あらすじ
23の国と地域で翻訳決定! 芥川賞受賞作
【2025 国際ブッカー賞ロングリスト】【2025全米図書賞・翻訳文学部門ロングリスト】に選出!
23の国と地域で翻訳決定。話題沸騰の芥川賞受賞作がついに文庫化!
「私の身体は生きるために壊れてきた。」
井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。
両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、有名私大の通信課程に通い、しがないコタツ記事を書いては収入の全額を寄付し、18禁TL小説をサイトに投稿し、零細アカウントで「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」と呟く。
ある日、グループホームのヘルパー・田中に、そのアカウントを知られていることが発覚し――。
【文庫版の特徴】
・ルビを大幅に増やしました。
・著者が執筆にあたり大きな影響を受けたと語る『凜として灯る』の著者・荒井裕樹氏との往復書簡「世界にとっての異物になってやりたい」(「文學界」2023年8月号)は、大変話題となりましたが、今回新たな書簡を特別付録として追加し、全文を巻末に収録しました。
単行本 2023年6月 文藝春秋刊
文庫版 2025年10月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
キレキレの社会風刺。あなたにとっての当たり前は私にとっての当たり前じゃない。簡単にあなたたちは言うけど、そもそもそれをできるものじゃない私たちはどうしたら?という社会の当たり前の概念を壊してくれる。
内容は性的要素があり、そう言う本として読まず、なぜこれがテーマに描かれてこんな描写があるのか、考えてみるべきだとおもう。
Posted by ブクログ
紙の本が好き、という言葉を発する時、その先に障害者の姿は無かった。先天性ミオパチーという難病により背骨が大きく湾曲し、気管切開や人工呼吸器を使用する女性の苛烈で生々しい「生(性)」を描く。障害者に対する社会や世間への怒りとアイロニーが、鋭利な言葉と瑞々しい感性、そして呪詛とユーモアと共に炸裂する。迂闊に感想を呟けない。今年ベスト級の傑作。
Posted by ブクログ
どうしても普段障害者目線で物事を見ることがないので、紙の本を読めるのは5つの健全性が揃っていてこそというくだりは、今まで考えたこともない視点だったなと感じた。
Posted by ブクログ
私が障害について考えるようになった原点は、小学生の時に乙武さんの五体不満足を読んだこと。それから、私なりにいろんな視点を持って生きてきたつもりだったけど、全く知らない・考えたこともなかった世界が描かれていて、強烈なパンチを食らった気分。おもしろかった!(という感想がふさしいのか?という疑問がよぎりつつ、あえて普通の感想を述べる。)
Posted by ブクログ
読後感を表すなら、どんと鈍い音を立ててぶつかられたような感じ。攻撃性のある言葉によろけても、理解出来なかったで終わらせたくない。
紙の本を捲る指を見つめて考える。当たり前だったことが、今は当たり前に思えないのだ。
この変化こそ読書の醍醐味だなと思うのです。
Posted by ブクログ
本作の文庫版には、作者と文学者との往復書簡も掲載されています。そのなかで作者は次のように言います。
「ある一面では弱者であっても、別の一面では強者である――このようにして強者と弱者の相対性を自覚することは、誰であろうと必ず持つべき観点であり、現代の社会に広がる意識の分断に呑まれないためにも効果的な処方箋せんだと思っています。何よりも大事なこととして、こうした思考法を自己正当化のために用いるのではなく、相互理解ということを忘れないでほしい、絶対に諦めないでほしいと私は思います」
障がい者が住むグループホームを舞台とした本作。そのように限られた空間においてはケアする者とケアされる者とのあいだ、あるいはケアされる者どうしのあいだにも、強弱の関係が生まれ、その関係性は絶対的となる傾向が強いです。しかし、それでも本作は「ある一面では弱者であっても、別の一面では強者である」と伝えようとしていることが、本作からはひしひしと伝わってきます。
語り手の主人公は悲観的な状況にあるともいえます。しかし、サイトでTL小説を書き、SNSで「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」などと呟き、そのように言葉を飛び道具として使うことで、ある種の出口を見出します。主人公は閉塞された環境に置かれていますが、不思議と閉塞感はあまり感じられないのは、オンラインで書くという行為ゆえかもしれません。
芥川賞作家による本作。まずは作家のインタビューを読んで、その快活さと新奇さに惹かれて読んでみました。予想していたより短く、短篇と長編のあいだの中篇に近い長さです。個人的には適度でした。
Posted by ブクログ
ネットスラングやビジネス用語、医療器具など小難しい言葉で、強烈な表現をしているのでドン引きしながら読んだ。
読書好きをグサグサ刺す棘のせいで評価ガタ落ちになっているのが面白い。
それに加えてホラー映画好きの私としては、見世物が禁止されてホラーが流行ったという指摘に「ウッ」となったが、『ヘレディタリー』や『マリグナント』など最近のホラー映画は平気で障がい者をホラー要素として使っており、隔離するつもりのない表現者もいるということは弁明しておきたい。
Posted by ブクログ
短くて読みやすい。障害があるということ、その大変さや生きづらさを、思わぬ角度からも教えてくれる、重たいような感じがするのに、なぜかそんなに心が暗くならない。絶妙なバランス感覚が、作者のセンスなんだと思った。
Posted by ブクログ
芥川賞の候補者としてニュースで取り上げられているのを観て、興味を持った。
性への関心や、動かない身体に対する描写など、生々しくも目が離せない内容。
Posted by ブクログ
・読者バリアフリーという概念を知る。読むという行為自体が強者性を帯びたものだというのは考えたこともなかったので、すごく勉強になりました。
・一方、文庫版の往復書簡内でも話されていたように、ある観点では強者である人物がまた別の観点では弱者になり得るというのは、障がい者でなくても起こり得ること。そのために福祉が存在するというのも、福祉が誰にでも開かれたものであるべきという視点を再認識させられる内容だった。
Posted by ブクログ
やな小説。別に障害者だから品行方正お涙頂戴をやれとは言わないが、インテリを気取りペダンチズム丸出しで、逆に安っぽい。ネットスラングもまた現代を表す日本語表現なのかも知れないが、どうなんだろう。まあこれ一発で終わりじゃないすか、という感じ。
Posted by ブクログ
強者と弱者の2項対立はシチュエーションによっていくらでも入れ替わってしまう。圧倒的大多数強者側の人間には想像もつかない弱者の苦悩があり、その表現が切実に書かれていた。
でもいわゆるネットスラング?などの言い回しがなんだか受け付けられなくて⭐︎3つになってしまった…
Posted by ブクログ
正直なところ、初読ではうまく咀嚼出来なかった。自分とは違う視点、考え方を伝えてくれる文章を読むことが好きなのですが、性格上、自分と違う意見を飲み込むためにはどうしても時間がかかってしまう。時間を空けて再読したい。
Posted by ブクログ
第169回芥川賞受賞作
著者によると怒りだけで書いたとのことだが、渦巻くような、それでいて淡々とした怒り、妬み、蔑み、諦念がその露悪を突出させたように感じた
『私は紙の本を憎んでいた。目が見えること、本が持てること、ページをめくれること、ーその特権性に気づかない「本好き」たちの無知な傲慢さを憎んでいた。』
Posted by ブクログ
身体の感覚とか生活の描き方に、自分の骨が軋むのを想像して苦しくなるような切実さがあった
これは作者の実感ありきの描写なんかな
重度障害者の性についてとか、問いかけたいことは色々あるんかなと思うけど、シンプルに小説として、どうなるん?!?っていうストーリー展開の面白さですぐ読んだ
身体の障害っていう要素が入ることで、見てはいけないものを見てるときに近いドキドキ感が明確に増した場面があって、自分のその感情って正しいかと言うとどうなんやろうとも思ったし、でもリアルとしてそこにあるものに対してそうやって思うこと自体が傲慢やな