あらすじ
日本を駄目にした政治家と官僚は誰だ?
前駐オーストラリア大使が40年間の外交官人生を懸けた覚悟の手記!
「本書は、外交官としての私の遺言である。
遺言である以上、かつての先輩、同僚、後輩との人間関係に遠慮して
行儀よく丸く収めることは、とうにあきらめた。
むしろ、今後の日本外交のために、
歯に衣着せずに、敬称を略して語ることとした。
劣化の深刻さは、待ったなしだからだ」
日本外交はなぜここまで劣化したのか?
*ロビイング力の決定的不足
*惨憺たる対外発信力
*歴史問題での事なかれ主義
*日の丸を背負う気概の弱さ
*永田町・霞が関での外務省の地盤沈下
*内向き志向といびつな人事
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
日本の外交の外交官の意識までが赤裸々に描かれており、読み応え満点。
外務省が徐々に内向きになっている。在外が評価されてない。
安倍外交は、アメリカ重視の姿勢など評価されている一方で、ロシアに対する曖昧な対応、2島返還が問題視されていた。
語学力が超重要。
Posted by ブクログ
読み進めるにつれ、タイトルにある日本外交の劣化に関して、焦燥感とやるせなさ、絶望感だけが募る。
著者の山上氏は、駐オーストラリア全権大使であったが、上司に対しても物言う姿勢から外務省内では異端であった。外務省組織内の多くが事なかれ主義と保身に明け暮れ、政治家も含め、日本の国益を守るという高い職業意識が希薄である、もしくは皆無である事が様々な事例と共に指摘されている。
本書の構成は、問題点がまず上げられ、その背景が語られ、更に解決策の提言がなされている。問題点だけ論うだけだれば単なる文句を言っているだけという事を著者も意識しているのであろう。しかしながら、山上氏のような気骨があり全権大使まで務めた人が中にいても組織は全く変わらないのであれば、問題が解決に向かうとは到底思えない。外務省の問題は、各省庁でも共通であり、さらに言えば民間企業でも概ね状況は似たり寄ったりである。ここで描かれている事は、日本の組織、日本人の本質な問題と言い換えることもできる。かつて福沢諭吉が「愚民の上に苛き政府あり」と喝破したように、我々国民の民度の問題であると言うことか。根は深い。
Posted by ブクログ
前オーストラリア大使だった著者が、外務省入省後40年経ち退官したことを契機に外務省のインサイドから実名を挙げて外務省を劣化させる原因ないし傾向を告発する。
在外公館での経験がほとんどないよう本省ばかりのような官僚が幅を利かせることは正に外交の最前線と日本を断絶ないし国益を損ねる危険性を高めるもので改善してもらいたいものだ。
ただ著者の歴史観がやや独善的な点も見られるが、オープンな議論を拒絶しない職場の土壌の大切なことには賛同する。
普段あまり関心のない外務省についての書物なので興味深く読んだが、森次官とは相当長い間確執があったことは野次馬的に(モーレツ主義からスローライフ的な時代的な変化もふまえ)苦笑した。
Posted by ブクログ
<目次>
はじめに
第1部日本外交劣化の現実
第2部なぜここまで劣化したのか
第3部再生への道
おわりに
2024/5/10第1刷
2024/5/30第2刷
YouTubeの文化人放送局に出演されているのを見て
山上さんを知り、購入していたもの。
2024年のCPAC JAPANでも登壇されており、
お考えとその外交の実力はすごいなあと感心して
いました。同年代の実力のある元大使が退官されていく
中で、もっと彼らに活躍していただきたいと思う
この頃です。
Posted by ブクログ
元在豪大使の苦言と提案。
政治家とかこういう方々の本に共通の、俺はそうじゃなかったんだ、俺は全てを見通しているんだ的なちょっと上からの感じが鼻につく部分は否めないのだけど、しょうがあるまい。
ロビイングができず発信ができず、内向き仲良しサークルでナワバリ意識と事なかれ主義の外務省。
安倍元首相のロシア対応を諌められんかったのかというのは同感するところはあるが、ハナから信用されてなかったのだろう。
内政の失敗は内閣を破壊するが、外政の失敗は国を滅ぼす。
この言葉を噛み締められない人間は、外務に関わるべきではない。
やはり、外務省だけは別採用の方がいいんじゃないかね。特に、大使とか在外公館に出れば、単に公務員ではなく、政治家に近い動きもせねばいかんだろうし。
Posted by ブクログ
「劣化」とあるが、筆者も書くように、真珠湾攻撃の宣戦布告を遅延させた野村駐米大使を始め、外務省の不手際、国益意識の低さは以前からつとに指摘されてきた。
本書の第一部の指摘は尤もなものばかり。
第二部、第三部は筆者の思い入れの強さのあまり筆が滑っていると感じる箇所もあるが、外交を司るはずの外務省職員が、外交官ではなく単なる公務員となっているような印象を受ける。
日常業務や省内政治に精一杯で、国を代表し、他国と国益を巡ってのギリギリの交渉を行う余裕や覚悟を持てないということか。
基本的な語学力不足、自国や赴任先の社会・文化・歴史に対する理解不足、赴任先で有効な人脈を作れない、自国の利益に沿った主張・行動ができないなど、外交官としての基本的な資質・姿勢に欠ける人物も決して例外ではなさそうだ。
海外に赴任するビジネスマンは否応なく自国の文化を客観的に見つめ直し、赴任先との違いの根本について常に考えさせられる。
公的な立場で赴任する外交官が感じる圧力は何倍も強いはずなのだが。
筆者の批判がすべて的を射ていると言えないとしても、名指しされた面々の行状は確かに褒められたものではない。
四半世紀も前に書かれたテリー伊藤の「お笑い外務省機密情報」から何も変わっていない。
一方で在外公館を増やす動きもあるらしい。
外務省の立て直しは急務だが、病巣は外務省に限らない。
この国はエリート教育を根本から見直す必要があるのではないか。