井上達夫の作品一覧
「井上達夫」の「あいまいな日本のリベラル」「憲法の涙 リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください2」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
「リベラル」という言葉が最近よく話題になりますが、本書はものすごくフェアで筋の通ったリベラル論だと思います。
副題に「井上達夫の法哲学入門」とあるように、著者は東大名誉教授の肩書を持つ法哲学者で、日本を代表するリベラリスト。
本書は、編集者との対話形式で井上先生の考えを論じていくもので、第一部の「リベラルの危機」が特に面白く読みごたえがあります。(第二部の「正義の行方」はより哲学的でちょっと難しかった)
そもそも、リベラリズムは啓蒙と寛容という二つの伝統から生まれたものであり、自由主義というよりも「正義主義」とでも呼ぶのがふさわしい、というのが先生の主張です。
正義の概念は、普遍化できない差別を排除することである。
正義にかなうかどうかは「反転可能性」により見分けられる、それはつまり、自分の他者に対する行動や要求が、もし自分がその他者だったとしても受け入れられるかどうか、というのが判定の基準になるのだそうです。
また、ダブルスタンダードにより自分に有利な基準を導こうとするのもダメだ(二重基準の禁止)、という先生の考えは、極めてまっとうで納得感の高いものです。
いわゆるブーメラン現象(による自爆)は、これらの基準に照らし合わせるとすごく腹落ちするのですが、先生が、一部のメディアなど日本でリベラルとされている勢力を批判的に論じるのもさもありなん、という感じです。
一方で、リベラリズムの概念をきちんと理解し、世の中に健全なリベラリズムが浸透していくことも必要なのかもしれません。
2015年の本ではありますが、さすが法哲学の第一人者だけあって、とても勉強になりました。