【感想・ネタバレ】HHhH プラハ、1942年のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年03月16日

作者は、この作品がデビュー作とのことだが、信じられないクオリティかつ圧倒的な面白さ。
翻訳も素晴らしい。
内容は重厚だが、章立てを長短織り混ぜることでリズムを生んでおり、一気に読ませる。
歴史を「語る」ことを、「僕」の視点から迷いも含め真正面から挑んでいる。
この逃げない姿勢、逡巡をそのまま吐露でき...続きを読むる強さ。

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Posted by ブクログ 2023年05月25日

歴史小説はどこまでが史実なのかいつも悩みながら読んでいたが、この書き方はそのボーダーラインが明確だったので悩まず読めた。

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Posted by ブクログ 2024年03月16日

チェコスロバキア人の青年2人によるナチ高官暗殺を描いた歴史小説
あらためてナチスとは何だったのか、そして1世紀も経ってないことに気付かされる

そして史実を小説にする葛藤をそのまま文章にする奇抜さと、物語とその葛藤が融合していくラストは痺れる

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Posted by ブクログ 2023年09月09日

フランス・パリ出身のローラン・ビネのデビュー作であり、2009年に本国で出版、2013年に邦訳が出版された本作、『HHhH』。この謎めいたタイトルが渦めく装丁に興味を惹かれて書店で購入したのだが、その感覚がは大いにあたり、ストーリーテリングの面白さと、極めて技巧的・意識的な仕掛けに溢れた一作。

...続きを読むイトルの奇妙な4文字はドイツ語の「Himmlers Hirn heißt Heidrich」という文章に由来しており、”ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる”という意味になる。そのヒムラー、すなわちナチス・ドイツの親衛隊(SS)のトップであったハインリヒ・ヒムラーにその頭脳として仕えたラインハルト・ハイドリヒらが本書のモチーフ及び舞台となる。

より具体的に言えば、その頭脳を持ってユダヤ人の虐殺や制服した諸国での恐怖政治を指揮したハイドリヒを亡きものとするために、チェコのプラハで立ち上がった2人の若者による暗殺計画が本書のストーリーの骨子である。・・・のだが、本書が特異なのは、その史実を元にした小説を書くための作家本人を主人公に据えて、「小説を書くということの小説」とも言えるメタレベルの視点を持った小説に仕上がっている点である。

さまざまな事実調査をしながら書き進めていく難しさ、その個々の史実に対する作家自らの感想などが合間に挟まりながら、それでいて悲劇的なクライマックスに向けて突き進む2人の若者の暗殺計画が綴られていく。高いリーダービリティを持ちつつも、メタ小説の面白さにも溢れており、改めて小説という枠組みでまだまだ面白いことができる、というその可能性を強く実感できる1冊だった。

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Posted by ブクログ 2023年06月29日

ユダヤ人問題の最終的解決問題の実質的推進者で、「金髪の野獣」と呼ばれたラインハルト・ハイドリヒ暗殺計画のエンスラポイド作戦を描いた小説。

短い区切りの章が次々と繰り返される、ちょっと面白い形式で書かれています。その短い章も著者の現代や、物語の時間が入り乱れていますが、意外に読みにくくありません。書...続きを読むいた著者が上手いんですね。

暗殺実行者が立てこもった教会で戦う最後のシーン。「なんかこの描写、何かの映像作品で見た気がするな??」と思ったら、この作品を映画化した『ナチス第三の男』を見ていましたw

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Posted by ブクログ 2023年06月14日

Himmlers Hirn heißt Heydrich.
訳:ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる。
タイトルは上記の単語の頭文字をとったもの。

ヒトラーが生み出したナチという思想を、そのまま具現化したかのような金髪の野獣、死刑執行人、ハイドリヒ。

ユダヤ人大虐殺の首謀者である彼を暗殺すべくイ...続きを読むギリスから飛んだチェコ人、スロヴァキア人の青年二人を主人公に据えた史実に基づく小説。

訳者あとがきに言いたいこと全てが書かれている。僕はその上澄みをここに貼り付けることしかできない。

いわゆる歴史モノ、ナチモノ、ノンフィクションモノである本書だが、他と一線を画するのはその小説スタイルだ。

脚色を排し、膨大な史実に裏付けされた出来事を忠実、誠実に、ともすれば偏執的に細部のディティールにまで拘り徹底した歴史を書く。

それだけでも確かに凄いことなのだが、
それだけでは小説ではなくただの年表になってしまうし、資料の書き写し、Wikipediaにしかならない。

とはいえ、膨大な裏付けをもってしても描ききれない出来事を想像により補填してしまえば、
それは歴史を歪めたフィクションになってしまう。

その歴史と小説、事実と脚色の間をせめぎ合う様さえ読者に詳らかに語るストイックで誠実なスタイルは、小説とは何か?という哲学さえ投げかけている。

結局著者が辿り着いた答えは、
リアルタイムにアップデートした歴史を断章によって掛け繋いでいき、まるで映画の副音声のように著者が俯瞰して語り、史実をインプットした上での考察、情景、登場人物のアウトプットを果たす。というスタイルだ。

そこには、その情報の確度や、別作品からの比較や、幅広い知見からの総合的判断が加わり、
その当時の悲惨さや時代背景や生活を見ることができ、
弱者が一矢報いる物語の歴史性を損なわずに話を展開していくという離れ業をやってのけている。

歴史小説という側面もあるが、本書が評価された理由は詩小説的で、純文学的で、歴史モノなのに日記のような私小説感のある読み味にあると思う。

誰かに入り込むのではなく、あくまで自分自身の視点で歴史を捉えるところに文学性が生じ、ノンフィクションノベルとしての新たなスタンダードになり得る小説なのかもしれない。

だからこれを著者自身が基礎小説と呼んだことに些かの疑問もない。

この小説は、あらゆる文学が貫いてきたスタンスのエッセンスを含んでおり、"われわれ"がそう在れと願った純真さと好奇心で読者を満足させることだろう。

第一部はほとんど敵であるハイドリヒやナチサイドの歴史話がほとんどで少し重い。
しかし第二部に入ってからはページを繰る手が止まらず、
ラストスパートへと怒涛の畳み掛けがある。

事実は小説よりも奇なりというより、
ありったけの事実を小説にすることの奇を見ることのほうがよっぽど稀だと思う。

42年のプラハの事を眼前にありありと浮かぶ体験。

その暗殺する曲がり角を、ヒトラーのヒステリーの鼻息を、ハイドリヒの傷口に入り込んだメルセデス車のシートの中の馬毛を、
ガブチークの楽天的態度も、クビシュの微笑みも、礼拝堂の地下も、蹄の音も、自転車も、服装も、戦争も、ユダヤ人も、、、


終盤のあの書き方は必見。
布石は序盤に撒き散らしてあるので、
何故作者がそこでそんな風に書いたのか、
そんなところを鑑みるのも一興。

効率度外視の無駄の極みこそ人間味で、
ひいてはそれが文学なのかもしれない。

おわり。

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Posted by ブクログ 2024年04月11日

歴史小説の新しいスタイルで評価は高く、文学的意義もありそうだが、単純に私にはちょっと読みづらかった。没入しづらい。でも終盤は集中して一気に読める展開で面白かった。諦めず頑張って読んで良かったな、という感じ。ナチの歴史ものだが知らなかった史実もあり、興味深く勉強にはなった。

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Posted by ブクログ 2023年09月07日

’14年に単行本で購入(検索したら文庫でしか出て来なかった)。構想を練り、物語を構築する過程も物語の内という奇妙な小説。
初読時、ナチスドイツへのズデーデン地方割譲の経緯経過が、ロシアのクリミア併合と被って見えたことを思いだした。

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