あらすじ
外務省の全てを知る前駐豪大使・山上信吾氏が、これまで語られることがなかった日本外交の闇に光をあてる!
「なぜ日本外交はあんなにも弱腰なのか」。山上氏が講演会など行く先々で問われる疑問に忖度なしで答える義憤の書。
対中国では靖国神社での凌辱事件、在留邦人に対する斬りつけ殺傷事件、対ロシアにおいては北方領土交渉など、事あるごとに露呈する日本外交の腰砕けぶりを洗い出し断罪する。
そして、そんな脆弱な外交力を抱えた日本は「トランプ2.0」を中心とした世界情勢にどう対峙していくべきかを緊急提言。
手嶋龍一氏との対談も収録し、日本外交の再生を期して「あるべき精強な日本外交の姿」を示す。
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Posted by ブクログ
山上信吾氏の書籍を始めて拝読した。
日米、日中、日ロの外交を中心に日本の首相、政治家、外務省の
弱腰な姿勢、国際感覚の欠如、政と官の不健全な結びつき、などに対して、
外交官として豊富な実績を持つ経験者として信頼性ある立場から鋭く指摘、批判をしている。
対米姿勢に関しては、東京裁判を受け入れた経済重視の勢力が保守本流となっており、
歴史認識を含めて丁寧に日本のあるべき姿を模索する保守層が排除されていることへの懸念にも言及していた。
この論点は大切で、反米・親米という線引きをしている限り日本の対米姿勢のあるべき姿は見えないと感じた。
対中外交に関しては、媚中の勢力への懸念を強く示している印象。
外務省のチャイナスクールの存在に加えて明らかに中国を擁護する政治家の存在。
これらを外務省や外交官としての実体験も交えて、堂々と批判をしている。
対ロ外交に関しては、一部安倍元首相時代の対ロ政策の批判についても言及している。
特に北方領土問題については過去の交渉を後退させたと見ている。
近年になり安倍元首相の功罪について言及する書籍や言論も見られるようになり、
いかに偉大な首相であれどその功罪を分析する意味では大切なことだと感じた。
その他外務省や大使館職員などについて、全体的に内向き思考であったり、
海外慣れしていないとか、マナーがなっていないとか、
大使館での勤務態度のレベルが低いなど、
本来覚悟を持って日本の代表として仕事すべき外務省、大使館職員の理想と現実のギャップを知ることができた。
最終章の手嶋龍一氏との対談も非常に面白い。
手嶋氏は知名度もありややリベラル寄りながら国際関係、外交に詳しい論者という印象だが、
特に大東亜戦争への評価や認識などで対立姿勢を隠さず議論している。
(なお、両氏は旧知の関係のようであり、健全な議論の範囲内である。)