樋口陽一のレビュー一覧
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樋口陽一氏と言えば戦後憲法学のスターだが、今や保守派からは「ガラパゴス化」と揶揄され、左翼陣営からさえアナクロニズムとも非現実的との評が囁かれる。それでもなお頑なに近代の普遍的価値、とりわけ個人の尊重という理念にこだわり続けてきた。評者自身も氏に対して、いまだにフランス革命への郷愁を捨てきれない西欧かぶれの頑固親父、或いは永遠の少年というイメージしか持っていなかったのだが、じっくり読んでみると、この人はやはりただものではない。
法律家として当然とも言えるが、左翼にしてはめずらしく二元的思考ができる人だ。物事を多面的に観る眼を持っている。氏は「連環と緊張」というフレーズを好んで用いるが、国家は -
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『近代立憲主義と現代国家』(1973年)で鮮烈なデビューを果たした戦後憲法学の旗手が、ベルリンの壁とともに雪崩をうって社会主義体制が崩壊した後に、講座派マルクス主義経済史学の枠組を色濃く残すデビュー作の問題意識を継承しつつも、憲法理論として自立した立場を確立した記念碑的著作だ。昨年30年振りに増補復刊されたが、現在に至る樋口氏の理論的・実践的立場の支柱をなす著作であり、樋口憲法学を深く理解するための必読文献だ。
樋口氏が考えるフランス革命の歴史的意義とは、中間団体の粉砕により、一般意思を体現する集権的国家と諸個人の二極構造を創出したことだ。自力で下からの革命を完遂出来なかったドイツにおいて、 -
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清宮四郎と宮沢俊儀は戦後日本の憲法学のスタンダードを築いた両雄だが、二人は戦前の憲法学をリードした美濃部達吉の高弟であり、日本の公法理論に陰に陽に大きな影響を与えた純粋法学者ケルゼンからも多くを学んだ。清宮は美濃部、ケルゼン、宮沢を「憲法学の二師・一友」と呼んだが、本書は彼らの共通点より、むしろ微妙な、ある意味では決定的なズレを意識して読むことで愉しみが倍加する。宮沢はケルゼンから学んだイデオロギー批判の手法を用い、科学としての法律学(=純粋法学)の立場から師美濃部の学説を形而上学と断じ、その克服を企図した。清宮はケルゼンから法の究極にあるものとして「根本規範」を受け継ぎながら、それを換骨奪胎
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ネタバレ自民党てなんで憲法改正てなんでするの?
憲法て難しい。
そんな疑問があるかと思いますが、その疑問を解決するのがこの本だと思います。
内容は憲法についてと自民党の憲法改正の裏側をなどを語っています。
正直言うとかなり恐怖です…
特に自民党の世襲議員の憲法に対しての知識のなさや大物議員の高市や片山さつきのとんでも発言…
読めば読むほど恐怖と唖然する。
小林節さんが呆れる理由がわかります。
(妖怪の孫でも小林節さん出てます)
また、自民党改正案と日本国憲法を比較しながら、わかりやすく語っております。
さらによく話題になる緊急事態条項もなぜ危険なのかもよくかかれています。
憲法改正の議論はどうしても法 -
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憲法は一般的に国会で作られている法律と異なり、その上位にあるものであることを改めて認識できた。
なんとなく知っているつもりでもそれができた経緯や世界での考え方について歴史から説明があって理解しやすかった。
この本は護憲派と憲法学者と改憲派として自民党の憲法勉強会に何度も呼ばれていた憲法学者の2人の対談で読みやすかった。
改憲派の方も自民党の憲法に対する認識を目の当たりにして今の政権には改憲してほしくないと反対に回ったのだそう。
憲法は権力者が暴走しないように制限をかけるために作らることが世界的にも多数派である中、自民党は自分たち権力者に対してはその制限を軽くして、さらには愛国心(現在の草案で -
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2015年6月の衆院憲法審査会。参考人として呼ばれた憲法学者3人
が3人とも、戦争法案は違憲であると明言した。
自民党推薦の憲法学者の先生までが「違憲だ」としたものだから、激
高した自民党・高村センセイのお笑い発言まで飛び出す始末だった。
「たいていの憲法学者より私の方が考えてきたという自信はある。」
この「考えてきた」というのは、「そもそも憲法とはなんたるものか」では
なくて「どう変えたら自民党に都合がいいかな」の「考えてきた」なのじゃ
ないのですかね。
福島第一原発事故の際に時の首相・菅直人が「僕は原発に詳しいん
だ」と言ったくらい恥ずかしい発言だわ。
その問 -
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ネタバレ護憲派の泰斗と改憲派の重鎮、二人の憲法学者が自民党の改憲論を切る。護憲派で憲法学界の権威と言われる樋口陽一と、かつては自民党のブレインであった改憲派の小林節ががこの対談を通して一致して今の憲法改正案に反対を唱えている。長年9条改正をめぐって意見を異にしてきたこの二人がなぜ二人して反対するのか。それはこの憲法案が立憲主義を破壊し、法治国家の原則をなくし、専制政治の状態に近づいているから。そもそも「憲法は国民を縛るものではない。国家権力を管理するための最高法規である」という憲法の基本を蔑ろにしているから。そのことをわかりやすく語っている。そして何よりもこの二人が共闘して語らねばならない状況こそが、