高橋啓のレビュー一覧
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おフランスの哲学者による藤子F不二雄SF(すこしふしぎ)風短編集。取り扱うテーマがあえて順不同で、胡蝶の夢あるいは高い城の男、若き日の自分による断罪、個人主義の行き着く先、信仰の行き着く先、既に確定した未来、持つ者と持たざる者のゼロサムゲーム、百万回生きた猫あるいは人生やり直し機。現代フランスのアイデンティティの危機を反映してか、登場人物は常に揺らいでいる。アイデンティティの危機とそれをもたらすテーマを様々なガジェットを用いるため、読みやすくなっているのも事実。なお、冒頭に述べた通り藤子F不二雄のすこしふしぎだなぁ、と思ったため、すべての話があの絵柄で脳内を流れていった。
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ネタバレナチスのユダヤ人大量虐殺の責任者であったハイドリヒがチェコで暗殺された事件を描くお話
ハイドリヒの生い立ちや、暗殺に至るまでの過程を大量の資料や、過去の小説、映画などを参照しながら書いていくのだけど、それを書いている作者の視点が随所に織り込まれて、歴史を小説という形で創作することについての考察が並行して語られていくという構成
映画「ハイドリヒを撃て」を見ていて、暗殺計画の行く末は知っていたので、歴史的な部分よりも、歴史を創作することの是非を考える部分の方をとても興味深く読みました。
読んでいて、これはあまりにドラマチックに描きすぎではないかと思っていたら、直後に作者自らがそのことをつっこ -
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ネタバレ記号学者ロラン・バルトの交通事故(史実)について、事故直後の身体から、ヤコブソンの唱えた言語の6つの機能に加え、超絶的な7番目の機能の存在の秘密を盗み取られるというフィクションを建て、フランス思想、言語学、記号論から、ジスカール・ディスタンとミッテランとの政争が絡み、学究的かつ思考演習が積層するサスペンス・ミステリー。実在の人物が多数、虚構を散りばめ語り尽くし、縦横無尽に渡り歩く。これでビネの小説は邦訳3作全部読んだことになるが、自分にとって本作が一番の難物だった。1980年代欧州の思想に全然詳しくなく、本筋ストーリーはすごく奇想で面白いのだが、エーコの「薔薇の名前」も未読だし、繰り返される思
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フランス・パリ出身のローラン・ビネのデビュー作であり、2009年に本国で出版、2013年に邦訳が出版された本作、『HHhH』。この謎めいたタイトルが渦めく装丁に興味を惹かれて書店で購入したのだが、その感覚がは大いにあたり、ストーリーテリングの面白さと、極めて技巧的・意識的な仕掛けに溢れた一作。
タイトルの奇妙な4文字はドイツ語の「Himmlers Hirn heißt Heidrich」という文章に由来しており、”ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる”という意味になる。そのヒムラー、すなわちナチス・ドイツの親衛隊(SS)のトップであったハインリヒ・ヒムラーにその頭脳として仕えたラインハルト・ -
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Himmlers Hirn heißt Heydrich.
訳:ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる。
タイトルは上記の単語の頭文字をとったもの。
ヒトラーが生み出したナチという思想を、そのまま具現化したかのような金髪の野獣、死刑執行人、ハイドリヒ。
ユダヤ人大虐殺の首謀者である彼を暗殺すべくイギリスから飛んだチェコ人、スロヴァキア人の青年二人を主人公に据えた史実に基づく小説。
訳者あとがきに言いたいこと全てが書かれている。僕はその上澄みをここに貼り付けることしかできない。
いわゆる歴史モノ、ナチモノ、ノンフィクションモノである本書だが、他と一線を画するのはその小説スタイルだ。
脚色 -
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哲学をちょっとかじっただけの私でも知っているような有名人が次々と!
登場人物がこれだから、読み始めたときはかなり難解に思えて、私はこの本を最後まで読めるのだろうか…と不安になった。
そんな思いも杞憂に終わり、物語が大きく動く100頁あたりからは、話のスジがわかりやすくなり、頁を繰る手も速くなっていった。
言語学、言論、アクション、エロ、複雑に絡まってゆく思惑、言語の七番目の機能という謎。
総頁数500弱と私にとってはなかなかの長編だけれど、刺激的な展開で最後まで飽きずに読み切ることができた。
爽快感のあるロゴスのやりとりはまさにファイトクラブさながら!
シモンの活躍ぶりは目を見張るばかりで、 -
Posted by ブクログ
評を書くときには、読者がその本を読む気になるかどうかを決める際の利便を考慮し、どんなジャンルの本かをまず初めに伝えるようにしているのだが、本書についてはどう紹介したらいいのか正直なところ悩ましい。シャーロック・ホームズ張りの推理力を発揮する人物が、ワトソン役の警視とともに殺人事件の謎を追うのだから、謎解きミステリというのがいちばん相応しいのだろうけれど、ミステリとひとくくりにしてしまうと少々具合が悪いことになる。通常のミステリ・ファンが本書を面白がるとは思えないからだ。
『黒死館殺人事件』から法水麟太郎の超絶的な博学の披露を取り去ってしまったら、並みの推理小説と大して変わらないという評を読ん -
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