市川沙央のレビュー一覧
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この本は、身体的健常者で読書好きをこれでもかと言葉でボッコボコにぶん殴りにきている。
芥川賞だからとかそんな理由で今まで手を出さなかったけれど、この本はめちゃくちゃに面白い。文章を読ませる力がハンパない。
決して長い作品ではないけれど、それでもあっという間に読み終えてしまった。そして読み終えた今、「あっという間に」という表現にも、身体障害者を意識の枠組みに入れていないことが自覚できるようになった。
作者自身も障害のある方だという事前情報を得ていたため、障害当事者からの強烈なメッセージであると感じた。
ただ、カタカナ用語もそれなりに出てくるので、知力乏しい私は、意味を調べながら読まなければならなかった。
そうでなければさらに読み進められたであろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの内容・構成で¥510!すごい!!
自分には★評価が高くない話もあるけれど、全体として満足感がある。よかった。
デメリットは、この中で紹介されている本を読みたくなり買ってしまうこと(とは言え初めての作家さんは不安もあるので中古本を探した)。また、読み終えるのに時間がかかること。自分の場合、話を読み終えた後に時間を置かないと次に行けないので、短編で構成されているこの本は1日2話進めばよい方だった。
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「ディヴァイン」西加奈子 … ★3.5。完璧で盤石な「君」と活動家の娘。「あー、こんな聖人君子みたいな話は居心地悪い」と思ってたら、それを覆すオチが来てよかった。ただ、最後の結びはきれい過ぎるかな。タイトルがDivineだから仕方ないか。
「私たちは愛を失ったことがあるだろうか?」チョン・セラン … ★3.5。理解したと言えないけれど、引かれる内容だった。大恋愛TVドラマ終了の喪失感から抜け出すにつれ「一度も所有したことがないものをどうして失えるというのだ。ほとんどの人は命懸けの、文字通り断崖絶壁から飛び降りるような恋愛をすることはない」で始まる著者の考察。自分が恋愛小説が苦手な(読んでもあまり胸に刺さらない)理由がおぼろげに見えた気がする。
「音の心中」市川沙央 … ★3.5。よくわからないが余韻が残ってよかった。心臓の音を記録する芸術館を初めて知った。著者は心臓の音を芸術作品とする(?)という発想を知り、この話ができたのだろうか。
「彼」に向けての「私」の気持ちは同意できる。「戦争反対!」と叫ぶ人が、叫ばない人へ向ける憤り。でも、そういう憤りがそもそも戦争の元では? 「私」から「彼」への「あなたは戦争を消費しているだけだ」は的を得ている。あなたと同じ行動をしていないからと言って、それは平和ボケしているわけではない。あなたのしていることだけが正解ではないのだよ。
「嘔吐」小川哲 … ★3。このオヤジの一人よがりがきつく、読んでいると「嘔吐」を誘う。その一人よがりは「愛」ではなくその反意として、「愛」がテーマのこの本に載ったと思う。でも、今はそんなヤツが多くいる状況、その中でわざわざこの内容にした意味は何?と頭に「?」が浮かんだ。この状況を変えなくては!というメッセージ?
「【ア】【イ】」尾崎世界観 … ★2。??? わからない。
「念のため」芹沢央 … ★2.5。??? なんてことない日常にも裏があり、それに気付かなかったり気付かせないことが優しさ(愛)ってこと?
「二番目のアイスを教えてください」ワクサカソウヘイ … ★3。自分は一番がチョコモナカジャンボ、二番がピノ。…てことは本命はピノ?
「違う海にいる」麻布競馬場 … ★2.5。僕(木村)は松島との思い出(海)に生きていくということ? もう少し説明して欲しい気持ち。
「愛することを知らない子は」島本理生 … ★2.5。女子生徒の玉川と彼女の弟との行為、それを平然と「私」に話せる関係、「私」に芽生えた新井市への思い… などのシチュエーションについていけなかった。自分には苦手な感じ。
「終末の愛」冲方丁 … ★3。人類が終末へ向かうことになった理由はE2関連薬による博愛の心。人類の終末を救うのはアンチE2薬による愛の駆除。物語としてちょっと厳しいかな…
「五十歳、ロスジェネ、ギバーおぢ」葉真中顕 … ★2.5。因果は巡る…?
「ポルト」パク・ソルメ … ★2。空想の世界でのドライブ? 話が見えてこない。こういうのが純文学?
翻訳者の解説が印象に残った『韓国語にも「彼女」と「彼」にあたる言葉があるが、近年女性作家の間では「彼」に一本化し「彼女」を使わない人が増えている』その背景は何? 翻訳者は外国語を知るだけでなく、その外国語とその国の最新事情を知らないと翻訳の質が上がらないのだろう。
「わたしの愛しいもの (エッセイ)」町田そのこ … ★4。息子が素晴らしい!「何で? 好きに着けた方が楽しいじゃん」「だいたい、誰に対して恥ずかしいと思ってんのさ」
「ある階段からの風景~小説『老いと建築』」長塚圭史 … ★2。???わからない。すべてを見てきたこの家は今までを刻んだ家になっているということ?
「牛田家とわたし」嶋津輝 … ★3.5。何がよいのかわからないけどなんかいい。その瞬間は楽しいことだけを楽しめた子供時代を思い出させる感じ?
哲学対話「愛」って何? … 対話についての3つのお約束『①人の話をよく聞く ②偉い人の言葉を使わない ③「結局人それぞれ」であきらめない』がよかった。 特に③。
「未来のかけら」チェン・ヨンス ⋯ ★3.5。『未来はどこにでもある。失敗した過去の中にも。だから未来形で存在する限り、僕はその言葉を信じる。信じることにする。』
「愛はどこから(エッセイ)」アフロ ⋯ ★4。『一生の友達は一生一緒にいる友達だけじゃない』
「かつて私のものだった男の子たち」戸田真琴 ⋯ ★2。合わない。ある日の父の行動ががっかり。母もそうなのか?と思わせるところもあるし。(Web「Story Box」にある続きは期限切れで読めなかった)
「愛と再生」(詩) ⋯ ★2。自分に詩はわからないようだ。
「出せなかった手紙」佐原ひかり … ★3.5。ほんわかした手紙だけど悲しくなる手紙。
「手紙に味なんていらない」高遠みかみ … ★4。おもしろかった。問題作のラブレター、全部を読みたい。
「チキンピアノ」丸山春乃 … ★3.5。いいんだけど、古川がいいやつ過ぎるかな。
「出せなかった手紙」彩瀬まる … ★2.5。ちょっと重い。特に心を乱した「貴方」の文章。
「そんなに好きってわけでもない友達」安壇美緒 … ★2.5。自分には後味悪い話だった。学生の頃、気は乗らないのにその場の流れを変えることができず、友達の誘いにそのままついてったことを思い出した。一部の人には自分がこの話のミミだったかもしれない。ただ、この話の主人公は、最後にミミを自分の部屋から追い出している。よくやった!
「御伽の国のモアとトト」大木亜希子 … ★2。芸能界に入る子どもたち、その母親と父親の行動など、設定が好きになれず。母ちゃん、最後は長崎の実家に逃げていくってなんだよ。子どもたちが乗ったルートはあなたが望んだものだったのに。もっと早く解決策を考えるべきだったし、「もう遅い!」と気付いたらそこですべきことがあったのでは。あなたが望んだルートの中で家族が壊れていっているんだから。
「BOOM BOOM TAIPEI」金原ひとみ … ★3。台湾での気持ちの盛り上がりを伝えたかったんだろうな。
「ガマズミの花」八木詠美 … ★2。よくわからない話。幽霊の意味は何? それで夫とのすれ違いが出たのに、最後「家族も一人増えてさ」と子どもができたことをほのめかす意味は何?
「北見から」乗代雄介 … ★3。ホラー?ファンタジー? 嫌いじゃない。が、最後のオチがもう一つ。あの小説家がどのように書いて親子を鎖塚から連れ出すのか、そのヒントだけでも欲しかった。
「朝霧のチョイ」蝉谷めぐ美 … ★3.5。紋寿郎と容の関係、それに絡む朝霧がおもしろい。朝霧はこの先も人形と人間に行き来できる朝霧でいるのだろうか? -
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第4号が出たのに、遅ればせながら文芸誌『GOAT』第1号です。躊躇していた文芸誌ですが、思い込みの殻を破る価値ある魅力が満載でした。
評判通り、いやそれ以上に、読んでよし(内容・質)、買ってよし(安価)、見てよし(装丁・紙)の三拍子揃いでした。
内容について。エンタメや純文学などのジャンルや国境も越えて…コンセプト通りでした。未読作家さんも多く、視野が広がり新たな関心対象も得られました。既知の作家さんも攻めてる印象で新鮮でした。特集の「愛」企画、愛を感じた「私のGOAT本」紹介もグッドでした。さらに全編「(次号へ続く)連載なし」の読み切りのみ…これ大きい!
安価なこと。ゴートくんだけに、約510ページの文量なのに税込510円って、あり得ない! この物価高のご時世に採算度外視? 文庫本だって千円超えがザラですよね? 言っちゃなんですが、その辺のアンソロジーよりずっといいです。
装丁について。SDGsを考慮した紙を考慮しながら、紙の色、装丁のビジュ良好で、とてもカジュアルです。唯一、ホントに一点だけ「まいったなぁ」と感じたのが、紙面構成の段組。ジャンルに関係なく上下二段組や三段組はいいのですが、随所に文字ポイントの小さい五段組があって…。正直お目目がしんどかったです泣。
並行読書が苦手な私ですが、他の小説等を読みながら、少しずつ(拾い読みすることなく全部)約1ヶ月超を要し読み切りました。達成感がありました。
時々行く書店にバックナンバーが置いてありラッキーでした。この後もゆっくり追いかけたいと思います。遅きに失することなし!です、ホント。 -
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エロとかブラックなユーモアはやっぱり笑える、というのが本音。嘲笑的なことではないし、障害者に対して差別的な意識はない、と自分では思うけどそのへんはよく分からない。とにかく作者・市川さんのユーモアセンスは自分に合ってるように感じた。
障害者である自身への諦めが染み付いている感じ。僕は障害を持っていないけどこの感覚は自分にもある、分かるよ、と思った。健常者と一緒にすんじゃねえよって感じだろうけど、でも分かる。
痰の描写がすごく多い。何度も出てきて、いろんな描写に絡ませてくる。当事者にとっては生活の中でずーっと付き纏うもの、それ中心に動いているといっても過言ではないんだろうな、というのが伝わってくる。
最後の展開は賛否が分かれそうだなあとは思って、文學界に掲載された選評でもほとんどの意見がマイナスだった。が、個人的には好きだった。
障害をテーマにしているが、暗すぎず、むしろカラッとした印象を持ちながら読んでいたところ、最後の章で一転してじめっとしていて、かつ凄く寂しい気持ちになった。これが現実なのか、主人公・釈華の願いなのか分からないけど。 -
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発売、話題になってからしばらく経っていたけど、YouTubeきっかけで全巻(このとき3巻まで)購入した。
読み物として、こんなにワクワクしたのは久しぶり。読みたくて読みたくて、玄関に置き配される気配をドキドキしながら待っていた。
紙の本ファンにはたまらないよね笑
510(ゴート)円以上の価値があることは間違いないと思う。
現代作家の本をなかなか読めない私だけど、短編で各作家のエッセンスを味わえるのは、本当に美味しい体験すぎて申し訳ないくらい。
雑誌名の秀逸さとか、企画の画期的さとか、時代にこんなにぴったり”ハマった”ものが生まれたときの興奮って、同時代の人間にとって勇気を与えるんだなと思った。小学館さん、これからも頑張ってください! -
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初めての文芸誌?ムック本?
普段は絶対読まない時代小説っぽいものとか、知らないラッパーのエッセイとか、ここでしか読めないものが読めて嬉しい
ゴートくんかわいい
佐原ひかりの『出せなかった手紙』が好きだった
七年前、あっちゃんに出会った人魚
会う約束をしていたけどあっちゃんは忘れちゃってるみたい
あっちゃんに教えて貰った文字で書き残しておく手紙
小さい頃、母がオバQに扮して、利き手じゃない方で書いてくれた手紙を思い出してちょっと泣いた(ずっと信じていた)
人魚の書いた文字が、オバQの文字にそっくりだった気がしたから
私はそのころからマメだったので、貰った手紙は全て残している、マメでよかった
ひとりひとりの記憶と繋がって本は面白くなるから、楽しみ方がみんな違うっていうのを強く実感した作品だった -
Posted by ブクログ
僕は小説を読むようになってから、人を好きになったんですよ──。
小説を読むのは好きで、これまでも何百と読んできましたが、この度初めて文芸誌を読みました。
装丁もポップな雰囲気で、文芸誌を手に取るときのハードルも低く感じましたし、何より価格が510円(税込)というコスパの良さ。
半月くらいかけてゆっくり楽しませてもらいました。
個人的には、『小川哲 / 嘔吐』『冲方丁 / 週末の愛』『島本理生 / 愛することを知らない子は』が好きでした。
他の『GOAT』も積読してるので、また少ししたら読んでみようっと。
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ジャンル、国境を越える豪華執筆陣の文芸誌
紙を愛してやまない《ヤギ》にちなんで名づけた、《Greatest Of All Time(=かつてない)》文芸誌が誕生!
ジャンルや国境を越えて豪華執筆陣が集結しています。
○特集「愛」
【小説】 西加奈子 小川哲 市川沙央 パク・ソルメ 島本理生 冲方丁 麻布競馬場 葉真中顕 芦沢央 チョン・ヨンス 長塚圭史 嶋津輝 戸田真琴
【対談】 Awich×細谷功 小池真理子×東出昌大 藤ヶ谷太輔×川村元気
【短歌】 朝吹真理子 小佐野彈 高瀬隼子 スケザネ
【 詩 】 最果タヒ 井戸川射子 大崎清夏 水沢なお 小原晩 青松輝
【哲学対話】 永井玲衣×『GOAT』編集部
【エッセイ】金原ひとみ アフロ(MOROHA) 塩谷舞 チョン・セラン 町田そのこ ワクサカソウヘイ
【インタビュー】 一穂ミチ
○『GOAT』×monogatary.com 文学賞 [選考委員長:加藤シゲアキ]
総応募数753作から大賞受賞作を誌上で発表!
○私の「GOAT本」
上白石萌音 けんご 斉藤壮馬 鳥飼茜 夏川草介 三宅香帆
○出せなかった手紙
彩瀬まる 佐原ひかり
○短編小説
尾崎世界観 蝉谷めぐ実 安壇美緒 乗代雄介 八木詠美 大木亜希子
野崎まど
〇特集「読書バリアフリーをめぐる旅」
稲泉連 滝口悠生
その他、特大企画多数!
【編集担当からのおすすめ情報】
定価は「GOAT」(ゴート)の名にちなみ、510円(税込)。
読者プレゼントとして、野崎まど×GOATコラボの「ゴートくんブックエンド」も!
本書はアクセシビリティに配慮した本です。視覚障害・肢体不自由などの理由で必要とされる方に、本書のテキストデータを提供いたします。本書巻末よりお申し込みください。 -
Posted by ブクログ
例えば私と市川沙央さんが闘うとするじゃないですか。東京ドーム地下闘技場かなんかで。審判が「武器の使用以外すべてを認めるッ!!」みたいなこと言って。まあ100回中100回私が勝ちますよね。1万回やれば1万回勝つ。まあそれは確実ですよ。
しかし小説を読むということは、作者が渾身の力を込めた一撃を放ち、読者がそれを受け止めるという行為であると思うのです。
そして今作において市川沙央さんが繰り出した一撃の重さと言ったら…。ビスケット・オリバがジャック・ハンマーの方法で筋肉を更に肥大化させ、花山薫のような攻撃全振りのパンチを放ったらこんな感じになるのでしょうか。もちろん私は立っていられるわけもなく、地下闘技場に倒れ込む事になったわけです。
ところでなぜ私が今作の感想に刃牙シリーズの世界観を用いているか分かりますか?私は分かりませんよ。誰か知っている人がいたら教えてください。
多分小説と同じくらい漫画を愛するものとして、芥川賞受賞作に「カイジ」や「福本伸行」という単語が出てきて妙に嬉しくなったのかもしれませんね。知らんけど。本作に「もう描きたいことが無いなら『刃牙らへん』の連載辞めちまえ」という記述があれば文化勲章を、「『キャプテン翼』と『はじめの一歩』は連載再開する前にテキストベースで最後までのプロットを残しておけ。どうせまともに完結しないのだから」という記述があればノーベル文学賞を取っていたかもしれません。知らんけど。
閑話休題。というかやっと本題。本作でマチズモの再定義をやってのけたところで私は感嘆のあまり声を上げてしまったのですが、やはりそこは他の読者の方々にも衝撃的だったようで安心しました。作品そのもののインパクトも相当ですが、芥川賞受賞の決め手となったのはやはりこの辺りの試みが高く評価されたからではないかと思います。
この文庫本の4割近くを占める、二松学舎大教授の荒井裕樹さんとの往復書簡でもこの辺りは多く触れられていました。この往復書簡がなんとも味わい深い。本編は過激な表現や言葉のイメージが強く、私も読む前はそのような先入観を持っていました。それが往復書簡での市川さんの自己開示や荒井さんの的確な言語化によって、作者や作品への理解度が飛躍的に高まりました。正直なところ、私は荒井裕樹さんを存じ上げませんでした。しかしこの往復書簡での平易な文章と内容の深さかがもたらす貢献度の大きさは相当なものですし、荒井さんが執筆されている本も読んでみたいと思わせるものでした。解説の代わりとしては量が多すぎる感もありますが、これ込みで1冊の本として完成すると考えると、また本編と往復書簡双方の捉え方、味わい方も変わってくる気がします。
星5つでも十分ありなのですが、市川沙央さんが本作を超える代表作を次々と出すような活躍をされることを願ってあえて星4つにしておきます。まあ自己満足です。