あらすじ
ドラッグの売人、元ロック・スター、トップモデル、革命家、UFO研究者、分断世界の監察官、そして不滅の男ーー7つの物語が交叉する。仏哲学界の新スターによる驚異的建築物のごとき傑作。
「彼は死ねないんだよ。人が経験することをすべて経験しちゃってるんだ」(本文より)
【仏メディア、困惑と絶賛の驚異的傑作!】
*よくできた短編集ではなく、特異かつ驚異的な建築作品――テレラマ
*本作をもって、トリスタン・ガルシアは短編と長編の中間にある物語集(という新たなジャンル)の作者となった。真実はときとして危険なほど超自然に接近する――ゾーン・クリティック
*信仰と美と歴史と時間をめぐる7つの精神的な寓話。今年の避けては通れない10冊のうちの1冊――レクスプレス
*一見多様な小説の寄せ集めにみえるこの作品は首尾一貫した構造を持っている。だが、その一貫性は見出すべきものなのである。それは読者に差し出された大いなる喜びでもある。トリスタン・ガルシアの最高の作品である――ル・ヌヴェル・オプス
「鼻血が出ない。とても孤独だ」(本文より)
7つの物語が交叉する、巨大な人生万華鏡!
「エリセエンヌ」……若返りのドラッグを求めて、閉ざされた世界の混沌へと深入りしてゆく売人。
「木管」……元ロック・スターが見つけた不思議な楽器には、過去のあらゆる名曲が刻まれていて……。
「サンギーヌ」……〈顔〉と呼ばれるスーパーモデルと、傷を負った男との奇妙な相関関係。
「永久革命」……革命を夢みた一児の母が迷い込んだ世界は、1973年に革命が成就した世界だった。
「宇宙人の存在」……宇宙人を研究する兄とその恋人のもと、すべてを疑いはじめた幼いムーンは……。
「半球(ドーム)」……国境が消え、同じ思想の者同士が〈囲い〉で暮らす完全な分断が実現した世界で、〈普遍主義者〉が見たもの。
「第七」……大量の鼻血を出して何度でも生まれなおす男が、7度目の人生でついに到達した新たな世界。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
最初は7つの独立した短編に見えるが、最後の「第七」で全てが繋がる。哲学者でもある著者らしい、鋭く冷徹な視点で人間の限界を執拗に攻める。
2025年最後に良い本を読んだ!
第1話「エリセエンヌ」
SF風に楽しめるが、過去の自分と今の自分が連続した存在ではなく、ただ積み重なった層の上に今が乗っているだけ——という存在の不連続性。
第2話「木管」
元ロックスターの音楽をめぐる物語。他の話に比べて少しエンタメ寄りで異色だが、やはり人間の行動は「人間の枠」から逃れられない。
第3話「サンギーヌ」
寓話的で読みやすい。物質と反物質、量子もつれのように、我々の目にはそれぞれ別の物質のように見える世界の諸物は実は深く繋がっているのかもしれない。
第4話「永久革命」
いくつもの未来を行き来するSF。世界の無数の可能性を示しつつ、最後の第七につながる。
第5話「宇宙人の存在」
個人的に一番強烈だった。「伝統的な宗教は力を失って単なる忠誠心で生きながらえている」と切り捨てながら自分たちの生み出した狂信的な集団から外れたものは消していくという強烈な思想のあり方、それを「素晴らしい人生だったね」と肯定する表現は善悪の彼岸にある。
第6話「半球」
分断された宗教・思想・政治の世界で、弱々しくもそれを繋ごうとする人々の姿。そしてそれら全てが、より大きな「人間の思考の半球」に閉じ込められていてそこからは出られない。
第7話「第七」
不死の男が何度もこの世を生き直す。記憶が積み重なる中で、無数の人生の可能性を試すが、結局すべては人間の枠内に収まる。
全体を通して感じたのは、人間はどれだけ可能性を夢見ても、どれだけ信仰を新しく作り替えても、結局「人間という限界」から逃れられないという、静かで残酷な諦観。エンターテイメントとしても哲学書としても成立する稀有な作品。読後感は少し冷たく、重いが、それゆえに忘れられない一冊。
Posted by ブクログ
おフランスの哲学者による藤子F不二雄SF(すこしふしぎ)風短編集。取り扱うテーマがあえて順不同で、胡蝶の夢あるいは高い城の男、若き日の自分による断罪、個人主義の行き着く先、信仰の行き着く先、既に確定した未来、持つ者と持たざる者のゼロサムゲーム、百万回生きた猫あるいは人生やり直し機。現代フランスのアイデンティティの危機を反映してか、登場人物は常に揺らいでいる。アイデンティティの危機とそれをもたらすテーマを様々なガジェットを用いるため、読みやすくなっているのも事実。なお、冒頭に述べた通り藤子F不二雄のすこしふしぎだなぁ、と思ったため、すべての話があの絵柄で脳内を流れていった。
Posted by ブクログ
哲学者でもある著者の紡ぎ出す、ファンタジーともSFとも幻想小説とも読める7つの物語。それぞれは独立した短篇でなんの関連もないが、最後に収められた「第七」ですべてが繋がる驚愕の仕掛けがある。
二段組500ページの大作で、本文は改行もほとんどないみっちり詰まった内容にめげそうになるが、あきらめないでよかった。フランスという国について知識がないと完全に理解するのは難しそうだが、単純に物語として楽しめればいいのかなと思う。
訳者あとがきの解説(ぼやき?)もとても参考になった。
Posted by ブクログ
・エリセエンヌ:精神だけが若返るドラッグ
・木管:不思議な楽器には過去のあらゆる名曲が刻まれ〇サンギーヌ:スーパーモデルと対になる傷を負った男
〇永久革命:共産党を離党した老人性医師が1973年に革命が成就した世界と現在とを精神になって行き来する。
・宇宙人の存在:宇宙人を研究する兄とその恋人
〇半球(ドーム):同じ原理主義思想の者同士が通信を遮断したドーム内で暮らしドームの中に更に分派のドームという分断社会。
〇第七:何度も生まれ変わり、公務員、ノーベル賞学者、革命家、宗教家、極悪人、作家を生きる。7回目に不死性を失うが、恋人に。