音楽をめぐる物語。他の話に比べて少しエンタメ寄りで異色だが、やはり人間の行動は「人間の枠」から逃れられない。

    第3話「サンギーヌ」
    寓話的で読みやすい。物質と反物質、量子もつれのように、我々の目にはそれぞれ別の物質のように見える世界の

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    2025年12月29日
  • 認知アポカリプス――文明崩壊の社会学

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    圧巻。現代世界を「認知市場」という観点から社会的分析を行うブロネールの筆致に面食らう。
    不安や心配という人間の根源的な感情を取り込みながらソーシャルネットワーク世界は無限に肥大化していく。
    ナチュラルでピュアな失われた黄金時代を求めるルソーを源流するとする一派への批判、トランプを筆頭とするネオポピュリズム的言説をまとう人々への分析など、非常に多角的で鋭い論考を堪能できる。主権を持った政府側の一方的な上からの意図的な支配、それに対する素朴な民主主義を掲げる人々の被害者視点からの下からの反抗、両者の分かりやすい対立では収斂しない短期的な利益へと傾倒してしまう「人間」という種に対する批判的分析。

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    2025年06月28日
  • HHhH プラハ、1942年

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    終盤のある章の終わりでしばらく放心状態になって動けなくなり、物語の最後の1文で泣き出しそうになった。
    すごかった……暫定今月の1位。この著者の別の本も絶対読む。最近読んだミア・カンキマキさんの「眠れない夜に思う〜」と同じように史実に著者の考えや生活が挟み込まれる形式だが、当たり前だがそういうエッセイみたいなのとは全くもって別物。事実だけでも読み応えがある上に、ちゃんと全体が「小説を書くこととは何か」という作品になっている。事実のちょっと手前に著者がいて、その著者と一緒に事実を目撃している感じ。書いているうちにその事実と一体化していく作者を見守る読者になる。いや、、すごかった。
    なぜ私たちはナチ

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    2025年07月05日
  • HHhH プラハ、1942年

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    ハイドリヒと類人猿作戦、という Lieblingsthema
    2010年代に観た二本の実写化映画のうち、キリアンも出ておらず面白くもなかった方の原作小説。
    これが読んでみるとかなり刺さった。題材があまりにもドラマチックなのは言うまでもないとして、フランス人著者のチェコ・スロヴァキア愛と歴史小説に対する異常なこだわりが好き勝手に書かれていて楽しかった。

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    2025年04月20日
  • HHhH プラハ、1942年

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    ナチ高官ラインハルト・ハイドリヒ暗殺事件を,ドキュメンタリー風に描く.とはいえ,そこには執筆に悩む作者も登場し,1942年当時と作者がいる現代を行き来しつつ,ハイドリヒ暗殺とその後の顛末からなるクライマックスになだれ込む.
    このようになかなか不思議な構成なのだが,「スローターハウス5」のテイストに非常に近い.

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    2024年10月16日
  • HHhH プラハ、1942年

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    20年前、彼らはヒロシマとナガサキを知っていた。


    読み始めてすぐに一旦停止。
    内容が内容なだけに、歴史の勉強のやり直し。

    そうしてから読んでも、読むのに時間がかかった。

    時系列で話が進まないし、作者の感情も入りすぎているように思う。読みにくい。

    本当にこういった作品は好きじゃない!!

    だけど・・・。

    その時の情勢が目に浮かぶ・・・。
    昔の話なのに(1世紀も経っていない。途中で作者が言っていた)その場の臨場感がそのまま伝わる。

    20年前のボクはプラハの街を歩いたのに、そういった歴史を一切知らなかった。

    言いたいことは、天に星、地に石コロの数ほどあるけれど・・・

    ボクは、この英

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    2024年05月17日
  • HHhH プラハ、1942年

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    作者は、この作品がデビュー作とのことだが、信じられないクオリティかつ圧倒的な面白さ。
    翻訳も素晴らしい。
    内容は重厚だが、章立てを長短織り混ぜることでリズムを生んでおり、一気に読ませる。
    歴史を「語る」ことを、「僕」の視点から迷いも含め真正面から挑んでいる。
    この逃げない姿勢、逡巡をそのまま吐露できる強さ。

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    2024年03月16日
  • HHhH プラハ、1942年

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    歴史小説はどこまでが史実なのかいつも悩みながら読んでいたが、この書き方はそのボーダーラインが明確だったので悩まず読めた。

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    2023年05月25日
  • 編集者とタブレット

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    「編集者とタブレット」tsogen.co.jp/sp/isbn/978448… くー読んだ本がとても良かったときの喜びたるや。出版業界に押し寄せるデジタルの波vs紙の本。10年前の作品なんだよね。老兵の人生の哀愁もありつつ全体的に品が漂い、重くし過ぎずユーモアや皮肉のバランスも良くて素敵。考えたらフランス物は久々だな

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    2023年05月14日
  • 編集者とタブレット

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    ネタバレ

    『廃れる伝統的出版界 デジタルとの融合の果てに…』

    デジタル出版時代を先取りした2012年の作品。ベテラン編集者の元に、原稿などの入ったタブレットが手渡されるところから物語が始まる。単に紙 vs デジタルの対決と考えず、デジタルの時代に合った編集を見出そうと若者と交流する主人公の柔軟さに先見の明を感じる。

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    2022年07月20日
  • ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

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    アウシュヴィッツに大量に送られてくるユダヤ人をまるでオーケストラの指揮者のように振り分ける-この本では、収容所に到着してすぐ行われる選別を「オーケストラを奏でる」と多くのシーンで表現されている。異次元の残虐行為、すなわち人体実験が描写されている箇所は少なく、その描写も極めて淡白なもの。むしろ「死の天使」の戦後の逃亡劇を通してを持たない怪物ヨーゼフ・メンゲレの卑劣さ・心の惨めさ非常にリアルに伝えている。そう、彼は私たちと何ら変わりもないちっぽけな人間なんだ。戦争犯罪-非常に難しい。戦時下の東欧では市民の手によりポグロムが多発したが所詮彼らは無責任。愛国心ゆえに国家に忠誠を尽くした人は、負ければ立

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    2020年06月10日
  • ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

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    「死の天使」と称されたヨーゼフ・メンゲレの逃亡記。
    史実と文献をもとにした“ノンフィクション小説”

    戦時中に行った彼の非人道的な行為と、逃亡生活中の卑小さ傲慢さが際立つ。(さらにアイヒマンが登場することでその卑小さ俗物さが増す)


    「命令に従っただけで自分は悪くない」
    最期まで狂信者だった。

    最期の章に書かれていたことには胸を打たれた。

    いつの時代にも、メンゲレ(あるいはアイヒマン)のような人物を生み出してしまう可能性がある恐ろしさ。

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    2020年05月14日
  • ルーム・オブ・ワンダー

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    一気に読み終わった。読みやすいかつ面白い。東京訪れるシーンもあって外人がどう楽しむのかとフムフム。最後のシーンを読んだとき、先をイメージしてない自分に気づき面白いだけでなく考えさせられた。

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    2019年04月12日
  • ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

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    メンゲレのような「命令に従っただけで自分は悪くない」という言い分が通ると思っている卑小な悪、陳腐な悪は決して珍しいものではない。

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    2019年01月07日
  • ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

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    悔悟も悔悛もない。同情も共感もできないけど、最後の一文に胸を突かれた。いつ、どんな時代でもメンゲレになる人間は存在している。

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    2018年12月07日
  • ルーム・オブ・ワンダー

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    人生は有限だしいつ終わるか誰にもわからないし、生きていく上でどう優先順位をつけてくか考えさせられました。一気に読んじゃった。すぐ映画化しそう。 #ルームオブワンダー

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    2018年08月31日
  • エディに別れを告げて

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    訳者あとがきに思ったことが全部書いてあった。
    初体験の場面が衝撃。ゲイに幻想を抱いているワタシも立派な差別主義者なのである。

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    2015年05月10日
  • 7

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    おフランスの哲学者による藤子F不二雄SF(すこしふしぎ)風短編集。取り扱うテーマがあえて順不同で、胡蝶の夢あるいは高い城の男、若き日の自分による断罪、個人主義の行き着く先、信仰の行き着く先、既に確定した未来、持つ者と持たざる者のゼロサムゲーム、百万回生きた猫あるいは人生やり直し機。現代フランスのアイデンティティの危機を反映してか、登場人物は常に揺らいでいる。アイデンティティの危機とそれをもたらすテーマを様々なガジェットを用いるため、読みやすくなっているのも事実。なお、冒頭に述べた通り藤子F不二雄のすこしふしぎだなぁ、と思ったため、すべての話があの絵柄で脳内を流れていった。

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    2026年01月06日
  • ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

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    ノンフィクションのような記録文学。

    積極的に受け入れていた南米を逃亡先に選ぶ犯罪者が多かったのにまず驚く。

    国の施策として研究と銘打ち、個人的趣味での手術をしていた人物と認識していたが、その最後は怯え隠れ卑小な姿で描かれていた。

    頑なに罪を認めず自身を肯定しながら人生が終わったが、それならば逃亡せず法廷で堂々と主張すれば良かったのにね。

    都市伝説のような羽ぶりの良い生活では全くなく、落ちぶれてゆく姿に人間の業のような醜態を見た気がします。

    後味が良いわけではないですが、読んで良かった一冊です。

    翻訳が読みやすくその点も好印象。

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    2025年12月07日
  • 7

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    哲学者でもある著者の紡ぎ出す、ファンタジーともSFとも幻想小説とも読める7つの物語。それぞれは独立した短篇でなんの関連もないが、最後に収められた「第七」ですべてが繋がる驚愕の仕掛けがある。
    二段組500ページの大作で、本文は改行もほとんどないみっちり詰まった内容にめげそうになるが、あきらめないでよかった。フランスという国について知識がないと完全に理解するのは難しそうだが、単純に物語として楽しめればいいのかなと思う。
    訳者あとがきの解説(ぼやき?)もとても参考になった。

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    2025年11月02日