菰野江名のレビュー一覧
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全然存じ上げなかった作家さんでしたが、可愛い表紙に惹かれて♡
地域福祉課に赴任してきた青年の青葉が この人には会っておくといいと紹介されたのは豪邸に住む、老齢の桐子と百合子姉妹だった。
来た事なんかないはずなのに なんとなくこの豪邸に懐かしさを覚える青葉。
そんな出会いの後すぐ、桐子と百合子が2人揃って同じ日に亡くなっているのが見つかった。
え?ミステリー?と思ったけど、そうではなかった。
戦争孤児であった2人の人生を20年毎に 遡って紐解いていく物語。
夢を追いかけて飛び出し、人の幸せのお手伝いばかりして生きてきた姉、決められた道でささやかな幸せを見つけ生きてきた妹。
淡々と穏やかに -
Posted by ブクログ
戦争孤児で親戚中を転々とし、ひっそりと力を合わせてきた姉妹。
世話をしてもらった家の障がいのある次男との結婚を促される姉、だがその代わりに妹が結婚することに
姉は身代わりになった妹とその不幸から逃れる為に教師として自立しお金を貯めて理想の家を建てる事を目標とする。
可哀想に思っていた妹は実は夫との生活の中で幸せも見出せるようになると、理想の家の為に走り続ける姉と歪みが…
不遇な子供時代を取り戻す事が目的だった理想の家、と姉妹、その姉妹を取り巻く人々。
それぞれにみんなが幸せになる事を目指し、思いを寄せて、妹の百合子の作るいなり寿司も良い味が出ていると感じた。
姉の桐子、妹の百合子、タイプは違う -
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2024年、豪邸に住む老姉妹。2人の死から物語は始まる。そこから20年、更に20年、又20年、と時代は遡り、姉妹の歴史が明かされる。幼い頃の数年の記憶や経験はその後の人生にかなりの影響を与えるんだなぁと、自分自身を振り返っても共感するところが多かった。けど、例え苦しい時代を共に過ごした姉妹であっても、人生はそれぞれ。環境や生き方が異なってしまえば、価値観も変化してくる。それでも姉妹それぞれがお互いを大切に思いながら、自分自身の幸せを模索していく。姉妹がお互いを思う気持ち、姉妹だからこそ言えない言葉、気持ち。姉という責任、妹という役割。あぁ、もどかしい。
ご縁のあった親子が絡んで、とても興味深く -
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ネタバレすごいな。ファンシーな表紙、ミステリアスなあらすじから想像した何倍も重たかった。飛行機の中で暇つぶしに読んでたんだけど、もう中盤から数ページに1回涙が出てしまって全然進められなかったし。笑
運命なんてクソ喰らえ、絶対この生き様を変えて高めて反撃してやる、と思い続けた姉/それもまた運命、巡り巡った気持ちと共に生きていくことを選んだ妹、でもどっちにも変わらず愛があり続けたんだと思うだけで胸がいっぱいになった。その糸がまた人を救って、誰かの運命を変えたり助けたりしたことも含めて、素晴らしい人間賛歌だと思った。
飛行機と電車乗り継いで行った旅先の温泉に入ったあと、涼しい風にあたりながら地元のお店に -
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読みやすい文体で、全体的に春の季節感が漂う心地よい空気感だった。
自分自身と、人から見た自分と、身内から見た自分では、人格も行動の意味違ってて、それに人は付かないもんだよ、と前編を通してやんわりと断言された感じ。
姉妹の想いは重なっていたのか、すれ違っていたのか。お互いを思いやり、同じ方向へ向かってはいたものの、その背景となる思考は想像できてなくて、でもできていないことも結局わからないままだったんじゃないかな、と、私は受け取った。
作者が絶望を描きたかったのか、希望を残したかったのかわからないけど、状況だけがそこにあって、それをどちらと捉えるかは読者に委ねられている。
読む人によって、視 -
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ただ誰かが不当な扱いを受けていることが許せないのかな
と言ったお母さんの言葉に納得した。
自分が常に不当な扱いを受けてきたから、たたかってきたから、自分と同じような扱いを受けている人を見ると、我慢ならなかったのかなと思った。
自分を貫き、自分のお城を持った桐子さん。外からではなく、桐子さんの若い時の視点、百合子さんの視点と移り変わりながら語られていく。
複雑な気持ちや、2人の気持ちが、いい感じに絡んでいる。
知的障害者の息子と、お世話している女の子と結婚させようと思う吉沢家にびっくりしたが、これは時代だからか?よくあったことなのかな?話の本質ではないがびっくりした。 -
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戦争孤児の姉妹の物語。
厳格な姉と素直な妹。時代が違えば屈託のない人生が送れたであろう二人。でも、苦労の多い人生が幸せではなかった、とは言い難く。厳しい生活ゆえに得られた幸せというものが丁寧に描かれており、じわじわと胸に迫ってくる。現代でもDVに苦しむ女性を描き、時代が変わっても女性を取り巻く困難に目を向けている。しかし、作中の人物に語らせているように、フェミニスト的な視点ではなく、不当な扱いを受けている人がいることが許せない。という根源的な感情から物語が出発している。そして最後にはかっこいい生き様だった。と二人の生き方を肯定しており、読後感もよい。
時間の切り取りも上手く、読み応えのある作品 -
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初めての作家さんです。
淡々と進んでいく日常の中で
大きなお屋敷に住む二人の女性
桐子さんと百合子さん姉妹の一生のお話です。
二人は
3歳と1歳で戦争孤児になり、
親戚や知り合いの方々の家を転々としながら、いつか二人の家を持とう。それを目標に頑張って日々を生きていました。
その夢を叶える背景には
二人それぞれの人生模様もいろいろあり、いろいろな葛藤がありながらもお互いを思いやり、貫いていく信念があり、
それぞれの形を作っていく。
なんだか、人物像も周りの景色も素敵なお屋敷の様子も、
ドラマや映画のワンシーンを見ているかのような、そんな気持ちに何度もなりながら読んでいました。
私は、戦争は知 -
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幼い頃戦争で両親を失い、親戚の間を転々とした姉妹がいつか一緒に住むことを夢見た終の棲家。
姉は教師となり、妹は世話になった親戚の精神薄弱な息子の妻となり20年間を別々に過ごす。
長女であることを強いられた姉は、妹との約束を果たすべくひたすら働きひたすら蓄財に励む。
一方の妹は障害を抱える夫との生活に小さな幸せを見出す。
妹の夫が死に、還暦を過ぎて姉が建てた夢の一軒家に同居する二人。
全く別の人生を送ってきた二人にとって同居が本当に幸せなのか、との問いは切実だった。
同居した20年間に、姉を頼ってくる人々に妹は姉の教師としての人生を想い、姉を支え日々の家事をこなす妹に姉は主婦としての妹の人生 -
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Posted by ブクログ
戦後間もなくからのふたりの姉妹の物語。
大きなお屋敷に住む高齢のふたりの姉妹を市役所の職員の青年が挨拶に訪れたところから物語が始まる。
この姉妹はどうやら二人きりだとはわかるが、なぜそうなったのか、彼女達の人生に何があったのか、登場人物の過去に坂戻って明らかにされていく。
何とも遣り切れない事実が見えてくる。
特に妹百合子の人生は、どう言っていいのかわからない。でも本人は結果として幸せな人生だったと悟る。
そして姉の桐子の人生も壮絶だ。何か楽しいことはあってのだろうか、と心配になってくる。いつも背筋を伸ばして、誰からも後ろ指を差されないように必死で生きてきたように見える。
この姉妹の行き着く先 -