市川沙央のレビュー一覧

  • ハンチバック
    とにかくすごい小説、というか文章でした。ここまで生々しい怨嗟を小説から感じたのは初めてだったと思います。

    語り手となるのは生まれつき難病を抱え、呼吸器なしでは生存できず、親の遺産とヘルパーさんの介護で生活が成り立っている女性。

    大学の通信課程に通い、ネットライターの仕事とSNSでの過激なつぶ...続きを読む
  • ハンチバック
    普通に妊娠して中絶したい。という言葉が突き刺さった。勝手に心を抉られてるのも健常者の特権かもしれない。
    こんなこと考えもしなかったのは、当たり前に妊娠して出産して子育てする未来を想像できるからなんだとおもう。
    自分にない可能性を持った人間が当然の顔をして大量にいる世界で、命のことどう考えるだろう。
    ...続きを読む
  • ハンチバック
    間を置くことなく読み終えた。

    著者について知らずに読んだが、知った後でこの本との向き合い方は変えずにいたい。
    逆に作中では、健常者の特権性に対する怨恨が純度高く描かれるが、そこに萎縮してしまうと、この作品の価値を下げてしまう気がする。

    物語中盤、釈華は田中に素性を知られていることを告げられる。そ...続きを読む
  • ハンチバック
    ガツンと殴られて、目を開かされた。ウクライナの戦争やパレスチナの虐殺は心配していた。円安や少子化の行方は気にしていた。しかし、障碍者の性のことは気にしていなかった。まして、障碍者の「読書する権利」なんて考えたこともなかった。「愛のテープは違法」事件も安積遊歩のカイロ演説も聞いたことがなかった。そうか...続きを読む
  • ハンチバック
    鬱々としながらも淡々としていて少し怖い話だった
    もしかしたらこのような事が実際にもあるのかもしれないと感じた
  • ハンチバック
    読書でこんなに衝撃を受ける経験ってそうそうないので、とてもいい小説を読んだなと思った。
    今の時代を感じた。悪い意味ではなくて、新しい価値観と言うか、見方を教えてもらった感覚。
    100年とか500年とか経って、この本を読まれたら、よくあること、古典的な話だなぁ。とか思うのかな。私のこの衝撃は今の私のも...続きを読む
  • ハンチバック

    ルサンチマン、金閣寺

    本文の試し読みがなかったのは
    すごい始まり方だけで判断しないように
    ということだったのではと思った。
    聖俗、善悪、ルサンチマン。考えさせられた。
    無垢から泥のような性愛まで幅広く、
    冷静で平常心な一方、冒険心・無謀さも見える。
    紗華とか沙央とか、清楚、無垢な字面の一方、
    地獄も天国も、業も悟りも守備...続きを読む
  • ハンチバック

    新しい境地の文学だと思った。

    自分の身体を憎み、社会を憎み、他者を嫌いながらも他者と交わり人間らしい醜い生き方をしたい…そんな主人公に、障害を持つ読者は皆少なからず共感するのではないだろうか。
    近隣流行りの障害学ではまず見た目の違い=悪/醜さではない、というところから入るが、この本、そこに真っ向から切り込んで、現実社会と当事者の...続きを読む
  • ハンチバック
    市川沙央「ハンチバック」
    障がい者として初めて、芥川賞を受賞した作品。
    主人公は、作家と同じ「ミオチュブラー・ミオパチー」という病気で子供の頃から筋力が弱く、湾曲した背骨(せむし=ハンチバック)で右肺は押し潰され、人工呼吸器を使って生きている重度障害をもつ中年女性。もう30年は自分の脚で歩いておらず...続きを読む
  • ハンチバック
    「ハンチバック」(市川沙央)を読んだ。
(ハンチバックという言葉の意味さえ知らずに)
    
軟弱なわたしには当然の如く語るべき言葉もない。
    
市川沙央さんが紡ぐ物語は鋭い牙を剥く飼いならせない猛獣の如くわたしの臓腑を食い破る。
(あぁ陳腐な比喩だな)
    
語るべき言葉がないのであればやはり黙っているべきな...続きを読む
  • ハンチバック
    ここにあるのは怒りとか鬱憤とかそういう負の感情なのに何故もこんなにカラッとしているんだろう

    下記一文が印象的だった
    せむしの怪物の呟きが真っ直ぐな背骨を持つ人々の呟きよりねじくれないでいられるわけもないのに
  • ハンチバック
    殴られたかのような読後感。
    なんだったんだ。すごいものを読んだ。

    刺激的な描写がたくさんあって、これうっかり中学生くらいの子が読んじゃったりしない?とか、要らない心配をした。
    扱うテーマも重たい。
    そんな重たさを感じさせないシニカルな文章のセンスがとても好きでした。



    "私は紙の本を憎んでいた...続きを読む
  • ハンチバック
    思ったより短い小説だった。
    読ませる力が強く、ページをめくる手は止まらなかった、久々に。
    3日で読み終えた。

    主人公の釈華は、作者の市川沙央氏自身だと思った。

    市川氏自身の人生が凝縮されているような小説だと感じた。
    本の帯に書かれているように「私の身体は生きるために壊れてきた」とあるが、釈華も市...続きを読む
  • ハンチバック
    最初は心が鬱々とする事が多くて頁をめくるのが少し重く感じたのですが、半分からあとはあっと言う間でした。

    主人公の名前が釈華(釈迦)であることから仏教かキリスト教といった神様が関連するのかな……と読んでいきました。
    旧約聖書が出てきます。
    ゴグ(神に反対する勢力)、中絶(神に逆らう行為)
    であること...続きを読む
  • ハンチバック
    最初は「あーアサッテとか黒人ミックスのゲイ売春とかと一緒でキワモノ受賞かー。」と思ったけど30ページから急に面白く感じた。
    他の方も書いてらっしゃるが93ページはちょうどいい感じ。これより長いと私を含めて読者は耐えられないでしょうね。

    乙武氏をして「この人の成し遂げたことは障害者をボロクソに言って...続きを読む
  • ハンチバック
    健常者として生きてたら知らないこと、障害者として生きているから知っていること。その逆もあって。主人公の釈華との知識や価値観のズレに、障害者と健常者の間のどうしたって崩せない壁を感じて苦しくなる。そして、「本当の息苦しさも知らない癖に」という言葉が刺さる。
    健常者であるということで釈華を傷つけるのであ...続きを読む
  • ハンチバック
    芥川賞の受賞会見?で著者を拝見し、少々怖い印象を受けたのだけれど、どんな小説を書いているのか気になり読んでみた。
    自分にないものを当たり前に持っている人を憎む気持ちって障害者に限らず溢れてると思うけど、自分が抱えている不幸が理不尽であると同時に、自分が持っていないものを持っている人に大して怒りを発露...続きを読む
  • ハンチバック

    「ハンチバック」(=hunchback)は腰が曲がってる「せむし」って意味である。作家である市川沙央も「ハンチバック」であり、この小説は彼女の自伝的な話しでもある。本作を通じて作家は障害人、特に女性の障害人が抱いている色んな欲望や苦労などを加減無く披露してる。

    その中でも作家は特に女性の障害人の...続きを読む
  • ハンチバック
    169回(2023年上半期) 芥川賞受賞作

    本を読むことも書くことも
    どんなに大変な作業なのだろう
    その成果物を読ませてもらえたことに
    ただただ感謝

    当事者だからこその自虐や皮肉
    そして超越者としてのブッダ
    フィクションとノンフィクションの境がわからない
    部分もあり
    だからこそ成功してるのだろう...続きを読む
  • ハンチバック
    短めな小説でありながら、なかなか衝撃的な作品だった。

    あっという間に読み切ったが、一文字一文字作者から削り取られた断片を観るようだった。

    なかなか感想を書き切れずに何度も直している。
    どう捉えたらいいか、と悩ます所も、問題作として人をひきつける要素なのかもしれない。