山上信吾のレビュー一覧
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タイトルだけ見ると「また愛国本か」と思うかもしれない。でも読んでみたら、想像よりずっと冷静で実務的な本だった。
この本が問うているのは、日本は国際社会において「情報戦」で戦えているか、という一点だ。
著者たちが指摘するのは、戦後の日本が「事なかれ主義」で外交に臨んできた結果、相手側の主張だけが国際社会に定着してしまっている、という構造的な問題だ。本書ではその背景として、戦後占領期のWGIPが日本人の自虐史観形成に影響を与えたという見方も紹介されている。この点については賛否あると思うが、「反論しないことが品格ではなく敗北になっている」という指摘は、自分も素直に危機感を覚えた。
参考事例として登場するのがオーストラリア。中国による影響工作を早期に察知し、法整備や世論喚起で対処したプロセスが紹介される。
「日本の立場を正確に、戦略的に発信していく」という著者の提言は、イデオロギーを超えてまっとうだと思った。歴史認識の各論については読者それぞれが判断すればいい。ただ、「黙っていれば穏便」という姿勢がすでに通用しない時代になっているという問題意識は、多くの人が共有できるだろう。 -
Posted by ブクログ
外務省OBで駐豪大使も務めた山上信吾氏が「外交官としての遺言」と称して、弱腰外交を始め国益を損なう外務省の負の実態を内部事情も含めて歯に衣着せずに吐露した一冊。
国際視野に立った大局観の欠落、場当たりの無責任な事なかれ主義、国家重責を担う覚悟・意識の希薄さなど、現場を知る視点からの指摘は適格かつ厳しい。
同様の劣化は外務省に限らず民間含めて多くの組織に言えることで、幅広い読者の参考となる内容だと思います。
筆者の得難い経験から多くの教訓が示唆されていますが、とくに「喧嘩をせよ、恋をせよ」は相互理解のための本気の人づきあいを指した意味深長な言葉として刺さりました。
真に外交官らしくあった筆者が出る杭として打たれてしまったことは、国益損失として残念に思います。 -
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ネタバレ自分は外交について「日米」「日中」は身近だったが「日豪」については今まで意識したことがなかった。日本とオーストラリアで「中国問題」に対する意識を丁寧に摺合せを行ってきた筆者。日々、台頭してゆく中国に立ち向かうための重要なポイント。「歴史カード」を振りかざす中国に果敢に立ち向かうための重要なポイント。それは「中国と同じ土俵に乗らない」こと。見るべき相手は中国ではなく、任国であるオーストラリア。中国に対する意見、立場を日豪で共有して、大所高所に立つ。中国だけに目を向けるのではなく、「オーストラリア駐日大使」の立場で戦ってゆく。山上大使の果敢な行動に心打たれた。
いつか「カウラの地」に立ってみたい。 -
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外交とは、会議室で握手することだけではないらしい。歴史認識、メディア、世論、情報もまた、国益を左右する舞台である。
かつて激しく戦った日本とオーストラリアは、いまや重要なパートナーとなった。過去を忘れたのではない。それを知り、越えて、関係を築いてきた。
黙っていれば誠意は伝わる。そんな日本の美徳も、世界では通じるとは限らない。そつなく、時が流れを待つ外交なんてない。投げかけられた言葉のすべてに答える必要もない。反論を重ねてばかりでは、いつしか相手の土俵に惹き込まれているだけではなく、立論していかなくてはならないという。
語ること。そして、あえて応じないこと。
丁々発止から生まれる絆が手法であり、誠意ある外交なのだろうか。 -
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前駐豪大使による、我が国を取り巻く国際情勢や政権、外交当局についての論考。
24年末〜25/3の高市政権以前の断面なので、石破政権や岸田政権に対する否定的な評価が多い。
当時に比してイラン戦争、ドローンを中心としたウクライナの反攻、Aiバブル?など、情勢はさらに混沌さを増しているが、本書に書かれた対米、対中、対露の認識はいずれも的確。
第5章の手嶋龍一氏との対談は興味深い。
対談前半の厳しい世界情勢や我が国の脆弱な外交、防衛、インテリジェンス態勢について両氏の認識は一致するが、大東亜戦争に対する評価、認識となると手嶋氏の元NHK記者の地金が現れる。
「負ける戦争はしてはいけない」と説く手嶋氏の持論が容易に敗北主義につながるとの著者の指摘は正しい。
第4章の「弱腰外務省の実態」は他の著書にも書かれているし、あえて本書に含める必要はなかった。
アサ芸ビズの連載が元とのことで、やむを得なかったのかもしれないが。 -
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外務省を内部から変えようと戦った前駐豪大使の山上信吾と保守現実派の作家・ジャーナリストの門田隆将の対談集。
国益を追求することなく、赴任国との諍いを起こさないことだけに専念する外交官や、外交実務を志さずに特定の政治家に阿る外務官僚。
政治家や政党とのつながりによって、中国に間接的にコントロールされている官僚人事や国内世論。
他の本でも触れられている内容も多いが、当事者と博覧強記の2人の、当人たち曰く「自由闊達な」会話の内容には、危機感を募らせざるを得ない。
本書の対談は高市総理誕生の前、石破政権期に行われており、当時は可能性が低いと思われていた高市政権への強い期待や希望が随所に述べられているが、高市政権が実現した現在となれば、前年の石破政権から様変わりした政権運営への期待と、圧倒的多数は確保したものの従来と変わり映えのしない自民党の体質に苦闘する高市政権の姿に、複雑な思いを抱く。 -
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駐豪大使も務めた山上氏がアサ芸ビズに連載したコラムをまとめた日本外交論。
本著は2024頃の内容ですが、直近の日本外交にもつながる問題の数々がオブラート無しで端的に語られていて小気味良いです。
表面はソフト、中身は固く芯の通った著者の人間性が伝わってきます。我欲を国益に優先する官僚・政治家が少なくない中、外交官としての矜持を優先して次官にも正面から意見できる人もいたことがわずかな救いです。山上氏の影響を受けた後進が出てくることに期待したい。
著者は弱腰外交の原因に、①対立を避ける国民性、②外務官僚の妥協癖、③政治家の胆力不足を挙げていますが、政治無関心な低民度の寄与も小さくないです。この半年くらい改善傾向ですが続くとよいですね。 -
Posted by ブクログ
It was particularly insightful coming from a former senior MOFA official. Given the structural constraints of Japan’s imperfect civil service system, it is extremely difficult to shift such deeply rooted dynamics and influence the direction of a large bureaucracy like MOFA. That said, in what is widely seen as the most severe security environment since the war, Japan cannot afford to continue with incremental, ad hoc diplomacy. The time has come to move beyond siloed approaches and integrate diplomacy, economic policy, military, and intelligence.