樋口陽一のレビュー一覧
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憲法改正について
小林:改正を議論するならば、どんな政治勢力が、どんな必要があって、何をしたいために、どういう国内的・国際的条件のもとで、どこをどう変えたいのか?
それを提示して議論してもらわなければならない。
樋口:それによって賛成、反対に分かれるというのが、まっとうな憲法問題の議論の仕方です。(P164)
改憲が、中国・韓国との関係を改善する努力を怠りつつ、安保保全が悪化したと主張し、「米軍の二軍」で構わないから軍隊を持ちたいという理由で、憲法九条を書き換える。それができないから、とうとう違憲の安保法制を通してしまった。そして、憲法のほうを安保法制に合わせる。
これが真実ならば改憲に賛成 -
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改憲派と護憲派の憲法学者二人の対談形式による本書は、立件主義とは何かや、現政権の改憲草案の愚かさ、歴史認識の誤り、そして、私たち一人ひとりが憲法と国の行く末を本気で考えなければならないことを教えてくれる。
自民党の改憲草案はとにかく怖い。これが憲法になったら、私は私でなくなるだろう。そう感じずにはいられない。個人を尊重し、権力者を縛る憲法はなくなり、代わりに、個人を殺し、権力者の暴走を可能にする怪物が産まれる。恐ろしい。
あまり歴史には詳しくないので、フランス革命やナチスドイツの話、明治期の日本の話もとても興味深かった。先人が、長い歴史の中で、人が個人として生きる権利を闘いながら獲得し -
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以前、ある方の「憲法は100年後の国家のあるべき姿を示した法律である」を聞いて、スッと腑に落ちた経験があるが、この本の「憲法は権力者が暴走しないように国民生来の権利等を定めたもの」である事もよく理解できる。
それに比して自民党の憲法草案は、あまりにも国民を統制しようとする意思がミエミエである。
さすがにすぐには戦前のような時代にはならないだろうが、秘密保護法や安保法のように着々と布石は打たれている。しかし多数の国民は平和ボケして改憲勢力を選択してしまった。戦前の国民もまさかあのような悲惨な戦争に突入するとは思っていなかったのでは。
恐ろしいのは、まさかそうならないだろうと思う「茹でガエル」の状 -
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一般論としての「憲法改正」について語るのではなく、自民党の憲法改正案を、お二人の憲法学者が、詳しくかつ優しく、そして、その言葉の持つ意味について、初学者がわかる程度で解説している。
お二人の立場は、改憲派、護憲派と異なるが、共通の認識は、憲法というものが持つ意味。
憲法が誰を律するものであるか、誰の権利を保障するものかという外してはいけない根本原則。
その意味ではお二人は、改憲派、護憲派というより尊憲派と言えると思う。
そして、憲法を守るということは、多くの国民にとって非常に大事なことであると私も確信する。
それに異を唱える者がいるとしたら、それはおそらく独裁的な権力によって、国民を支配しよ -
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〈自民党の改憲草案を貫く「隠された意図」とは何か? 護憲派の泰斗と改憲派の重鎮が、自民党草案を徹底分析。史上最高に分かりやすい「改憲」論議の決定版が誕生〉と紹介された新書です。一気に読み終えました。
改憲をめざす勢力のロジックがどこにあるのか、明治憲法がその当時の最新の考え方を踏まえて検討され制定された事実と立憲主義に基づいた運営を貫こうとしていたこと等、 初めて知った事実や考え方が多くあり示されていました。新自由主義にもとづく経済政策を押し進められて貧困と格差が拡大していますが、自民党改憲草案には、国民の権利に関する制限はかけながら、経済だけ(それも大企業だけ)は規制しない方向(自民党案2 -
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尾高朝雄の『国民主権と天皇制』が学術文庫入りしたときは驚いたものの、天皇制に関連する本だからなあとまだ納得感があったが、今回は何と清宮四郎の著作の文庫化、吃驚!
法律系履修者以外の人にとっては、"誰、その人?"という感じだろうが、有斐閣法律学全集の「憲法I ー統治の機構ー」は、昭和50年代の憲法の基本書と言われていた。(もっとも学生にとっては、宮沢俊義の「憲法II ー基本的人権ーの方が興味があり、本書の記述をあまり面白いとは思わなかった人が多かったと思う。)
そのような著者の論考を、東北大学で薫陶を受けた樋口陽一氏が編集した論集が、本書である。
大きく二部構成