菰野江名のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
深夜のコンビニ勤務の外国人、医療従事者、水商売のシングルマザーなど、さまざまな事情から夜に働かなければならない親たちのために子どもを預かる「夜間保育」を行っている保育園を舞台にした小説。
自分も幼い2児の父親であり、上の子を保育園に預けているので、自分の育児経験にも照らしながら、いろんな親子の形があるなと思い、面白く読み進めた。「ままならない子どもへの苛立ちと愛が錯綜し、混乱する」など、そうだよなと肯く描写が少なくなかった。また、基本的に登場人物に悪人はおらず、親子、保育士それぞれの思いに温かな気持ちになった。
そして、お仕事小説として、保育士の日々の仕事を垣間見ることができたとともに、毎日の連絡帳記入や入所手続等が負担で認可外保育施設に頼ってしまう親の存在など保育園、保育士を取り巻く実情の理解にもつながった。
ただ、主人公と杏子さんの関係は、もうひとつすっきりしなかったように思う。 -
Posted by ブクログ
夜に眠れなくなってしまい、休職していた
保育士の文乃。昼夜逆転した生活リズムで
あれば眠れるようになり、東京新宿区にある
24時間お預り可能の認可保育園「つづきの
保育園」で働くことになる。
この作品を読んで初めて知ることが多く、
「夜間保育園」のことを、全く分かって
いなかったことに気付かされた。
繁華街などのキッズルームやベビーホテルや
託児所。料金も高く、決して子どもたちに
とって、環境がいいとはいえない場所であっても、その場所を利用する人たちがいる。
" ただ毎日働かなきゃ食べることもできないから
とにかく子どもをどこかに預けなきゃいけない。
一度キッズルームやベビーホテルに預かってもらうと、あまりにも簡単で、他の保育施設に目を向ける余裕なんてないの " (本文抜粋)
選ぶ力がない人が多くいるということに、
文乃同様、ガンと頭を殴られたような気分に
なった。様々な事情から、夜に働かなければなら
ない親たち。厳しい環境の中でも懸命に子育てする親と、ひたむきに親を愛する子どもたち。そんな
親子の力になりたいと、真摯に向き合っていく
文乃。決して、ただの優しいだけの話ではない。
保育園が、今日の『つづき』になりますように。
子どもたちは、今日の「つづき」を保育園で過ごして眠る。そういう保育園、今日の『つづきの保育園』
『つづきの保育園』の名前の由来に胸をうたれる。
なかなか現実的には難しいとは思うけれど
『つづきの保育園』のような24時間お預り可能の
認可保育園が、少しでも増えたらと願わずには
いられなかった。
文乃と、亡き父親の恋人、京子さんとの
関わり方が素敵だ。 -
Posted by ブクログ
《保育・教育の場は、親子を生かす場所》
SNSで見掛けて気になっていた作品。
舞台は夜間保育園。日々懸命に生きる親子と、見守り寄り添う保育士たちの物語。
夜間保育園とは保護者が仕事などで夜に子どもをみられないとき、夕方〜夜間に代わりに保育を行う施設のこと。
実際に都内に一箇所だけあるみたいですね。
様々な事情からまだまだ働くことが現実的ではない日々を送っている私ですが、そんな私が読んでも胸にグッときた。
本作では保育士の文乃先生が子どもだけでなく、保護者に寄り添う姿がとても印象的だったし、保育士も保護者も完璧な人間として描かれていないところが好感を持てた。
保護者で一番印象的だったのは眞栄城さん。
置かれている立場は全然違うけれど、彼女のある言葉が私の身に覚えがある内容で胸にグサッと突き刺さった。
それに対する月子さんの返しが私にも寄り添ってもらえたようで、心に染みて涙した。
本作を読んで保育士は親子にとって生命線のような存在だな、と改めて感じた。
子どもを安全に預かってくれるだけじゃなく、親が仕事を続けたり、生活を成り立たせたりすることそのものを支えてくれている。
保護者に寄り添ってくれる。
ありがたい存在ですよね。
また、自分一人の心に留めておくと毒素になりうるようなネガティブな感情も、職場の同僚など身近な人に吐き出すことで、物事がいい方向に動くこともあるのだと感じた。
ネガティブな感情を吐き出す側も聞く側も、マイナスに捉えず、いい意味で受け流し、「じゃあ、どうする?」と前を向けるようなことが、現実でも当たり前に行われる世の中であってほしいし、私もそうありたい。
働いているお母さんはもちろん、育児に孤独を感じている方や、「こうあるべき」という母親像に縛られている方にこそ是非読んでほしい作品。
きっとこの物語が温かく寄り添ってくれます✧*。 -
Posted by ブクログ
昼夜逆転体質が原因で勤務していた保育園を辞職、その後24時間認可保育園で働き始めた保育士文乃。文乃は積極的に深夜勤務に取り組む。ほしの子は深夜保育対象の子どもたちのことだ。夜泣きが止まない子、父親と母親の育児への捉え方が噛み合っていないままの親子、お迎えに来なかった母親、そして文乃自身の父に対する思い、見守り続けてくれた杏子さんとの関係。
子ども自身より、親の子供への関わり、もしくは親と社会との関わりが描かれる。子どもファーストではなく大人ファーストで良い。保育園は大人が働くために利用するところ。つづきの保育園の園長のスタンスがこの物語のベースにある。
当事者でなければ日常的に触れることはまずないキッズルームの存在についても描かれる。保育園と保育士の物語と言った方が良いのかもしれない。
つづきの保育園という名前の由来が胸に響く。 -
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豪邸に住む、高齢な姉妹。何不自由ない暮らしをその齢まで続けてきたのかと思いきや。。
姉妹の一生を20年ごとに振り返っています。千絵の章では、姉妹の強さや優しさがよく伝わってきて、なぜここまで皆に慕われているのかが垣間見えます。
その強さや優しさがどんな風に形成されてきたかが、読み進めるにつれわかってきます。恵まれた環境とは言えない中で必死にもがき、どうにか自分なりの信念や幸せを見いだしていく。
姉妹に課された究極の選択には絶句しました。昔だったら、けっこうあり得る話だったんだろうと納得できるくらいなのが、リアルで残酷でした。私だったらどうしたのだろうと考えました。どうにか姉妹に押し付けて、でもその事実に一生苦悶しながら生きるのでしょうか。。 -
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2024年をスタートに、その後20年ずつ3回遡りながら進められる二人の姉妹の物語です。最初に結果が有って、その原因が少しづつ明らかになって行くミステリー的手法。「まだ若い作家さんがこのようなテクニックに頼るのは如何なものか」と思いながら読み進めて居ました。その位、序盤はあまり見るべきところが無い。
ところが終盤、姉妹の心理的葛藤が描かれ始めたところから、グッと締まってきます。自分の為に妹を犠牲にした姉と、意外にもその生活に安逸を見出した妹、という表層から一歩踏み込めば、"妹の為"という隠れ蓑の下で結局は自分の希望を追い求めた姉。そしてさらにその裏には・・・・そんな葛藤が見事に重層的に描かれます。これが普通なら露悪的に成りがちですが、見事に善人の物語として描かれます。
冷たい素振りを見せながら人を幸せにしようと手助けする姉と、厳しい境遇の中でも自分の幸せを見つけてしまえる妹。互いに相容れぬものを持ちながら、最終的には信頼感で繋がったき姉妹の心地良い物語でした。 -
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戦争孤児の姉妹の物語。
厳格な姉と素直な妹。時代が違えば屈託のない人生が送れたであろう二人。でも、苦労の多い人生が幸せではなかった、とは言い難く。厳しい生活ゆえに得られた幸せというものが丁寧に描かれており、じわじわと胸に迫ってくる。現代でもDVに苦しむ女性を描き、時代が変わっても女性を取り巻く困難に目を向けている。しかし、作中の人物に語らせているように、フェミニスト的な視点ではなく、不当な扱いを受けている人がいることが許せない。という根源的な感情から物語が出発している。そして最後にはかっこいい生き様だった、と二人の生き方を肯定しており、読後感もよい。
時間の切り取りも上手く、読み応えのある作品だった。 -
Posted by ブクログ
初めての作家さんです。
淡々と進んでいく日常の中で
大きなお屋敷に住む二人の女性
桐子さんと百合子さん姉妹の一生のお話です。
二人は
3歳と1歳で戦争孤児になり、
親戚や知り合いの方々の家を転々としながら、いつか二人の家を持とう。それを目標に頑張って日々を生きていました。
その夢を叶える背景には
二人それぞれの人生模様もいろいろあり、いろいろな葛藤がありながらもお互いを思いやり、貫いていく信念があり、
それぞれの形を作っていく。
なんだか、人物像も周りの景色も素敵なお屋敷の様子も、
ドラマや映画のワンシーンを見ているかのような、そんな気持ちに何度もなりながら読んでいました。
私は、戦争は知らずに育ちましたが、
ちょうど私の父や母の時代のお話で、今年は終戦80年ということもあり、
戦争で運命も定めも変わってしまった人々がたくさんいて
でも、生きるために懸命に頑張ったその中の
桐子さんや百合子さんの生き方
素敵だと思いました。 -
Posted by ブクログ
幼い頃戦争で両親を失い、親戚の間を転々とした姉妹がいつか一緒に住むことを夢見た終の棲家。
姉は教師となり、妹は世話になった親戚の精神薄弱な息子の妻となり20年間を別々に過ごす。
長女であることを強いられた姉は、妹との約束を果たすべくひたすら働きひたすら蓄財に励む。
一方の妹は障害を抱える夫との生活に小さな幸せを見出す。
妹の夫が死に、還暦を過ぎて姉が建てた夢の一軒家に同居する二人。
全く別の人生を送ってきた二人にとって同居が本当に幸せなのか、との問いは切実だった。
同居した20年間に、姉を頼ってくる人々に妹は姉の教師としての人生を想い、姉を支え日々の家事をこなす妹に姉は主婦としての妹の人生を想う。
運命のいたずらか、必然か、相前後して世を去る二人。
市役所の地域福祉課に勤める青葉祐太郎と母千絵。
人生の岐路に姉妹との大切な邂逅をする母子。
そこには姉妹の人生が凝縮されていた。
母子は言う。
「かっこいい人だよな」「そう、すごく、かっこよかった」
「私は百合子さんも、すごく好きだったなぁ」「こういう人が自分のおばあちゃんだったらいいのになと思ったよ」